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第二十二話・「お前の死が、世の中のためになる」

「夢の終わりだ、キッチュ。死に逝け」

 地面を蹴った。

 踏ん張った箇所のアスファルトは負荷を支えきれずに割れ、くぼんだ。

 僕は高速で迫る脅威に、意識を集中させた。視界が冷静さを取り戻した時、周囲の動きがスローモーションのように落ち着いた。足元に散らばったガラスの破片を、僕を中心として回転させる。

 電車の手すりをもぎ取り、浮遊する破片を打ちつけた。

 破片が、光る弾丸となる。

 だが、総のスピードは落ちない。弾丸の方向を読んでいるのか、総を追尾する剣に、弾丸をはじかせる。

 光の乱舞。

 響く音。

 速度の落ちない総と、総の剣が、僕の持つ棒を真っ二つに切って見せた。ガラスが回転力を失って散らばっていく。次に襲いかかるは後方に控えた二本の剣だ。振り切った総の隙を補うように僕を串刺しにする。身を右に、あるいは左に傾け、僕は確実に回避する。

 すると生きた剣は、僕の逃げ道をさえぎろうと、背後を取る。

 そこへ、攻撃態勢に復帰した総が、両手の剣を同時に横薙ぎにする。

 左斜め後方、右斜め後方、そして、前方。

 左右は電車の窓。

 上は天井。

 下は床。

 八方塞の状態に、僕は一瞬の判断を要求された。四本のきらめきが僕を狙う。僕は上体を思い切りそらした。総の横薙ぎの剣が胸を掠め、背後から迫った二本の剣の柄をつかむ。握り、動きを止めた剣を二本とも床に突き刺し、下半身を力で空中に上げる。空振りに終わった総が目を大きく見開く。防御に回すはずの手と剣はきれいに振り切ったまま、電車のつり革を切り落としている。僕は、腰を右にひねり、がら空きになった総の顔面に右足を叩き込んだ。

 足には、鉄のイメージ。

 総の体が、電車の窓をくぐり、柱に激突する音が、ホームに響き渡る。目では確認できなかったが、ダメージはあったはずだ。回転させた腰の勢いをそのままに僕は立ちあがり、窓の外を見る。柱が崩れ落ち、天と地のつながりを失っている。瓦礫と化してしまった柱の下部が、不自然に積もっている。その隙間からは、総の持っていた剣の切っ先が見えた。

 僕が瓦礫に近づくにつれ、えもいわれぬ電気が、足元から脳へと駆け抜けた。

 総が柱に激突したという証拠がない。瓦礫から出た剣はカモフラージュかもしれない。

 電車の窓から飛び出した総が、とっさに剣を投げ、柱にぶつけた後、瓦礫をイメージした。

 当の総は、電車の外、窓の下に隠れて…。

 あわてて振り返ると、総が僕に蹴られて飛び出した窓の下には、剣が一本落ちており、僕は謀られたことを悟る。

「フェイクか!」

 瓦礫が吹き飛んだが、そこには何もない。持ち主を失った刃こぼれの剣が虚しく転がるのみ。

 殺気が僕の死を想起させる。首と胴体が離れ離れになった僕の姿を。

「だから言ったろ」

 空中から落下してきた総が耳元で囁く。総の腕が僕の首を強烈に締め上げる。

「俺が剣を持っている、という先入観は、この世界では命取りだってな」

 血流がせき止められて行き場を失う。顔がパンクするようだった。ぼやけて意識が揺らぐ。完全に首に入ってしまい、なすすべがなくなる。こうなると、イメージも阻害される。

「僕が…」

 最後の力を振り絞って、言葉を形成しようとするが、総の圧倒的な力によってそれすらもかなわない。

「お前と話す言葉はない。死ねよ、キッチュ」

 僕の首が壊れた人形のように折れていた。気持ちの悪い生々しい音が、構内を席巻する。響くはずのない小さい音であるはずなのに、それは高らかに響いた。総の歓喜の咆哮を示すかのように。

