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悪夢はゆっくりと



『セリカ』

 真っ白な空間に、いつも彼は座り込んでいた。そこには、鉄臭い血の匂いも、硝煙の匂いも、怒声も、剣と剣がぶつかり合う音すらしない場所。

 私と彼しか存在しない場所。

 彼はいつも私を呼んでから、手を差し伸べる。



 嬉しそうに。

 楽しそうに。



 私は彼に駆け寄って、そして隣に座った。さらりと、彼の黒髪が揺れる。



『セリカ』

 また、彼が私を呼ぶ。私に何かを囁いて、そして私も彼に笑いかける。



 嬉しそうに。

 楽しそうに。



 そうして、私も口を開く。



『あのね? --……







 そこで、世界が暗転した。



「ッ…………」

 暗い。

 天井を見上げ、少しだけ息を吐く。隣のベッドからは、すぅすぅとゼノファーの寝息が聞こえた。



 夢だ。

 そう、ただの、夢だ。



「……」

 ゼノファーを起こさないように、私は体を起こした。真夜中なのだろう。辺りはしんと静まり返って、光は見当たらない。



「……気持ち悪い」

 寝汗のせいで、服が肌に引っ付いて気持ち悪かった。行儀が悪いとは思いつつ、ベッドの上で服を脱いで着替える。深く息を吐いて、心臓を落ち着かせた。



「選んだのは、自分でしょ」

 そう言い聞かせて、ベッドに横たわり、きつく目を閉じた。

 もう、あの白い夢は見れないというのに。

 私はまた、眠りにつこうとした。

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