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童話部のものがたり  作者: つー
第一章 始まりの日
4/4

初見、乙。

やっと童話部メンバー登場です。

 ぽかんとしながら、私は彼を見ていた。赤いツンツン髪に両耳には金ピアス、首にはクロス型のネックレス。この学校、ブレザー着用が義務なのに、この人シャツだけでしかも赤いTシャツを着ている。

 「お、おい?本当に大丈夫か?目の焦点が合ってねーよ?」

 少し困ったようにその人は言う。完全に不良の人だ・・・。服装がそれ系だ・・・。ということは私、この後何かされる?見返りくれってなんかされる?

 「・・・一応、まだ不安だったらここに来いよ?」

 「・・・なさい・・・」

 「は?」

 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい謝りますからどうか乱暴はしないで下さいいいいい!!!」

 一息でそう言うと、私は彼が差し出した紙を握り締めて、体育館まで全速力で走った。

 「・・・な、なんだよあいつ・・・。」

 廊下には、あっけにとられた彼の声が響いていた。


  ::::::::


 はぁ・・・。馬鹿やっちゃったな私・・・。

 結局遅刻して、先生に職員室に呼び出されて、軽いお説教をくらった。うぅ、高校入学して早々にお説教くらうだなんて・・・。というか、私絶対あの人に失礼なことしたよね・・・。見た目で怖がって、お礼言ってないし、謝らなくちゃ・・・。それに、あの女の子のこと、知ってるかもしれないし。

 そう思って手元の紙を見る。無我夢中だったから、よく見れなかったけど、これは部活動紹介のチラシみたい。どれどれ・・・。


 『来たれ!童話部新入部員! この部は先輩後輩の差がなく、和気藹々(わきあいあい)とした部です!童話に触れてみたい・・・。童話を体験したい!という童話フリークの方々!!ぜひ童話部にお越しください!活動日は月~水です。

 部室は部室棟一階の廊下の突き当たりにあります。』

 

 ・・・へぇ・・・。童話を研究したりする部なのかな?あの人がこんな文化部っぽい部に入ってるのがまず驚きだけど、ちょっと興味あるな。ついでに見学させてもらうのもありかも・・・。

 体育館から部室棟へは渡り廊下で直結してるから、すぐに行ける。少し、怖いけど、失礼なことしたんだからきちんと謝らなくちゃね。



 長い廊下をずっとてくてくと歩いている。部室棟広ッ・・・。突き当たりまで行くのに相当時間かかるじゃない。ただでさえ体力無いのに、歩くだけで息切れしちゃうよ。

 少し文句を心の中でつぶやきながら、やっとこさ突き当りの教室についた。ドアにかかっているプレートを確認する。・・・童話部って書いてある。ここだ!

 「おっ、お邪魔します!」

 怖い気持ちを大きい声でごまかしながら、勢いよくドアを開けて中に入った。

 「た、たたた大変失礼致しましたたたわわ私先ほどどど・・・あれ?」

 中には誰もいなかった。おかしいな、鍵は開いてるのに。どこか別の場所にいってるのかもしれない。仕方ないけど、ここで待ってようかな。部外者だけど、ちゃんと言えば聞いてくれる・・・はずだよね。多分。

 文化部の部室にしては少し広めの教室。ステンドグラスは桃太郎のモチーフで、少し外の木が見える。綺麗に掃除されてるようで、床がピカピカと輝いていた。部員に几帳面な人が多いのかな?よく見ると中央に大きなベージュのソファーが二つと長テーブルがおいてある。応接セットらしい。そしてテーブルの上には、大きな本が乗っていた。随分と分厚い・・・。色はワインレッドで表紙に『童話全集』と書かれている。

 そうか、この本を見ながら童話の研究をしているのかもしれない。全集っていうくらいだから、いっぱい物語が書かれているのかな。

 そう思うと、中を見てみたい衝動に駆られた。ちょっとくらい良いかな。最初のページを丁寧に開いてみる。最初の物語は、桃太郎。

 「えっ!?なにこれ・・・」

 読もうとした瞬間、本全体が淡いピンク色に光り始めた。最初は強く、段々弱くなっていって・・・。

 元に戻った。

 一体、なんなんだろう。でも、なぜだか分からないけど、あの光には覚えがあるような気がする。

 「君、何をしている?」

 「は、はいっ!?」

 急いで後ろを振り向くと、二人男の人がいた。一人はノンフレームの眼鏡をかけて、いかにも冷静そうな美形で、もう一人は少し長めの黒髪に、美形ではないけどおとなしそうな顔をした男の人。

 空気が固まった。これは完全に警戒されてる・・・。

 「勝手に部室に入って、君は誰だ?鍵をかけておいたはずだが・・・、どうやって入ってきたんだ?」

 「えっ・・・!わ、私は・・・っ・・・。」

 「マサ、女の子をいじめちゃダメだよ?」

 黒髪の子が庇うように私の横に立った。

 「そちら、一年生だよね?ほらマサ、リボンの色が赤いから、この子新入生だよ。部活動見学かな?」

 「あ、あのっ、私はちょっと・・・」

 「鍵をかけておいたのに、入れるわけがないだろう。少し考えろ夢羽。君、何か物を盗む目的で入ってきたんじゃないか?」

 「そ、そんなこと・・・。」

 どうしよう、なぜか泥棒扱いされてる!この部室に盗むものなんてないし、一般生徒を泥棒扱いするなんてこの人おかしいよ!

