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スリープ  作者: ぐぃた
3/6

2話 入手



学校を出て、電車に乗り10分もしない場所はもう都会だ。ここら辺じゃみんな遊ぶって言うとたいていココに行くことになる。

ここにはなんでも揃っているのだ。

デパートに始まって、古着屋、服屋、ゲーセン、カラオケ、ボウリング、アクセサリー専門店、その他モロモロ。


しかし、そんな単純な考えはみんなしているようだった。

どこへ行っても目当てのゲームが無い。どこもかしこも「入荷待ち」。

俺もそうだが、俺以上に菊池は体力が無い。あっちへ行ったりこっちへ行ったり。

もう菊池はハァハァと息を切らしていた。

多分もうコレは執念だ。菊池のゲームに対する執念。恐ろしいものを感じた。


5件あたりまわって、もう二人の間に会話は無かった。


そして、最後の店を回ってもそのゲームは無かった。

どこも老舗だ。みんな買いに来ていたのだろう。


二人は渋々帰り道についた。もう時間も7時を越えていたからだ。

帰り道でやっと二人の間に会話が戻ってきた。

「…無かったな。」

悔しそうに菊池は言った。

「そうだなぁ…。次は1週間後の入荷待ちか…。」

すでにクラスでは手に入れている奴も多く、

どんどん遅れを取るのは二人にとってあまり良い事とは言えず、

また攻略本が出る前にある程度はゲームを進めたかったからだ。


同じ駅で降りるのだが、菊池と俺は家の方向が逆だった。

「じゃあな」

「また明日~」

駅で別れを告げ帰路に着く。

しばらく歩くと、ふと見知らぬ看板が目に留まった。

毎日この道をとおり帰っているのだが、この看板は昨日までは無かったはずだ。


目を凝らしてみると、そこには「@ゲーム」と書かれた看板があった。

新店舗だろうか?聞いたことの無いゲーム専門店だった。

俺は中にも入らず急いで菊池に電話した。

「なに?」

「おい!駅の近くに新店舗のゲーム屋があるぞ!」

菊池の言葉なんて俺には聞こえてなかった。

「え、駅のちかくにゲーム屋なんてあったか?」

そうだ。昨日までは無かった。しかし今日はある!

「多分今日から営業してるところだって!もしかしたらアレあるかもしれないぞ!」

「まじか!?くそう、今玄関に入りかけたがそんな話聞いたらそっちに飛んでいくしかねぇな!」

っとそう言って、菊池は電話を切った。


菊池の家からここまで大体10分はかかるだろう。

それまで店内に入って、目的のゲームがあるか確認してみようと思い店に一歩目を歩みだした瞬間…。呼ばれた気がした。

「冬希ィィィィィィィィィ!!!」

間違いない。菊池の声だ。あの巨体が遠くの方からみるみるちかくなってきた。

ボルトもびっくりの俊足だ。

俺をとおりこし、店内に俺より早く転がり込む。

「おいおいあれから1分もたってないぞ」

なんという俊足…。

そして中から「アッタァァァァァァァ!!!」と大声が聞こえた。

俺も急いで店内に入ると、いたってシンプルで、その上予想以上に白かった。棚も、壁も、天井も、ライトも、レジもすべてが白かった。

ポスターなどの類は一切無く、棚にゲームだけが所狭しと並んでいる。その中で一番目立つ様にお目当てのゲームはあった。

菊池は満面の笑みで袋を振り回している。

レジに居たのはまたまた白い髭をふんだんに生やした、おじいさん。

そのおじさんが菊池が喜んでいる姿を見て、ニコニコしている。

俺もさっそく買おうと、菊池の後に続いた。

「おじさん、俺もさっきの奴と同じ奴欲しいんだけど、ある?」

おじいさんの反応は予想と違った。

「あぁ、すまんのぉ…。さっきの子に売ってしまったので最後なんじゃ…。」

俺はすごい絶望感を感じた。しかし早い者勝ち。菊池は少し後ろめたそうに俺を見たが

それほど俺も気にしては居ない。

その代わり、そのゲームを買った時はたっぷりと手伝ってもらうが…。

「あ、じゃあいいです。次の入荷日っていつかわかりますか?」

「そうじゃのう…。3日後というところか。」

おぉ。他よりも早い。ソレを聞いて少し安心した。


ふと、レジの横にあるソフトに目が行った。そのソフトのラベルには

「今話題!寝るときに音を聞くだけで良くなるプログラム!」

その目線に気づいたのか、おじさんが

「ムゥ…。少し気の毒じゃのう…。代わりと言っちゃぁなんじゃがそのCDをあげよう。」

またまた予想外の言葉だった。確かにこのCDには前々から興味はあった。

しかし、まだまだ企業秘密で得体の知れない物には変わりは無い。

だがこのチャンスを逃すと買う機会も無いだろう。

なにせ20万がタダで手に入るのだ。これほどおいしい話は無いが…。

「え…いや。悪いですよ。」

このおじいさんも高い金をだして入荷したこのプログラムCD…。

在庫もそれほど無いのにこんなたかがゲームを買いそびれた高校生にそんな高価な物をくれるなんて

いくらなんでも損だろう…。

「いやいや、そのCDも全然売れん品なんじゃ…。もらっていってくれた方がワシも気が楽になる。」

まぁ、そこまで言うなら貰ったほうがいいんだろうか…。

「ん~…。じゃあ貰っていこうかな…。」

その言葉を聞いたとたんおじいさんは待ってましたと言わんばかりの微笑みで「そうかそうか」と嬉しそうに呟きながら

そのプログラムCDを「@」と大きく書かれた袋に入れて俺に渡してきた。

まさかこのCDが手に入るとは思わなかったが、今夜あたり試してみよう。

菊池が物珍しそうにこちらを見ていた。

「それ効果あったら俺にも貸してくれよ!」

「あぁ別にいいよ。」

どうせ効くかどうかも分からない代物だ。

無くなるわけではないし、しかも元値はタダだ。

そのまま菊池に押し付けるのも面白そうだった。




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