「ふふ…ついに補完した。補完したぞ。これで…」

 喜びに震える総が、僕を放り投げた。ごろごろと転り、ベンチにぶつかるまで転がり続けた。ホームを転がったせいか、シャツはほこりまみれになっていた。

「…!」

 総の勝利の雄叫びが凍る。

「キッチュ…!」

 わななく拳から血が滴る。僕は、満を持して電車の座席から腰を浮かせた。

 こうなることは総を蹴り飛ばしたときに予測していたことだった。総の能力を過大評価はしていても、決して過小評価はしていない。不意打ちで攻撃を加えたとしても、総の機転ならば、ダメージを最小限に食い止める。そして、迅速に反撃手段に転じる。

 布石をいくつも並べ、罠を張り、僕を巧妙に誘い込む。

 わざと不自然に積もらせた瓦礫、剣。

 加えて、電車の窓際に置いた剣。

 剣を僕の意識にたくみに刷り込ませることで、僕の行動を把握することを可能にした。

「僕が何とか罠にかからずに済んだのは、保険、という言葉。自分自身に保険をかけられるんじゃないかって、そう思ったんだ」

 背中を向けたまま耐えるように聞いている。

「僕に蹴り飛ばされて、窓から飛び出したとき、剣を柱に投げ、瓦礫と衝撃音をイメージした。そうすることによって、音に紛れて隠れることが出来る。剣をあえて窓際に残し、フェイクを装った。誰しも、裏の裏は読みきれないから」

 電車を降り、黙然とする総の背中へ向かっていく。

「もう一人の自分をイメージすることは賭けだった…」

 大きく息を吸う総。

 一度息を止め、吐き出す。

 不気味な空気が、周辺を巡る。針が空気中に内容されているようだ。

 大気が総の感情におびえて震えている…そう考えてもおかしくない圧力が迸る。深呼吸をして、自らの激情を抑制することをしなければ、この圧力が炎と化して世界を焼き尽くしていたかもしれない。

「時間がない。この世界…何より、俺自身の時間が」

 嵐の前の静けさよろしく、奔騰していた気圧が消え去る。僕は喉が渇いていく感覚を思い出す。総から発せられる鬼気。

 しかし、怯え、竦むことは許されない。雅の願いを、僕の心を満たすために。

 足をしっかりと固定し、目前の敵に構える。心を柔軟に。心を枷から解き放つ。

 放たれたのは力。

 風を切る総の右腕が、僕の頬を切り裂く。恐怖は今の一撃で吹き飛ばされた。イメージする中に恐怖を持ち込むことはない。自覚夢を自分の手足にすることができる。頬を切り裂かれたのは、かろうじて逃げられた結果ではない。反撃に出るために一歩を踏み込んだ結果である。総の脇が空き、そこへ渾身の力を込めた左手を滑り込ませる。総のイメージが防御に働くのが理解できた。打ち込んだ左手は硬質に遮断され肉体には届かない。腕を戻す暇もなく、頭が鷲づかみにされ、ひざが顔面に見舞われる。完全に顔を覆うイメージを確立できないと判断し、つきたてられたひざを額で受けた。

 鉢金が体とともに宙に舞う。

 鉢金をへこませる総のイメージがどれほどのものだったか。考えるとぞっとする。僕は反った体を丸め、宙返りで着地しようとする。だが、そう易々とはいかなかった。イメージは槍だった。着地したとたんに、胸を貫かれる。振りかぶり投擲する総。

「立ち上がれ!」

 僕が叫ぶと、僕の前に壁がせり立った。槍が壁に刺さり、僕の心臓の直前で停止した。

 僕は冷や汗をイメージに転化させる。

 着地と同時に銃を出現させる。壁を背にして、一呼吸置き、壁越しに銃を向ける。壁の消滅をイメージすると、壁は瞬く間に砂となり、四散する。砂嵐の只中、総も僕に銃口を向けていた。赤いレーザー照準が、血の滴る額を指している。

