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2014年/短編まとめ

羊を数えて

作者: オミ

夜中に体が重くなり唸された。


そしてべちべちと俺の頬を叩く何か。


重い瞼を開かせながら俺はその何かを掴んだ。


「むっ」


聞き飽きたその声は妹のもので、俺の妹はこの深夜に俺の部屋で俺に馬乗りになり、俺の頬を叩き続けていた。


俺の意識が覚醒するまでの数秒、妹は不機嫌そうな顔をして一言「眠れないんだけど」と言った。


知らねぇよ。


俺は眠い、お前に起こされたせいで。


寝返りを打ち妹を振り落とすと、頭から行ったらしく唸っている。


無視だ無視。


「………お兄ちゃんに犯されそうになったって言ってやる」


立ち上がり部屋を出ていこうとする気配を感じ取り、俺は直様起き上がり要件は何だと問う。


妹は満足そうに振り返り俺の机から椅子を引き座った。


「寝れないのよ」


偉そうに無い胸を張ってそう言う妹。


だからなんだよ、俺にどうしろと。


俺が聞いても何とかしろと言ってきて拉致があかない。


俺様なの?嬢王様なの?この子。


何か方法を考えろと言い出す妹。


面倒くさい。


俺は少し待ってろと言いホットミルクを入れてきてやる。


するとコイツはあろうことか眉を寄せて「子供扱いしてんの?」と睨んでくる。


人がせっかく…。


何のかんの言ってるくせにホットミルクは全部飲みやがるし。


「それ飲んだら部屋戻って寝ろよ」


俺がそう言って布団に潜り込むと妹は俺の服を掴む。


そして寝るまで付き合えと言い出す始末。


お前が寝るまで待ってたら俺が寝れないだろうが。


どこまで自分勝手なんだ…。


俺の布団に潜り込み始める妹。


え、俺はどこで寝ればいいの。


毛布を一枚床に投げられたところを見ると、俺は床で寝るのか俺の部屋なのに。


「…………寝れないんだけど」


少しは寝る努力をしてからそういうことを言って欲しい。


「羊でも数えてろ」


カーペットの上で毛布にくるまる俺。


不服そうな声音で聞こえてくる羊を数える声。


「羊が一匹、羊が二匹」


延々と聞こえる羊を数える声。


………百まで言ったけど、行ったけど。


俺も眠くなってきた。


それでも鼓膜を震わすのはお経のように羊を数える声。


何かイライラしてきてないだろうか。


三百まで数え終えると時間的にどれくらい経っただろうか。


いきなり起き上がり枕を俺の顔面にぶつけてくる。


「いってぇ?!」


鼻を押さえて妹を見れば「寝れないし」と威圧的な態度。


そもそも百まで数えて寝れなかったら諦めるよな。


ベッドの上で布団をかぶり直しながら「大体、羊を数えて寝れるなんて迷信だから」とのこと。


なら数えんなよ。


睡眠のsleepと羊のsheepを掛けて、羊を数えると寝られるなんて話が出来上がったのだと妹は語る。


ならなんで数えたんだよ、お前。


取り敢えずこれから話しかけるなと言った妹は俺に背を向ける。


いや、もう本当に自分勝手だ。


お兄さん泣きそう。


俺は目を閉じて心の中で羊を数えてみた。


さっさと寝ないと明日が辛い。


…こうして夜は更けていくのであった。

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