第二六話
どこをどうやって走ったかは、覚えていない。
ただ、逃げるように愛美の家を出た。
純や和美が待て、と叫んでいた気もする。
立秋を使う事すら頭が働かなかった。
気がつけば、見知らぬ洞窟に来ていた。
「は…っ…」
ずいぶん長い間走ったのか、息が上がっている。
いや、それだけではないだろう…
「……っ」
どうしようもなく、涙が溢れてくる。
拭おうとはしない。
洞窟の壁に寄り掛かると、息を整える。
しかし、涙は止まらない。
やっぱり、青龍は朱雀の事が好きだったんだ…
それは、決定的な青龍の言葉。
疑いようのない、言葉。
その時、背後から声がかかる。
「結論はでました?」
「!?」
驚いて振り向くと、銀髪の女性が立っていた。
「初めてお目にかかりますね、青の姫君。私、亜桔といいます」
「鬼…ね」
「はい」
沙羅はさほど驚いてはいなかった。
「沙羅様、ご返答を願います」
「嫌よ」
「しかし、あなたはもう青龍と共には戦えないはず。それでもよろしいのですか
?」
「!?」
「あなたには季立がまだ存在します。こちら側について頂ければ、その力は倍以
上にも跳ね上がるはず…」
亜桔は優しく、穏やかに言った。
しかし、沙羅は逆に違和感を感じた。
「私の力を利用するつもり…?」
「ご協力いただけますね…?」
亜桔の声色が明らかに変わった。
重く、低い声へと。
「嫌よ!!」
沙羅は叫んだ瞬間に体をかがめた。
ヒュ…ッ…
『かまいたち!?』
左腕を支えにして重心を後ろに移動する。
「……っ!?」
左腕に鋭い熱が走った。
それは遅れて激痛に変わる。
「沙羅様…ご承諾を…」
「嫌ったら嫌!!」
「ならば、力ずくで従わせるまで!!」
亜桔は両手を広げた。
何かが起きる。
沙羅は反射的にそう考えた。
させない!!
「立夏・風化集結ッ!!」
沙羅は右腕で亜桔目掛けて立夏を放った。
しかし、次の瞬間に沙羅は両腕に激痛を感じた。
「な……」
目を見開く。
そこに居たのは…
ブログ作りました。
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です。
日々つらづらしています。
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