第四話
「純おはよ」
朝の駐輪場。
いつもの風景。
「今日は大丈夫そうだな。よかった」
「うん。まだ少し寂しいけど…でも、少しずつ立ち直る」
「ああ。それでいいと思う。あ、俺ちょっと職員室行ってくる」
「ん」
いつも通りの会話。
朝の風景。
そして。
いつもとは違う…
―――教室―――
クラスの男女が集まって、何かを囲むようにしている。
その中に、入り込む。
「おはよ…ってみんな何やって……」
沙羅は言葉を失った。
輪の中心にいた。
それは、つい昨日まで自分をはげましてくれていた…
「美佐……」
「きちゃ…だ…め…みんな……」
美佐の後頭部から、朱いものが流れる。
それは…
「美佐…どうした…の…?」
身体が震える。
何があったの?
「みんな何してるの!?早く先生を……」
今まで眼中になかった、他のクラスメート。
全員が武器になるものを持っていた。
「な……」
一人の男子が、美佐に向かって野球バットを振り上げた。
「!?」
沙羅はとっさに両手を広げ美佐を庇う。
「…っ!!止めて!!」
だが。
目は生気を失っている。
生きていない。
沙羅の防衛本能が働く。
無意識のうちに、彼の腹部を全力で蹴った。
後ろの他の生徒と共に、吹っ飛ばされる。
「は…っ…」
怖い。
この人達は、私を見ていない。
美佐を見ていない。
「どうしたの…?みんな…何があったの…?」
両手を広げたままの状態で、耐える。
「邪魔なのよ」
「!?」
冷たい言葉が飛んだ。
「そ。邪魔なの」
「あんたも、美佐も」
「消えればいいのよ。二人とも」
「邪魔」
「さっさと死んで」
思考が停止した。
何故?
私?
その言葉が頭の中で、渦を巻く。
「ど…して…?」
仲間だと、思っていた。
友達だと、思っていた。
信じていた。
信じていた……
自分はこのクラスに居場所があったと。
信頼があると。
「邪魔。消えて」
身体が凍り付いたように動かない。
心も、同様だ。
女子生徒の持つ、カッターが頬を掠めた。
「……っ」
同時に切られた髪が、はらりと散る。
頬に生温いものが流れ落ちる。
「私は沙羅の親友だよねぇ…?」
カッターを持った生徒が沙羅に詰め寄る。
嫌な汗が、背を伝う。
「じゃあさ、私の事を思ってさぁ…消えてくれない?」
「…っ!?」
彼女の瞳が、濁っている。
死んだ魚の腹のように。
「ねぇ…?」
違う…
「沙羅…」
違う。
「違う」
沙羅の表情が変わる。
「何が違うの…?」
「違う。みんなじゃない」
ぴくりと、彼女の頬が引きつる。
沙羅はしっかりと、死んだ瞳を見つめた。
「みんなの身体から出て行きなさい!!」
「黙れ!!」
「!?」
四方の生徒が一気に刃物を振り上げる。
「…っ!!」
きつく、目を閉じる。
助けて…
「青龍!!」
刹那―――
青い稲妻が生徒を跳ね退ける。
「え……」
恐る恐る目を開く。
そこに居た。
たくまし背が、在った。
「青…龍…?」
「やっと呼んだな…」
ありゃ。
またまたシリアス…
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