表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/40

第二九話


「青龍っ!!」

駆け寄り、傷の程を見る。しかし、自分の力では到底直せないと自覚する。

「立春…」

『出血がひど過ぎるんだ。このままだと、死ぬのは時間の問題だな』

「そんな…」

それでも、何もしないよりはと、回復の珠を使う。

「沙羅っ!!」

束縛の解けた純達が駆け寄って来る。

しかし、彼らの受けた傷もひどかった。

「青龍は……?」

「駄目……全然よくならないの…このままじゃ…」

沙羅は青龍の頭を膝に乗せ、治らないと分かっていても珠を続けていた。

「朱雀は…?朱雀は治せないの!?」

首だけ朱雀に向け、懇願の瞳で尋ねる。

だが、朱雀は静かに首を横に振った。

「そんな……」

青龍の顔を見下ろした。

顔は青ざめていて、腹部からの返り血で所々朱い。

呼吸も浅く、辛そうだった。

腹部はかなり朱く染まって、手を当てている沙羅の手も朱い。

胸が上下しているから生きているとわかるが、遠くから見たら死んでいるようだ

「……っ…」

俯いた沙羅の瞳から涙が落ちる。

それは、青龍の頬を伝って地面に吸われていった。

「青龍…このまま死んじゃうの……?」

誰に問うとでもなく、か細く呟く。

すると、小さくため息が聞こえた。

「ありますよ。青龍が助かる方法が」

「!?」

沙羅は弾かれたように顔を上げた。

白虎はさらに続ける。

「神界に帰せばいいのです。しかし、今の彼にはそれだけの力は無い。沙羅さん

、あなたが強制送還するしかありません」

「強制…送還…」

青龍に聞いた事がある。

四神を強制送還させれば二度と呼び出せないと。

「それに、霊力ちからを全て使います。つまり季立は使えなくなる上に、霊な

るもの…我々を見る事、話す事も不可能になります」

「そうなったら、戦いから外れてもらわねばならん」

白虎の後に、玄武も言った。

しかし、沙羅は躊躇う事なく言った。

「いいわ。教えて」

沙羅の瞳にはまだ涙が流れていたが、迷いはなかった。

「青龍が死んだら、意味がないもの。それに、戦えないわ」

「……分かりました」

白虎は少し間を置いて言った。

「それでは、復唱してください」

沙羅は小さく頷くと、青龍の頭を幼子のように抱きしめた。

「少しだけ…待って」

白虎は首を傾げたが、少ししてから、どうぞと言った。

「季立…」

沙羅の体から出てきた四つの小さな神は、全員理解しているようだった。

「僕らなら大丈夫だよ。神界うえに居るから」

「まったく…仕方ねぇなぁ」

「分かっていますから。沙羅さんのお気持ち」

「そうよ。私たちはあなた自信なんだから」

季立は交互に言ってくる。

沙羅は苦笑する。

「ありがとう…」

そして、青龍の耳元で。

「さよなら……」

「よろしいですか?」

沙羅は小さく頷いた。


『我、この時にて争いを終決させし。此の神を失す事を願う。――終焉――』



―――刹那



突風と共に沙羅の腕の中から重みが消え去った。

四つの光と主要の青い光は天高く舞って消える。

流れる涙に気付かないふりをして、見送る。

残った風は雪のような無数の青い光を落として行く。

沙羅は開いた傷だらけの腕でその光を受け止める。

「青龍………」


暖かい…



八月一日の夜の事だった。



8月2日

ここで一旦話(第一章)は切れます。

次は第二章の第一話。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