 「ワンちゃん、ケンちゃん、ちょっと待って!」

 ドアを勢い良く開けて、男の人が飛び込んできた。

 「あっ、先ほどの・・・。」

 「また会ったね。」

 その人は、さっきの不良の人だった。

 「なんだ?勇、知り合いか?」

 「うん、前にアリスに襲われてるのを助けたんだ。あ、あと、これ」

 勇・・・さんが眼鏡の子に差し出したのは鍵だった。

 「ごめん、鍵かけ忘れちゃったんだ、許して?」

 おどけたように舌を出す勇さん。

 「ゆ、勇・・・。日頃から警戒心を持てと言っているのに・・・!」

 「まあまあ、ワンちゃん、一年生の前なんだからそんな顔しない!せっかくの美形が台無しだよ~?」

 「俺をワンちゃんと呼ぶな!」

 「それはそうとマサ、あの子に言うべきことがあるんじゃない?」

 黒髪の子が私を指した。眼鏡の子はしばらく勇さんを睨んでいたけど、ゆっくり口を開いた。

 「疑ってしまい・・・悪かった。」

 「いやっ、えっと・・・、私も勝手に入ってしまってすみませんでした・・・。」

 良かった。話が分かれば優しい人みたい。

 「ごめんね~、うちの人間湯沸かし器が失礼なことして」

 「む、夢羽!誰が人間湯沸かし器だ!」

 「入部希望者なら大歓迎だから、ゆっくり見てってね~」

 「無視か貴様っ!」

 あはは・・・、なんだか仲良しそう。

 「あの、部活見学もそうなんですけど・・・、勇さんに用事がありまして・・・。」

 「ん?なぁに?俺に用事?」

 勇さんが腰をかがめて顔を近づけてきた。は、恥ずかしい!さっきはパニックでよく見れなかったけど、この人すごい顔綺麗!なんか、女の人みたい・・・。じゃなくて!

 「さ、先ほどは助けていただいてありがとうございました!」

 「えっ?それ言うためだけにここまで来たの?」

 「・・・大変失礼なことしてしまったので・・・」

 勇さんは一瞬あっけにとられた顔をしていたけれど・・・。

 「・・・ぷっ・・・」

 次の瞬間には吹き出していた。

 「あはははっ!お前律儀だねー!いいよそんなこと、気にしてないよ」

 思いっきり笑いながら、頭をぐしゃぐしゃと撫でられる。な、なんでそんなに笑うの・・・。

 「見た目、ギャルっぽかったから、喧嘩売られたらどうしようかと思ったんだよねー!すごいギャップ!お前面白いな!」

 「お、面白い・・・?」

 私の、このギャップが?

 勇さんは笑い続けていたけれど、さすがに笑いつかれたみたい。ふうと一息つくと、メガネの子を指し示した。

 「紹介するっ!あれは我らが童話部の部長の・・・」

 「お前だと変な紹介されそうで嫌だ。こほん、部長で二年A組の乾 正信(いぬい まさのぶ)だ。よろしく頼む」

 「ちなみに校内イケメンランキング一位」

 「なにゆえそのような余計なことを言うんだ夢羽!」

 へぇ・・・。すごいな。確かにノンフレームの眼鏡がよく似合うし、真面目そうでカッコいいから一位も納得かもしれない。

 「僕は岸谷 夢羽(きしたに むう)。二年A組だよ。他二人共々よろしくね」

 岸谷さんは穏やかに微笑んだ。ふんわりと効果音が付きそうな笑顔、癒されるなあ・・・。

 「夢羽の笑顔にはだまされるな。あいつはものすごい毒舌家で、本気を出すと相手を精神科送りに出来るくらいなんだぞ」

 「えっ」

 癒しの笑顔が!!

 「ああもう~、マサだって余計なこと言ってるじゃない。」

 「この子の今後のために忠告しただけだ」

 あの、まだ入部するとは決まってないんですけど・・・。

 「で、俺は猿島 勇(さるじま ゆう)ね!二年B組!」

 視界の右から猿島さんがひょっこり現れた。最初は怖かったけど、話してみると案外普通の人みたい。

 「一年B組、桃園 花(ももぞの はな)です。童話部、興味があります。あと・・・、猿島さん」

 「ん?どうした?」

 「教えていただきたいんです。あの女の子はなんなんですか?」





 

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