 赤い血に赤い直線。まるで僕の血が銃口を見定めているようだった。

 鏡を見ているような錯覚に陥り、僕の心がざわめき立つ。

 初弾はともに外れた。

 空薬莢が銃から飛び出す。クロスした弾丸が、並行に動き出した二人の首元をすり抜けていく。総の弾は電車の外殻に穴を開け、僕の弾は電車のないほうの石壁に向かい、行き先掲示板に穴を開けた。移動しながらの銃撃が、空を切り裂く。空気が悲鳴を上げた。電車には切り取り線のように次々と穴が穿たれていく。互いの照準を上回る平行移動。

 二人の撃ち合いをホームの柱がさえぎる。弾丸を受けて、柱のコンクリートが飛び散る。ぱらぱらと微細な粒が無数に吐き出された。

 僕は最速のイメージで黄色い線の内側に入り、柱を背にする。柱に隠れた僕に気付かずに柱を通り過ぎた総を狙おうとしていた。一瞬だが、この地下鉄のホームに静寂が訪れる。が、総が柱を通り過ぎる気配はない。どうやら、総も同様に柱を背にしているのだろう。

 左手には崩れた柱、割れた電車の窓。

 右手には一階改札口への上り階段。

 総はどちらから攻めてくる。

 僕はどちらから攻める。

 右か、あるいは左か。

 柱を背に二者択一を迫られる。

 ――右。

 僕は飛び出し、無限のマガジンを持つ銃を構える。

 そこに総の姿はない。

 背後に銃を向けても、総の姿は確認できない。

 僕は悪寒が身を無意識のうちに動かすことを知る。総が僕を照準に捉えていると思えてならなかった。

 それが、僕を助けた。

 もし、少しでも自分に過信していれば、きっと蜂の巣にされていただろう。

 過信した僕は、ホームの天井に足をつけて立っている総に撃ち抜かれている。

 過信せずに横に飛んだ僕は、難を逃れていた。

 僕は自分の気付かぬところで、逃げるか、留まるか、の二者択一を迫られていたのだ。

 右から攻めようが、左から攻めようが関係ない、制限時間有りの極限の状況下で。

 前転して起き上がった僕は迷わず上り階段へと走った。背中を向けることは危険ではあるけれども、一時でも早く後手に回る自分から脱出するためには、場の変化も重要だと考えたからである。肩越しに総を見ると、天井に足をつけた乾坤逆転の状態から、銃を破棄するところだった。銃は自覚夢の中でも重力に従順で、銃痕の残る柱の脇に転がった。と同時に、総も忘れていた重力を思い出すかのように回転し地面に降りる。綺麗に着地し、両手を広げて何かをイメージしている。

「くそっ!」

 階段を最高速で駆け上る僕に向けて、総は両肩に体現させたミサイルランチャーを迷わず発射する。射出音とともに、何発ものミサイルが、尾に炎を灯しながら高速接近してきた。迎撃する手段は思いつかない。持っている銃で撃ち落そうものなら、撃ち漏らして爆死するのが僕の末路だ。壁を作っても、まとめて吹き飛ばされてしまうだろう。

 人間の一瞬の想像力は冷静さに比例し、焦燥に反比例する。

 僕はただ一目散に階段を上りきることに尽力するしか道はなかった。背中を焼かれる気配に発狂しそうになるのをこらえ、最後の一段に足をかける。

 直後、すぐ傍で階段に着弾するミサイル。

 僕は風景と音を失った。

 爆風に飲み込まれ、爆炎に背を焼かれ、爆音に耳をつんざかれた。自分がどうなっているのか、僕自身にも理解できない。やっと耳に音が入るまでに回復した頃には、肺に侵入してきた煙に咳を連発していた。乗り換えの切符売り場には、階段の破片が一面に広がり、着弾箇所からは黒煙がもうもうと立ち上っている。切符販売機の半分が原形をとどめていない。背面の首の下から腰にかけて、シャツが焼け焦げて黒ずんでいた。ひりひりと痛んでいるのは火傷だろうか。僕は全身に押し寄せる打ち身や、火傷、打撲などの苦痛の波をまとめてイメージで押さえ込んだ。

