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第十二話

「皆さんにはまず、結界を張れるようになっていただきます」

「結界?」

三人は同時に聞き返した。

「自分自身を守っていただかなければなりません」

「どうしたらいいの?」

沙羅は真っ先に聞いた。

「私は結界を張ることはできません。でも、言霊と振りだけは分かります。真似

してください」

「わかったわ」

愛美は二本組んだ指を前に出した。

沙羅もそれに従う。


『刹那!十九の時が強欲な支配を求めている!二十の生・二一の死!三五のじゅ

・結界!!』


二人の声が重なった瞬間、沙羅の側にいた和美の様子が変わった。

「……っ」

「どうした、和美」

「あ…いえ…」

一瞬、身体が飛ばされそうになったが、すぐに治まった。

「…で?これって結界張れてるの…?」

沙羅は組んだ指を前に出した格好のまま言った。

「多分張れていませんね。一瞬だけ張れていましたけれど…」

愛美は言った。

「いいですか。大切なのは、自分の霊力をコントロールできること。思った通り

の扱いが出来なければ、回りの人に危害が及ぶ事もあります」

「んな事言ったって…扱い方も知んねぇよ」

純は自分の頭をくしゃっとかきあげた。

「いいえ。今もコントロールしていますよ。まぁ、強制的にですけれど」

「え…?」

「そのペンダント。今の貴方達の霊力は本当の五分の一。相当押さえられていま

す」

「五分の一…」

その言葉に沙羅は大きな不安を抱いた。

『じゃあ、残りの五分の四は…?』

すると、純が自分の首からペンダントを力任せに引き契った。

鎖がシャラリとなって、切れた片方が地面に落ちた。

「じゃあ、こんなもん無ぇ方がいいじゃねぇか」

「何してるんですか!?」

愛美は純に向かって怒鳴った。

「俺ぁ回りくどい事は嫌いなんだ」

右手に持っていた鎖の残りも地面に落とした。

そうして、一歩下がった。

「全員俺に近づくんじゃねぇぞ」

純は勢いよく印を結び、言霊を唱えた。

「刹那!十九の時が強欲な支配を求めている!二十の生・二一の死!三五の珠・結界

っ!!」

ドオ…ッ…

純が結んだ指先から突風が走った。

「…っわ!?」

弓道場に激しい砂埃が舞った。

「じ…じゅ…」

自らの目を庇いながら、彼な方を見た沙羅は驚いた。

「!?」


――誰――


そこに立っていたのは着物を纏った男だった。

「な…っ…どういう事…?」

そこにいた全員が息を飲んだ。

「…っ!」

沙羅は自分のペンダントを掴んで、叫んだ。

あずまの地に馳せし龍神よ、あおの色を持つ神よ、四神のあるじである我に神を使わせよ!出陣・青龍!!」

すると、空から白く鋭い光りが挿した。かと思えば少し遅れて蒼い光りが舞い降

りた。

「青龍っ!!」

沙羅が光に駆け寄ると、後からもう一人現れた。

「玄武!?」

驚きの連続だった。

「和美、お前も早く呼べ」

青龍は和美に向かっていった。

彼女は頷くと、言霊を唱えた。

「朱の鮮血と謳われし彼の女神よ、我に焔の力を遣わせよ!守陣・朱雀!!」

再び紅い閃光が走り、朱雀が現れた。

「馬鹿ね、あの子」

朱雀はため息をつきながら言った。

「私の責任になってしまうがな…純の阿呆ンだらが」

「つべこべ言わず片付けるぞ」

青龍は型の高さまで右手を上げた。

「待って青龍!!」

沙羅の声に青龍は動きを止めた。

「純はどうなっちゃったの!?私達は…」

「お前は黙って見てろ。大丈夫だ。あいつはなんとかする」

青龍は掲げた右手を勢いよく下に振り下ろした。

その直後、彼の右手には神器が握られていた。

それは、宝具・龍矛りゅうほ

「朱雀。そっちはまかせるからの…」

玄武は額の前辺りに右手を上げ、呟いた。

「来い・雷光らいこう

玄武の手には一本の刀が握られていた。

名を、雷光。

「先輩は…どうしたんですか…?」

和美は自分達の前に立ちはだかる朱雀に問うた。

「一気に霊力が開放されて、収集がつかなくなったのです。つまり、今の彼は霊

体、幽霊です」

「肉体に…霊力が納まりきらなくなってしまったんですね」

「はい」

沙羅は彼等を見た。


「こりゃあ…ひどいな」

玄武は呟いた。

「近づくこともできないな…」

青龍は矛を掲げた。

すると、その手を玄武が止めた。

「止せ。力ずくでやったら純が死んでまう」

「無理だ。今のこいつに言葉は通じない」

青龍は冷たく言った。

「貴様…純が死んでもいいと言うんか!?」

玄武は顔を歪めて怒鳴った。

「何してるの!?二人とも早くして!!」

後から朱雀が叫んだ。

「朱雀もああ言ってる。このままではみんな死んでしまうぞ」

青龍は右手に力を入れ、玄武の腕ごと振り下ろそうとした。

「待って!!」

背後から聞こえた声は沙羅のもの。

彼女は弓を引いて立っていた。切っ先は純。

「どいて。当たるかもしれないわよ」

「何するつもりじゃ!?青龍のひめ……」

玄武が言い終える前に矢は放たれた。

沙羅の矢は純の結界を突き抜けて、彼の真横を掠った。

一気に集中が解けたせいか、純は悲痛な叫びを上げ、倒れた。

「純!!」

玄武は純に駆け寄った。

彼はもう着物ではなく、制服に戻っていた。

「お前…何をした?」

青龍は沙羅に歩み寄り、尋ねた。

「うん?弓矢で撃っただけだよ」

「違う。純の霊力をどうやって静めたかを聞いているんだ」

すると、沙羅はああと言って下に落ちていた鎖を取り上げた。

「これ、純のペンダントの一部なんだけど…これを矢の先っちょにくくり付けた

の。自分の結界も少し結んでね」

そう言って、ニッコリと笑った。



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