一方
さて、部長がもういなくなってしまい、俺が部長になっているこの比較文化学を中心に活動している文化研究部の部室に今、俺はいる。
俺と、女子の後輩である、長身貧乳の林一三と低身巨乳の山宮里子の2人だけという、学校で一番小規模な部活であるが、その二人からとある放課後に同時に告白を受けるという、希有な体験をした。
だが、二人同時に愛するなんて言うことは、俺にはできない。
その妥協策として出したのが、一カ月交代で、ちゃんと付き合う相手を決めるというものだ。
いちおう二人とも、それで納得してくれたから、最初はよかったのだが…
「ほら、先輩」
部活中というのもかかわらず、俺にべったりひっついてくる。
先月はまるまる林と付き合っていたが、今月は山宮だ。
これでもかという感じに、周りに見せつけているように思う。
きっと気のせいだと思うようにしているが、周りからの視線が痛い。
山宮が差し出してきているのは、みかんだ。
なぜみかんなのか、当人にしか分からない何かがあるに違いない。
「ありがとう」
俺は、それをそのまま受け取って、皮をめくり、一気に食べた。
このことを友人に言ったら、とてつもなく羨ましがられた。
「…なるほどな、ここ最近、二人が密着していると思ったら、そんな訳があったのか」
「ああ、前話したあれをやっている最中なのさ」
教室で一番安心して話すことができる友人に、愚痴のような口調になりながら、話していた。
「まあ、今月の最後に、決めるんだろ」
「…そうなんだよな。どうしようか」
俺は曇り空を見上げながら、深いため息をついた。