 自動改札に背を預けて、崩壊した切符売り場を見やる。

「あきらめることも必要だと思うがな」

 煙の中から総が悠然と歩いてくる。

「お前がいなくても、世界はあり続ける。お前の存在だけが、丁寧に、矛盾なく、人々の記憶から抹消されるだけだ。何の心配も要らない」

 自動改札機を頼りに立ち上がる。

「俺が補完しなければ、世界は終わることになる。俺たち人間のつけは、俺たち人間が払わなければならない。そのための補完だ」

「…完全なる人間の手で、世界を救済させる…そう言いたいのか」

「それは、世界の事情であり、俺の建前だ。俺の本音は別のところにある」

 ガンベルトが総に巻きついていく。足、腰、脇とまるで蛇のように。

「守らなければならないものがある。それが俺の本音だ」

 この上、両手に何かを出現させようとしているのか、僕にその何かを向ける。足を踏ん張って地面に固定し、現れる何かに備える。

「父と母、かけがえのない家族を俺は守らなければならない。キッチュ、お前を倒すことで、俺が家族を幸福にするだけの力を得られる。補完には、それすらも可能にする力と価値がある。家族を、母を襲う闇を、俺が払拭する」

 複数の銃口を筒状に備えた鈍色の兵器、ガトリング・ガン。

 総は肩から提げる格好で、その異様な巨躯を誇示する。

「家族…母…?」

 僕のイメージが著しく乱れていく。

「何を驚くことがある。当然だろう? 世界が二つあれば、二人の同じ人間がいる。そして、家族も二つある。守るべきもの、大切なもの…それらも互いに持っている。そして、相手のそれを奪ってでも、手に入れたい力がある」

 筒状の銃口が高速に空回る。

 僕は我に返り、自動改札を飛び越えた。

 通行禁止のガードが降りていたが、夢の中では無関係だ。ガードを飛び越える僕を、総は乱れ撃った。構内のガラスというガラスが割れ、粉々になっていく。すさまじい銃弾の雨に、僕は不規則な動きで回避するのが精一杯だった。銃弾の速度において、直前にそれを回避するのは不可能だ。いくら自覚夢であったとしても、自分の空間認識能力を超過したスピードには対応できない。

 できることといえば、あらかじめ銃弾に対して予防することぐらいだ。

 僕はでたらめな方向に高速移動しつつ、逃げ場がなくなると、物陰を作り出し、紙一重で鉛の豪雨から身を守っていた。

 僕の軌跡は無残なものだ。

 清掃が行き届いた鏡のような床が、あっという間に蹂躙されていく。無料パンフレットがちりぢりに舞い、文字も読めない。土産物は中身が露呈し、あちこちに転がった。総は見た目にも重量感のあるガトリング・ガンを楽々と持ち歩き、乱射しながら追跡し続けていたが、突然、ずしりと足元に置いた。一方、僕は駅内の一角にあるコンビニエンスストアのカウンターに逃げ込んで様子をうかがっていた。

 もはや逃げ場は存在しなかった。

 総の立っている場所を通過せずには、移動できない。まさに袋小路。総は、僕を巧みに袋小路に追い込むために、ガトリング・ガンをある程度撃ち分けた。僕が壁に穴を開けるようにイメージすれば、それを逆のイメージで塞いで、逃げ場を限定させた。

