第十一話
「う…ん…」
沙羅は何かふわふわしたものの中で目が覚めた。
「よぉ。目、覚めたみてぇだな」
「純…」
沙羅は保健室のベッドで横になっていた。
「私…?」
ベッドから体を起こし、純に尋ねた。
すると、一人の少女がカーテンから顔を覗かせた。
「あ、先輩。起きたんですね」
「あーっと…」
「和美です」
彼女はにっこり笑って言った。
「あれ…?青龍達は?」
「いったん神界に帰った。人間界にいるとすごい霊力を消費すんだとよ
」
純は和美に水を持ってくる用に頼んだ。
「何か…今日はいろいろと大変だったね…」
「まだ今日は終わってねぇよ」
純はため息をついた。
「先輩、お水…」
「ありがとう」
和美が持って来たグラスを受け取った。そして、水を口に流し込んだ。
「ふぅ…」
一つ息をつき、天井を仰いだ。
「あっ、気がつきました?」
保健室の先生が顔を覗かせた。
「はい。お騒がせしました」
沙羅は座ったまま頭を下げた。
「いえいえ。それじゃあ、二人は6時間目に行きなさい。沙羅ちゃんは…どうす
る?」
「私も行きます」
沙羅は上履きを履きながら言った。
「沙羅、大丈夫!?」
教室に入るなり、美佐が駆け付けて来た。
「うん。ありがと」
「心配したんだから。屋上で倒れたって聞いて」
「ごめんごめん」
すると、ポンと後から軽く頭を叩かれた。
「いい友達を持ったな」
純はそう言った。
「え…」
「なーに?沙羅と純君てそういう関係??」
「違うよ」
その日、沙羅は弓道部には出なかった。
純、和美と共に愛美に呼び出されたからだった。
「ちょっと此処…」
和美は思わずそれを見上げた。
沙羅と純も例外でない。
「私の家です。今日から此処で修業しましょう」
そこは赤い鳥居に長い階段があった。
「ま…真面目に神社だったんだ…」
四人は階段を登り始めた。
すると、一人の女性が箒で境内を掃いていた。歳は五十位だろうか。
「あら、まなちゃん。お帰りなさい」
「ただいま、おばあちゃん。裏の弓道場を借りてもいい?」
「どうぞ」
その女性はとても優しく微笑んだ。
しかし、その女性の瞳は確実に沙羅を捕らえていた。
「弓道場なんてあるの!?」
沙羅は愛美に尋ねた。
「はい。昔、叔母様が使っていました」
「叔母…」
沙羅はそう呟いてから、愛美に言った。
「ね、少し借りてもいい?弓道場。今日部活出るつもりだったから持ってきてる
んだ」
「いいですけど…制服でやるんですか?」
「問題無いって!」
愛美は更に境内の奥に進み、家の裏に回った。
「すげぇ…マジで弓道場がありやがる…」
「よしっ!大会近いんだから練習させてよね!」
沙羅は背負っていた長い物を下ろした。
そして、中から弓を取り出した。
「あーっと…愛美ちゃん、矢ってある??」
「あります。ちょっと待ってて下さい」
愛美はそう言って表へと回っていった。
「修業って何やるんだろう」
沙羅は弓の調子を確かめながら言った。
「さぁな。でも、今日俺達が会ったあの恐怖から身を守るものだろ?」
「んー…多分ね…」
すると、愛美が矢筒を持って来た。
「ありがとう。いくつ入ってるかな…と」
「六本しかなかったのですが、よろしいですか?」
「全然大丈夫」
沙羅は笑って言った。
一本だけ矢を抜き、立ち上がった。
「先に修業しててもいいからね」
沙羅がそう言うと、和美が言った。
「私、見ていてもいいですか?」
「もちろん!」
沙羅は的の正面に立った。
「じゃあよく見ててね」
見ているのは和美だけではない。そこにいた全員が注目した。
「よし…」
沙羅は気合いを入れ、弦に矢を掛けた。
一つ息をつき、顔の横で一気に引いた。
キリ…ッ…
一瞬の沈黙。
タァン……ッ
矢は僅かばかり中心からずれたものの、大分中心に近かった。
「すっごーい!!」
和美は手を叩いた。
「うーん…もうちょいだったのに…」
沙羅はもう一本矢を取った。
「先輩…」
愛美はしびれを切らせたように言ってきた。
「もう一本だけ…次は命中させるから」
沙羅がそう言ってからほんの数秒もかからなかった。
タンッ…
「…え?」
これには流石の愛美も驚いた。
今度は確実に中心に当たっていた。
「すげぇ…」
純も目を丸くして言った。
「んじゃ、愛美ちゃんの言う修業ってやつをやろっか」
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