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短編小説集  作者: 裕澄
7/40

俺は部屋に鍵をかけた

流血描写あり。


ある少年の日常の話。

結構ショッキングな描写もあります。

「お前には生きる意味があるのか?」

そう言われている気がして俺は部屋に鍵をかけた。


外側から開けられたら意味がない。


だから俺は、部屋に籠る前にホームセンターで

掛け金具と南京錠を買って

内側から鍵をかけた。

元から付いてる部屋の鍵と二重の鍵をかけた。


親は共働きだし

年の離れた兄貴は

地方の会社で寮生活をしながら、仕事をしているらしい(兄貴は、大学入ってから一人暮らしだからよく知らない)


母さんは、パートでバリバリ働いてる。


部屋に籠ってたまに訳が分からなくなって

叫んだりする俺を見たくないんだろう。


朝 昼 と飯だけは、作って冷蔵庫に入れておいてくれるお陰で食いっぱぐれる事はない。


晩飯は俺が部屋から出てこないから、

その日の晩飯にラップをして俺の部屋の前へと置いて去っていく。


家に誰かが居るときは

気配が無くなってから、俺は慎重に南京錠を開けて

晩飯の置いてあるおぼんが通過できるギリギリしか、ドアを開けない。

あと人が居る時にドアを開けるのは、トイレと何日かに1回入る風呂の時だけ。

俺の部屋は2階で家の男連中(俺 兄貴 親父)の部屋とトイレがある。トイレは生理現象だからしょうがない。


風呂は気が向いた時に、家に人が居なければ入る。


兄貴は寮暮らしだから部屋が物置状態だし、

親父の部屋(って言うか書斎)は1階に続く階段の側で俺の部屋が一番奥だから、親父が2階のトイレに来ない限り会わない。って言っても堅物の親父は2・3日前まで


「お前の行動が、理解できない。

俺の息子である、お前がこうなる訳がない!何故こうなったんだ。お前の事は、手に取る様に分かっているのに!」って、部屋の前まで来て怒鳴り散らしていた。

とてつもなく迷惑な話だ


親子だって言っても所詮は他人


「血が繋がっているから、何でも分かるんだ!」だってよ。


馬鹿じゃねぇの??

俺自身でもわかんねぇんだよ。

なんでこうなってんのかなんてさ。


確かに、学校じゃあ少し浮いてただけど、

普通に過ごしていた…はず。


ある一点をのぞけば。

俺の親父はさっきも言ったけど、堅物

簡単に言うとアニメとか漫画に出てくる頑固親父で、さらに厄介なのが俺や兄貴に自分の理想を押し付けてくる事だ。


土日は、家族全員で出掛ける

親父が帰ってきたら晩飯が出来ていて全員揃って晩飯を食べる


小・中と親父と同じ学校に通わされ野球も習わされたし、行きたくもない塾にも通わされた。


高校に関しては、親父が問答無用で決めた。

「お前のレベルだと、この高校に進学しろ」と、入学案内の書類を手渡された。


高校生になっても、門限は夜7時。外泊なんて出来なかった。

いや…許されるはず無いと諦めて誘いを断り続けた。


何もかも従って生きていた訳じゃなくて、

俺は何度も逆らおうとしたんだ。

だけど、無駄だった。

いや、逆らうと言う選択肢を取れば、親父の鉄拳が俺の頭に降り注ぐ。


酒を飲んで酔っ払っている時に、誰かが逆らおうとすると物や家の壁 終いには、俺たち家族にあたるようになって、

今でもリビングには親父が壁に開けた穴が残されている。


鉄拳を避けれる方法は、

親父の言うことを聞く。

親父の思うようにする。


これが最善の策なんだ。

親父の言う通りにすれば家の中は平和なんだ。


だから、小さい頃からこの生活が普通だと思っていた。

だけど、ある日ふと気付いたんだ。

俺は親父の作品なんじゃねぇのか??って。


兄貴は要領いいし勉強も運動も出来るから、親父には好かれている。


それにくらべて、俺は要領はあんまり良くないし、勉強も運動も兄貴の足元にも及ばない。

だから、「俺より兄貴の方が理想の子供なんだろうな」と、よく思う。


そんな事を考えていると

左手首少し下の辺りがジンジンと痛んだ。


あぁ…俺、またやってたのか。

右手には血のついたカッターが無意識に握られていた。

そして俺の左腕には赤い血が滲んでいる1本の線。


俺の左腕にはそんな後がいくつもある。


この部屋に籠るずいぶん前、

「俺は親父の作品なんじゃねぇのか?」って思い始めた頃、

はじめて、リストカットをした。

リスカごときで死ねるとは、思ってはいなかった。

でもこれで楽になれる気がしてた。


でも、痕になるほどやってる。

ネットとかで無意識でリスカしてる。とか見て


「絶対嘘だろ(笑)どんだけメンヘラなんだよ、コイツら。」とか思ってたけど、

実際、俺も無意識でやってる事に気付いた時

どうにかしようと足掻いてみたけど、

結局俺はリスカをしてる。

やり場の無いこの思いをどこにぶつけていいか分からなくて、

部屋の壁をさっきまで、カッターを持ってた右手でブン殴ってみた。


親父ほど力がある訳じゃないしもうどこも出かけずに数ヶ月が経ってるから体力も無くて、

壁に負けて右手の握りこぶしからも、血が出てる。


ラッキーな事に平日だから親父は出勤中

母さんも ついさっきパートに出たばっかりだから、

俺は部屋を出てとりあえず、リビングにあるティッシュで一応止血をしたら風呂にでも入ろうと思う。


俺はいつまでこうしてるんだろう…。


漫画のヒーローみたいに、

俺を救ってくれる人はいるのか?

なんて、考えながらリビングに着くと、テーブルの上には

【きみの未来は、ここにある! 高校生活を再スタート! 通信制 〇〇高校】ってパンフが置いてあった。

親父の仕業だ。

籠った初日にドアの向こうに居る親に俺は、

「高校退学する。俺は、この部屋から出たくない。」

ってノートの切れ端に書いたメモを、

ドアの隙間から廊下に出した。

もちろん、親父は怒鳴り散らしていたけど、

俺も親父以上に怒鳴り散らして、何を言ったのかすら覚えてない。


ひとつ覚えてるのは、

母さんの声が震えていた事。

それ以外覚えてない。


パンフをグシャグシャに丸めてゴミ箱につっこんで

血のついたティッシュもゴミ箱に突っ込んだ。

ペットボトルを冷蔵庫から取って俺はまた、

鍵の付いた部屋に戻って鍵をかけた。

私自身

周りにリスカしてた友達もいました。

でも、なにも他の人と変わらないんです。


私も少し状況が違えば、彼と同じ様な境遇になっていたと思います。


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