 つまり僕は、追い詰められるべくして追い詰められたのだ。

 転がったミネラルウォーターのペットボトルからは、水がどくどくとこぼれだしている。僕が打ち抜かれれば、このペットボトルの水のように体から血液が流れ出るだろう。

「お前の助かりたいという欲求はどこから来る?」

「…何?」

 瓦礫が崩れ落ちる音で、僕は良く聞き取れなかった。

「何を守るんだ? どうしてそうまでして生きようとする?」

 床に放棄したガトリング・ガンに腰掛けて不思議がる。腰のガンベルトから銀色のリボルバーを取り出して、シリンダーをくるくると回す。

「生きることに、理由は必要ない」

「必要だな。それが、この夢の中での力になる。動機があるから夢は生まれる。なければ夢は生まれない。朝、昼、夜の無為な三拍子が続くだけだ」

 シリンダーをリボルバーへ戻し、ガンベルトにしまう。

「…母を守ると言ったな」

 僕は問う。

「……」

 深い感情を内包した沈黙に感じられた。少なくとも僕には。

「生きているのか?」

 再び問う。

「…かろうじてな」

 胸を突き刺される言葉だった。

「だが、長くは持ちそうにない。早急な対応を迫られている。父はそんな母に、仕事も忘れて付ききりだ」

 二つの世界、二つの家族。それぞれに人生があり、苦楽もある。まったく同じではないけれども、確かに存在する本物の感情の流れ。誰かを必要とし、守りたいと願う心。思いや、存在の大きさを天秤にかけることは無駄であり、無意味であり、決して量ることのできないものである。それでも僕は、両天秤に乗せてしまうのだった。

 篠崎総と篠崎総を。僕と、もう一人の自分を。

「僕の母は…もうこの世にはいない。父が家族を顧みなかったせいで」

 こうも違うのだろうか。二つの世界の同じ家族であるのに。同じ不完全な人間であるのに。

「違うものなんだな。同じ人間だというのに。皮肉なもんだ。まぁ、それを分けているのが、キッチュである劣性さなんだろう。しかし――」

 座っていたガトリング・ガンから立ち上がり、コートのポケットに手を入れた。ガンベルトは、立ち上がるといつの間にか消えていた。銃も同様に。

「これではっきりしたな」

 僕はカウンターから静かに抜け出して、いつでも飛び出せる体勢をとる。二丁の銃をイメージし、現れた銃のグリップを強く握り締めた。

「お前の死が、世の中のためになる、ということが」

 とても鋭利な刃で、胸を、心を一刺しされたようだった。

「守るものもない。責任もない。失うものもない。そんなお前に補完する意味なんかあるか? ばらばらになった家族の絆を、補完の力で修正することは不可能だ。補完の力が絶大だといっても、物理的なものだけだ。精神的なものはどうしようもない。母のいないお前には、悲しんでくれる者もいないんじゃないのか?」

「…いるさ」

 いるだろうか。いないかもしれない。

 僕に愛を注いでくれた母はいない。僕を愛してくれる人はいない。

 雅は。

 雅は、ただ補完させたいがために言葉巧みに教唆しているだけかもしれない。

 父は。

 父は、母を失った後ろめたさで僕に優しくしようとしているだけだ。

 和泉は。

 和泉は、文学部の即戦力として僕の筆力を利用したいだけだ。

 巧は。

 巧も、僕の存在など大勢いる友人の中の一人に過ぎない。

 西口清吾にしてみれば、僕なんていないほうがいいのかもしれない。

「時間が来た。夢の終わりは早いな。だが、キッチュ、お前も本当は理解しているはずだ。理解するのが怖くて、理解していないふりをしていただけなんだ」

「…」

「よく考えるんだな。残された時間は極めて少ない。お前と違い、俺はな。今、こうしている間にも、母は苦しんでいるんだ」

「…」

「明日、昼十二時の一時間前後に眠りにつけ。それが最後だ。この奇妙な関係も」

「…それで終わるのか」

「終わる。お前は俺の母を救うことが出来るんだ。篠崎総の母を」

 それが、夢の顛末だった。


興味を持ってくださった方、読んでくださった方、ありがとうございます。これからも頑張りますので、よろしくお願いします。評価、感想、栄養になります。

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