続 ShadowKnight
前話の政木田さんのお話です。
制作キーワード
仕事×家族
「んで、お兄ちゃんはやっと"前に進める"って訳ね。」
智香は俺の話を聞きながら、
実家用にと、土産で持ってきた有名店のシュークリームを実家のリビングで俺と向き合いながら頬張っている。
「それにしても、このシュークリーム美味しい~幸せな気分になるわ。さっすが、アイドルのマネージャー。
いい店知ってるねぇ。」
俺と5歳離れてる智香は、風雅と同い年の20歳。
「智香…お前 相変わらず色気より食い気だな。」
まだ俺が現役アイドルだった頃
『お兄ちゃん、風雅くんに気遣ってるでしょ??見てる人にバレてるから…そーゆうの、スッゴい冷めるから、見てる方は。』
と的確なことを言われた。確かにシンメで風雅とデビューしても、『どうせ、風雅のバーターだから。』と
諦めていた時だった。
その時から、智香に仕事について相談する事が増えた。
もちろん業界の人間じゃないから
詳しい事は言えなかったりしたが、智香はアイドルが好きで、アイドルを見る目は肥えていた。
だから、ライブでの振る舞い方 どうしたらファンの女の子たちが喜ぶのか。そんなことを色々と相談した。
「お兄ちゃんが風雅くんのマネージャーするって、聞いたときは
ビックリしたけど、まぁ…あの事件があった後、ステージに出れる状態じゃなかったもんね。」
急に智香がしんみり話はじめた。
「あの時の俺は荒れてたからな。」
俺もお土産で持ってきた、シュークリームを手にとって頬張りはじめた。
「お土産っていいつつ、お兄ちゃんも食べるんじゃん。シュークリーム。…もう一個食べようと思ったのに。」
そういってふて腐れている様子を見ると
やっぱり、こいつは色気より食い気だ…と実感する。
「半年ぐらい夜うなされてたもんね。」
ライブ終わりに、ストーカーになったファンに腹を刺されてから半年間、俺は毎晩 夢でうなされていた。
「…今だからゆーけどさ。お母さんめちゃくちゃ後悔してたよ。『私が事務所に履歴書送って、オーディション受けさせなければ…こんなことには』って。」
「えっ!?」
「『智史に、私の夢を託して無理させ過ぎたかも』って言ってた…まぁ、あたしもおんなじようなモノだけどねぇ。」
「初耳なんだけど。」
「そりゃそーだよ。いってないもん。それにいいの??今日、実家にいて。」
「ShadowKnight、生放送のインターネット番組に出るんでしょ??
行かなくていいの??"政木田マネージャー"??」
智香はどや顔で俺に聞いてきた。
「っ…!! お前、マネージャーじゃないのにスケジュール把握しすぎだろ。」
俺は智香から出されたお茶を吹き出しそうになった。
「『心配だろうが今日は休め。アイツらには、オレが付いてってやるから。』って、大渓さんが。」
大渓さんは、俺が現役だった頃にお世話になっていたマネージャーで、現在は俺の上司。
「大渓さんじゃ安心じゃん。どーする??風雅くんが『俺、大渓さんがマネージャーの方がイイっす。』って言ったら?」
「ばーか。風雅に限って、そんなこと言わねぇよ。」
「さーてどうかなぁ。どっから、その自信が出てくるのよ。」
「そりゃあ、
俺が風雅の元シンメだからに決まってんだろ?」
「…あぁー。はいはい。
こりゃ、いつまで経っても無理だね。」
智香はあきれ顔だ。
「なにがだよ??」
「なんでも、ありまっせーん。」
なんだか、バカにしたような智香の口調にイラっとした。
「言えよ、智香。」
「嫌ですー。…そのまま"夢"追ってる方が、お兄ちゃんらしいよ。」
「…サンキュー。」
「せっかく、お兄ちゃんも居ることだし、リビングのテレビで見ようよ!!
ShadowKnightが出る番組。」
そういって、智香はさっそく立ち上がった。
「じゃあ、パソコン持ってくるわー。」
そういいながら自分の部屋へ小走りで向かった。
「ってか、なんでマネージャーレベルでスケジュール知ってんだよ!!」
聞き逃した疑問を大声で聞いてみた。
「秘密ーお兄ちゃんには絶っ対言わないー!!」
そういってはぐらかすだけで
実家にいる間何度聞いても答えてくれなかった。
智香が言いかけたのは、
「智史に彼女(いい人)が居ないのか??」と親が詮索してる。
ってことですね。
智香は、お兄ちゃんが夢に向かってる姿が好きなんだと、思います。
きっと智香は、ShadowKnightのファン制作の情報Botとか、管理してますね(笑)きっと。