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童話部のものがたり  作者: つー
第一章 始まりの日
2/4

憂鬱、春。

時は現代に移ります。見た目とのギャップって、案外辛いものですよね。

 「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます!」

 明るめの茶髪を揺らして、女の先生が微笑んだ。黒板には大きく、おめでとう!!の文字が書いてある。きっと先輩達が書いたのだろう。

 「私は一年間みんなの担任を勤めさせていただく、工藤 美雪です!年は永遠の十五歳だよっ?」

 ・・・ギャグだろうね。うん。だって先生どう見ても・・・。

 「せんせー、どう見てもアラサーにしか見えませ・・・ごふっ」

 「あら?入学早々失言するなんて元気ね~」

 先生のチョークが金髪の男の子の額にクリーンヒットした。言わなくてよかった。

 「では、早速自己紹介をしてもらおうかしら?まずは出席番号一番の葵 優香さん」

 「はいっ!葵 優香です。趣味は・・・」

 あぁ~・・・。もう・・・。始まっちゃった・・・。自己紹介ってどうしてあるんだろう。第一印象でその人の性格とか、能力が決まるわけじゃないのに。

 「案山子 陽でーすっ!」

 うわ、えらい騒がしい人が出てきたな。あ、さっきチョークぶつけられてた金髪の人だ。赤いカチューシャなんて付けてたんだ。

 「ボクは風紀委員会に入ろうとしてるんだよねぇ~!ま、とりあえずみんな、よっろしくねぇ~☆」

 この人とは関わらないようにしよう。言葉一つ取ってもイライラする。それにしても風紀委員に入りたいだなんて、一年生から目標がはっきりしてるなぁ。あれくらい軽いノリなら、いろいろ悩まずに済むんだろうな。うらやましい。

 「・・・宍戸 勇気です・・・。えっと、僕も陽くんと一緒で風紀委員会に入るつもりです。よろしく・・・。」

 あ、なんだか打って変わっておどおどした感じの子だ。風紀委員会で陽くんとちゃんとやっていけるのかが少し心配だけど。

 「よろしくねーん、しっしー!」

 「し、しっしー!?そのあだ名はちょっと・・・。」

 早速陽くんが勇気くんに声をかけていた。なんかもう既に打ち解けてるのかな。勇気くんの表情が柔らかい。あぁやってすぐに友達を作れたら楽なのに・・・。

 「・・・なので、よろしくお願いします!」

 もう次だ・・・。どうしよう。嫌だよ・・・。

 「次の人ー?えっと・・・、桃園さん?」

 「・・・はい・・・。」

 仕方なく、よろよろと立ち上がる。うぅ、クラス中の視線が冷たいよ・・・。

 「桃園・・・。花・・・で、す。」

 ぼそぼそと自分の名前だけを言って席に着いた。教室がざわめく。

 「あら、桃園さん明るそうなのに、具合悪いの?大丈夫?」

 言われた瞬間、ぐっと唇を噛む。ポニーテールにした茶髪が少し色を薄くした気がした。

 私は、明るくなんか無い。教室の隅で本を読んでるほうが好きなんだ。茶髪は元からだし、ポニーテールはお父さんに似合うって言われたから結わえてるだけなのに。スポーツは苦手だし、顔が派手なのはお母さん譲りなだけ。

 「なんか印象と違うね~」

 「見た目派手なのに、雰囲気暗いね」

 言われ続けた言葉が聞こえてくる。もう、放っておいてよ・・・!

 「はいはい、静かに!次の人!」

 がたっと音がして、後ろの席に人が立ち上がる。残りの淡々とした自己紹介を聞きながら、私はため息をついた。家から学校までの道、体育館から教室までの廊下で何回もついたため息。

 やっぱり私はみんなに避けられるしかないのかな・・・。

 髪留めに触って、形が崩れていないか確かめる。

 お父さん、私、この学校でやっていけるのかな・・・。


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