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第二三話

「だからって、ここまでする必要があるの…?」

人間界に戻った沙羅はベッドに腰掛けながら言った。

「仕方ない。鬼はお前の中に居るんだ」

「じゃあ、なおさら意味ないじゃない」

はあ、と深くため息をついた。

しばらくの沈黙が続く。

すると、沙羅がそういえばと、口を開いた。

「青龍って私の名前知ってる!?」

「当たり前だ。『沙羅』だろう」

「じゃあ、ちゃんと名前で呼んでよ。いつも、『お前』とか『こいつ』とかじゃない?」

立っている青龍に満面の笑みで言った。

「…………」

黙り込んだ青龍は俯いてしまった。

「青龍…約束しよ?」

沙羅は右手の小指を差し出した。

しかし、青龍はそんな沙羅に背を向けてしまった。

「……分かった」

聞きづらいほど低い声だったが、沙羅はにっこりと笑った。

「あと、もう一つ聞きたい事があるんだけど…」

「何だ」

相変わらずそっぽを向いたままの青龍に向かって言った。

「青龍の部屋にあった花ってどうしたの?」

「ああ。あれは、朱雀から貰った物だ。秋桜あきざくらと言ったか」

「コスモスの事かしら?何で……」

何で朱雀は青龍にコスモスなんかあげたのだろう。

まさか……

沙羅の脳裏に一つの考えが浮かんだ。

「ねぇ…青龍と朱雀ってどうゆう関係?」

「四神」

「そうじゃなくて…」

あまりにもあっさりとした答えに、些か脱力する。

「恋人同士だ」

「……っ!?」


ドクン


沙羅はきつく拳をにぎりしめた。

鼓動が早くなる。

嫌な汗が背中を伝った。

「そう答えて欲しかったのか?悪いが、少なくともそういった関係ではない」


少なくとも…

その言葉が頭から離れなかった。

沙羅は無言のままベッドに潜り込んだ。

「どうした?」

「何でもない…帰っていいよ」

青龍とは反対の壁側を向いていた。

どちらかというと、帰ってほしい。

早くこの場から立ち去ってもらいたい。

「お願いだから…帰って」

震える声を押し殺し、言った。

「分かった」

青龍はそれだけ言って姿を消した。

「何でよ…」

嫌だった。

どうして…?

何が?

誰が?


―――嫉妬―――


たどり着いた結論。

分かった答え。

「私…朱雀に嫉妬してる……?」


そっか…

やっと分かった…


「私…青龍の事好きなんだ……」







「何なんだ…全く…」

帰れと言われたが、青龍は沙羅の家の屋根に座っていた。

「沙羅…」

誰に聞かせるでもなく呟いただけだったが、不意に答えが返って来た。

「何じゃ?喧嘩でもしおったか?」

「なっ…!?」

後を振り返れば、玄武が立っていた。

「純はどうした…?」

一人ね時間を害されたのが気に食わなかったのか、不機嫌な声を出した。

「いやいや。純は立派なあるじじゃからな。安心できる。心配なのはお前達じゃ」

「喧嘩は…してない…」

「怒らしたんじゃな…全く…」

青龍の隣に腰を下ろすと、どこからか酒を出した。

「体に悪いぞ」

「かまわん。少量なら良薬じゃ」

そい言って、にかっと笑った。

「なぁ青龍……この際本当の事を言ってしまえば…」

「玄武。冗談は止せ。まだ早い…」

月明かりの下で、青龍の深青色サファイアの瞳が玄武を射た。

「そうじゃったな…だが、くれぐれも沙羅殿にはばれないようにな…」

「分かっている…」

青龍は深くため息をついた。



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