第二話
「で。何がどうしたって?」
「うん……」
学校の屋上で、沙羅は体育座りでうつむいていた。
「よく分かんないだ…私にも」
「失恋でもしたの?」
美佐の言葉に肩をぴくりと、震わせた。
「……そうかもしれない」
「沙羅がねぇ…失恋なんてらしくない」
「そうかな…?」
膝に埋めた顔を少しあげて言った。
「そうよ。失恋したってアタックし続ければいいじゃない!!」
「それも…出来ないんだ…」
「…え?」
美佐は沙羅を凝視した。
沙羅の涙が、ぱたばたとアスファルトに染み込む。
「……って…もう会えないんだもん…」
どんなに願ったって…
どんなに叫んだって…
どんなに名を呼んだって…
彼は答えない…
もう…
会えない…
「おい、沙羅」
学校が終わり、沙羅が帰ろうとすると純が呼び止めた。
「今日家に寄っていかねぇ?話したい事もたくさんあるし…」
「いい…けど…」
純の家は海に近かった。
部屋は二階で、わりと広い。
今はお昼前なので日はまだ高いが、夕方はきっと綺麗な夕焼けが見えるのだろう
と思う。
「適当に座っててくれ。何か飲み物取ってくる」
鞄をベッドに放り出して純は一階におりて行った。
「適当って…どこ…?」
沙羅は呆然と立ったまま、窓の外を見ていた。
こうして静かにしていれば、波の音も聞こえてくる。
綺麗だった。
海が限りなく深く、青く…
「何だ、座れって言ったのに」
気がつけば、純はオレンジ色に染まったグラスを二つ持ってドアに寄り掛かって
いた。
「どこに座ったらいいか分からないんだもの」
「だから、適当にって…」
純は持っていたグラスを中央にあった小さなテーブルに置いた。
「本当に大丈夫か?目が真っ赤だぞ?」
「うん…へい…」
平気。そう言うはずだった。
しかし、不意に視界が失われる。
何が起きたのか理解するまでに、時間がかかった。
「じ…純…?」
ああ、と。
沙羅は純に抱きしめられていた。
きつく。優しく。
「一人で抱え込むな…たとえ霊力が失くなったって俺も和美も、愛美も…みんな
心配してる…」
「うん……」
「だから…相談しろよ…俺達だって、出来る事があるはずだから…」
「うん…ありがとう…」
その後、純から色々と聞いた。
青龍はだいぶ傷も治り、元気になって来た事。
季立が常人まで大きくなっていた事。
鬼は相変わらず人々の心を蝕み続けていた事。
そして、鬼は未だに沙羅を狙っている事。
「何で?私に霊力なんて無いのに」
落ち着いた沙羅はグラスに口を付けながら言った。
沙羅に、先程までの痛々しさはない。
「さあな…でも、気をつけておけよ。油断は禁物だからな?」
「うん」
すると、穏やかだった純の表情が一転した。
「純…?」
沙羅はきょとんとした顔で純を見る。しかし、純は静かにするように促す。
「?」
「……ああ…来い、玄武」
霊感の失われた沙羅でも部屋の空気が変わるのが分かった。
「玄武が…『居る』のね?」
「ああ…」
見えない。
そこに『居る』であろう神が見えない。
「沙羅……」
純は済まなさそうに声を落としたが、沙羅の目付きはきつくなった。
「純、通訳してちょうだい!!」
「……は?」
沙羅は純の左肩の上を見た。当然、沙羅には見えていない。
しかしその場所はいつも玄武がいるところ。
「玄武、居るんでしょう?季立は…立夏達は来れないの!?」
「あー…っと…『来ても見えないだろう』…だって」
「いい。構わないわ。純か和美ちゃんに通訳してもらう」
「…『季立は今青龍に付きっきりだから無理だろう』だって」
「…そっか」
「あ…待て…『また今度の機会に連れてくる』ってさ」
「本当!?」
沙羅の顔が輝く。
「じゃあ、俺達指令が来てるから…行ってくる」
「ん。行ってらっしゃい」
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