第十八話
沙羅には身に覚えが無い。
それを望んだ?
「それってどういう事…?私が望んだ…って…そんな…」
『沙羅さん。それは考えなくてもいいことよ。私の事も一度使っているから分か
るわよね?薄氷流水で相手の感覚を全て無くすの。動きを封じるくらいにしか使
えないけど』
「そんなことないわ!!きっと立冬を一番使っちゃうと思うけど…」
沙羅が慌てて言うと立秋が後髪を軽く引っ張った。
「うん?」
『最後は私よ。基本的に人間は空を飛べないけれど、飛翔空海、つまり私を召喚
すれば空中での戦いも可能になるのよ』
「すごーい!!」
沙羅は本気で感動していた。
何にしろ、空を飛ぶ事は誰だって夢見る事だろう。
「私、今すぐ飛びたい!!立秋、使ってもいい!?」
『えぇ!?』
「たぶん、まだ純達練習してると思うから…愛美ん家まで」
沙羅は驚いてる立秋を無視して、ベランダのドアを開けた。
「行くよ」
右腕を肩の高さまで掲げた。
「立秋・飛翔空海っ!!」
沙羅の掛け声と共に、立秋が右腕に絡んだ。
と、思った刹那には中に浮いていた。
「わぁ…っ!!」
『無茶だね、沙羅さんは』
立夏の光が沙羅の横から言った。
「これって、普通の人には見えるの?」
『いや。でも、純君達みたいな人には見えるんだ』
「あ。愛美達だ」
説明している立夏をよそに、沙羅は立秋を離した。
沙羅が弓道場に飛び降りると、全員の注目を集めた。
「な…っ!?沙羅っ!!」
一番最初に気付いたのは純だった。
なぜか彼は汗だくだった。
「沙羅先輩っ!!」
同様に驚きの眼差しを向けたのは和美だった。
「あはは。季立のおかげなんだ。すごいでしょ?」
沙羅は得意げに言った。
「季立?なんじゃ、それは。沙羅殿の能力か?」
そう尋ねてきたのは玄武だった。
「うん」
「コントロール出来るようになったようですね」
「ありがとう、朱雀」
朱雀にお礼を言った後、純と和美の方に振り返った。
「で。二人は何をしていたの?」
「俺達は、霊砲の練習。というか、実戦」
「実戦?」
「はい。実際に純先輩と珠で戦っていたんです」
どうりで。
沙羅は納得した。
二人が汗だくだったのはそういう事か。
「霊砲の珠を教えて」
沙羅は玄武に言った。
「私がか?」
「もちろん」
「じゃあ…両手を合わせて、霊気を込めなされ」
沙羅は言われたままに両手を合わせた。
「言霊を…」
『狩りし者!白の華が紅に変わりし時!!黒き者が再び清くに染まる!!ニの珠・霊砲!!
』
「……れ?」
全くと言っていいほど反応がない。
「えー…っと…」
沙羅が戸惑っていると、玄武がため息をつきながら言った。
「やはり、沙羅殿は攻撃的な珠向きではなさそうですな」
「でも…っ…!!」
でも、立夏は攻撃的な技である。
そう抗議したかった。
だが、あえて何も言わなかった。
たとえ立夏を自分が使いこなす事が出来ても、きっと攻撃できない。
沙羅はそう思った。
しばらく更新とろくなります。
それでも一週間に一回くらいは…
と、考えています。