表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/40

第四話

一瞬、気を失ったかと思った。

否、身が軽くなったと言うべきか。

あまりの気持ちよさに沙羅は、目を瞑った。

すると、少し重力を感じる。

「っ…」

地に足が着いたのか?

思わずよろける。

そっと目を開ければ、夢で見た乳白色の世界だった。

「わ……」

夢で見るよりもずっと綺麗で、見入ってしまった。

そのとき、背後から声をかけられる。

「随分と遅かったな」

「んなっ!?」

咄嗟に振り返ると誰かが立っていた。

「あなた…」

「まさか…俺が分かんない、とか無いだろうな」

「その声!」

沙羅は思わず声を上げてしまった。

聞き覚えのあるその声は、夢で聞いた声。

「じ…じゃあ、あなたが青龍…」

その少年の背丈は大きく、身長160センチの沙羅を悠々と抜いていた。

軽く頭を持ち上げなければ話せない。

少年の前髪は長く、脇に寄せてあった。

また、後ろ髪も同様に長く、漆黒の髪は高い位置で一つに結い上げてあった。

着物はあかの陰陽師のような身なりだった。

彼は、薄氷色アイルブルーの光を纏っており、やはり夢の人だと確信する。

「青龍」

沙羅は話を切り出した。

「一体、あなたは何なの?何がしたいの?」

「俺か?まあ、率直に言えばここを守ってほしい」

「ここ?」

再度、あたりを見回す。

「馬鹿。神界のことだ」

「って言われても、神界がどこだか知らないし。第一、守るって何よ」

それに…と言葉を続けた。

「私には関係ない。神界がどうなろうと私は困らないじゃない」

「お前…本気で言ってるのか?」

青龍の顔つきが変わった。

すると、いきなり沙羅の腕を掴んだ。

「った…」

予想外の力の強さに顔を歪める。

「来い。神界を見せてやる」

「ちょ…っ…」

ぐらりと視界が回った。

ふっと腕が放された。沙羅はその腕をさすりながら立ち上がった。

「え……?」

目の前に現れたのは楽園としか言いようのない風景だった。

「すごい…」

圧倒される。

「これ…楽園みたい…」

青空に花畑。それに、沢山の子供達。

「これ…平和としか…」

「平和に見える、か…やはり、人間だな」

「ちょっと、何よ!」

青龍の勝手な物言いに憤慨する。

「ここは平和かもしれない…だが、これの正反対もるのだ」

「正反対…?」

「ここの子供らは人間界で死んだ子達だ。守護霊となるためにここで生活している」

「それって良い事じゃないの?」

子供達を見ている青龍の目は悲しかった。

沙羅はその横顔をのぞき込みながら言った。

「それだけ人間界で死んだ子供が多いということだ」

「――――っ」

「残念なことに、神界と人間界は共存している」

「共存?」

「ああ。今、人間界は破滅の危機にある」

「地球温暖化、とか?」

すると、青龍はふ…と笑った。

「人間らしい物言いだな」

「じゃあ何よ」

青龍は沙羅と向き合って言った。

「何故、地球温暖化が進んでしまっているか知っているか?」

「え…っとそれは、二酸化炭素とか…」

急な質問にしどろもどろになる。

「そんなものではない。確かに科学的にはそうかもしれないが、それを引き起こしたのは神界で堕ちた神擬かみもどきだ。それを信じた人間は、過ちを犯し続けた」

「なん…」

見下ろしてくる青龍の瞳は限りなく澄んでいた。

その瞳に映った自分を見ていた。

「じゃあ…神界ここが駄目になれば、人間界あっちも駄目になってしまうのね?」

「ああ。やってくれなければ、困る」

沙羅は少し目を伏せた後、青龍を直視した。

「分かった。やるわ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