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第十五話

沙羅は青龍の正面に立った。

両手は平を青龍に向けて。

「いいですか?復唱してくださいね…?」

沙羅は小さく頷いた。

『紅の華・白の華。空の果てと無限の地。三の珠・浄結』

沙羅の手から暖かい光が溢れた。

かと思えば、青龍の呼吸が徐々に緩やかになっていった。

「ずげえな」

純は関心したように言った。

「大丈夫?少しは楽になった?」

沙羅が青龍の顔を覗き込むと、顔を片手で隠してしまった。

「大丈夫だ…心配いらない…」

その言葉に安心して、体を持ち上げた。

「沙羅さんはどちらかというと、攻撃的な珠は向いてないわね。人を癒す珠の方

が素敵だし、難しいのよ」

朱雀は笑って言った。

すると、人のざわめき方が変わった。

「何か…あったのか!?」

「手遅れにならない内に、早く行くわよ!!」

六人は騒ぎのあるほうに走って行った。

たどり着いたそこは……

「今日、高校の弓道大会なんだ…」

沙羅はそう呟くと、中に走っていってしまった。

「…っ待てよ、沙羅!!」

残りの五人も続いて入った。

「沙羅っ!!待て…」

袴姿の学生が走って出口から逃げようとする中、逆流するのは一苦労だった。

「沙…羅……」

ようやく立ち止まった彼女に、純は声をかけた。

しかし、返事はなかった。

しばらくして、観客用の柵に身を乗り出すようにして、競技場を見た。

「どうした?」

青龍が沙羅の隣に並ぶと、震える指で中央を指差した。

そこには、五人ほどの学生に暴行されている少年がいた。

「おい…沙羅、あれって…どこ……」

どこかで見た事がある。

純はそう言おうとした。しかし、それより早く沙羅が叫んだ。

たくっ!!」

言うなり柵を飛び越え、その少年の元に向かっていた。

「何をする!?」

青龍は沙羅に向かって叫んだが、聞く耳を持たない。

「クソ…」

純や青龍達も沙羅に続く。

沙羅はとにかく信じたくなかった…

どうしてあの人が……

まさか……


その時、沙羅から発せられた言葉…

『四の泉に湧き出し水の精よ!!青龍の主である我に使えよ!!立夏りっか!立冬りっとう!!』

無意識の内に、両手を前に出していた。忌まわしき者達に向かって…

清浄結界の時と同じように。

その手の先から青と黄・二つの光が放たれた。

『立夏・風化集結ふうかしゅうけつっ!!』

その声と共に、青の光が輩に飛び掛かった。

「…っわ!?!?」

いきなり、限りない突風が吹く。

続けて言霊を言い放つ。

『立冬・薄氷流水はくひょうりゅうすい!!』

その言葉と共に黄の光がほとばしる。

退け』

沙羅は自分の声とは思えなかった。

第一、こんな言霊は誰にも教わっていない。

しかし、彼を守りたい。

守りたかった。

「ぐ……っ…」

次第に輩の顔が青ざめていく。

「止せ」

青龍の言葉に沙羅は意識が戻ったような感覚に捕われた。

「っ…!青…龍…」

「それ以上やると、死んでしまうぞ」

「ごめ…なさ……」

自分が恐ろしかった。

このままでは…

「あいつらを戻せ」

「分からない…どうしたら…」

「大丈夫だ。おまえには分かっている。あいつらの扱い方を…」

沙羅は目を閉じた。

『私には、分かる…』

「戻れ」

それだけだった。

それで十分だった。

二つの光は沙羅の元に帰って来た。

すると、二つの光は人型に変わっていった。

否、人型というのは正しくないかもしれない。

小さい。

背丈は十五センチ位。

青の光は少年に。

黄の光は少女に変わった。

「ええぇぇ!?」

『気付いてくれてありがとう』

小さな少年の方が話して来た。

「あ…えと…」

沙羅が戸惑っていると、青龍が語りかけてきた。

「そっちも大事だが、まずはあっちだ」

そう言って指差した先は…

「沢…」



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