続 曼珠沙華の忍び
曼珠沙華の忍びの続編です
曼珠沙華の忍びが任務を終えた後の話です
製作キーワード
【忍者×彼岸花】
「さてと…。後は報酬を貰うだけね。」
山中の庵で忍び装束に身を包んだ、"曼珠沙華の忍び" 千 は越後屋の下へ闇に紛れて行動を開始した。
江戸の町には、
幕府の側近が狐面の忍びに殺された
という、噂が出回っていた。
その内容というのは、
ある里の狐面を付けたくの一が
女中として幕府の側近に近寄り闇討ちをしたが
その現場を用心棒の男達に発見され
変わり果てた姿になるまで、仇討ちされ
その遺体には血に染まった彼岸花が添えられていた
という物だった。
狐面を仕留めたのは千であるが
大筋の話は事実と大差がない。
「どうやら、鉄砲については出回っていないのね。」
腰に隠し持っている鉄砲を触りながら、屋根づたいに越後屋の屋敷へと移動している。
『最新式として、エゲレスから裏の取引でてに入れた品物だ。』
と越後屋が自慢気に話していたのを思い出し、
交渉の材料として鉄砲を使うことを思い付いた頃
越後屋の屋敷に到着した。
越後屋の屋敷に侵入すると、
いつもとは違う空気を纏っている男が客間で越後屋と会談をしていた。
「…越後屋…お前さんも人が悪いな。」
客間の側にある柱の影で男と越後屋の会談に耳を澄ませている。
「…利益になる物には…目がなくてな。」
「彼女の情報を此方に渡して頂けますか??」
「あぁ…二十両だろう??売ってやるさ。そろそろ来る刻限だな…。
五十両出すなら、引き渡してやるよ。」
そう越後屋が言った瞬間
ビュッと襖の障子を突き破り、女物の柄が入ったクナイが越後屋と男の前を通り過ぎて壁に突き刺さった。
「曼珠沙華っ!貴様っ!何をしておる!!」
越後屋が穴の空いた障子を開けると、
全身黒で口元も隠した忍び装束に曼珠沙華の髪飾りを付けた
くの一がその場に待機していた。
「…酷く懐かしい匂いがする者が居ましたので、ご挨拶に…と。」
とくの一は殺気に帯びた目を越後屋に向けた。
殺気を身に纏い男に話しかけた。
「…遂に貴方まで此方に出向いて下さるとは…。
お久し振りです…兄様。」
「…ハッハッハ。兄妹であったか。ここで、兄妹の再開に立ち会えるとはな。」
越後屋はそう空笑いをした。
「…越後屋。さっさと、報酬を置いてこの部屋を出ていけ。さもなくば…」
くの一は、腰に忍ばせていた鉄砲を取り出し
銃口を越後屋の頭へと向けた。
「…バーン。と頭を撃ち抜いて差し上げますよ。」
銃口を向けながら、口元を隠していた布をずらし笑った。
「馬鹿者がっ!!ここは私の屋敷だ!
それにお前達二人が討たれれば何も問題はっ!」
「…このくの一が 曼珠沙華の忍びが
そんな事を貴方にさせるでしょうか??貴方も命は惜しいだろ??」
男は壁に突き刺さった女物のクナイを抜きクナイを構えた。
「流石のご判断ですね。
兄様…いや
忍び里の若頭 陽炎殿??」
というとフッと笑った。
「それに越後屋。
この者は、十で己の兄以外を除いた家族を手にかけ
禁を犯し、里を抜けた忍び。
貴方の歩兵達がいくら束になっても敵う相手では
…ありませんよ。この竜馬は。」
「それに俺も居ることですし…無駄ですよ。」と陽炎は付け加えた
「…この屋敷の者は"貴方を助けに来ない"いや、"来れない"の間違えね。この巻物が私の手元にある限りはね。」
里から盗み出した秘伝の巻物を取り出した。
「…だから、さっさとその懐にある
報酬の五十両。渡しなさい。
…これは命令よ??」
そう言って、くの一は越後屋の眼をじっと見つめた。
「…馬鹿言うなっ…その鉄砲に…幾ら掛かったと…」
反論する越後屋の眼からはどんどんと、光が消え虚ろな眼になっている。
「…五十両でも易い方よ??
そうね。その五十両と、このエゲレスの最新式の鉄砲で手をうってあげる…。狐面に関係する物も処分できるし
好都合でしょ??…ね??」
そう言い終わると、
越後屋は納得したかの様に深く頷き
懐に持っていた五十両をくの一へと手渡した。
「…そしてこの客間から、少しの間だけでいいの。…席を外してくれない??兄様とお話がしたいの…。」
そう眼を見て言い終わると、越後屋はまた深く頷くと、迷いなく客間から去っていった。
「…さてと、陽炎兄様。私を殺す為に越後屋に取り入ったんでしょ??」
小刀を取り出した千は、越後屋の出ていった事を確認すると
陽炎へと向き直った。
「あぁ…"万一里の者が禁を犯した時、身内が方を付ける"これが里の掟だからな。」客間に飾ってある日本刀を手に取り、刃先を千へと向けた。
「だが、お前が露払いをした所でここは人目に付きすぎる。
そもそも、お前の術がどれ程の人数に効いてるかも判らない。そして俺自身、萩殿の様になりたくは無いからな。」
越後屋の客人としてこの屋敷に入った陽炎としては、ここで千と戦いあうのは危険が伴う。
陽炎にとっては、敵地に丸腰で乗り込んでいる様な物だった。
萩とは、狐面の忍びの名前である。
萩が彼女の真名であったか、
忍びとしての名なのか…。
千自身忘れてしまった。
「では…命を取り合う"愉しい時"はまた、今度としましょう。…さようなら…陽炎兄様。」
そう言うと煙幕が上がり、
その煙が消える頃には煙と共に千の姿は消えていた。
「…今度は必ず仕留めてやるからな…千。」
これにて一応 曼珠沙華の忍びは終了です。
陽炎サイドの話は書くかもしれませんが。
ここで
小ネタ解説を。
五十両とは簡単に換算すると現在の500万円程らしいです。(一両10万円計算)
狐面の別名 桔梗 萩 は秋の七草
陽炎 千 はゲームの影響ですかね(笑)
歩兵の話は 将棋から来ています。
歩兵は 歩の駒
竜馬は 角行(角)の成り駒(裏)
動きとしては、角+金 です
エゲレス はお察しの通り イギリスです