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スメールと璃月辺境の救出戦

璃月辺境・沈玉谷南麓


激しい水の轟音が耳をつんざく。巨大な滝がまるで天から垂れた銀の布のように深い淵に叩きつけられ、一面に水煙を巻き上げていた。陽射しが水蒸気の中で小さな虹を作り出していたが、その美しさを眺める者は誰もいなかった。


四人の影が密林からよろよろと飛び出してくる。誰もが傷と疲労を背負っていた。先頭に立つ八重神子は、いつもの優雅で華やかな桜色の着物が泥まみれになり、破れている。狐の耳が少し垂れ、隠しきれない疲れを露わにしていた。往生堂の堂主・胡桃は、トレードマークの梅花帽子が傾き、いつもはきらきらとした梅花の瞳が今は前方の滝を固く見据え、護摩の杖を握る手が力みすぎて指節が白くなっていた。


夜蘭の状態はまだましだった。情報官としての機敏さが多くの致命傷を避けさせたが、タイトスーツの裂け目と滲み出る血痕が、いかに激しい戦いを経たかを物語っていた。そして何より心痛むのは雲菫だ。璃月一の名手である彼女は、右腕の袖がからっぽに垂れ、顔は紙のように蒼白。胡桃と夜蘭に左右から支えられて、やっとのことで立っていられた。いつもは優美な節回しを紡ぐ唇が、今は激痛と失血のため固く結ばれていた。


「この滝を抜ければ、向こうはスメールの領域だ!」

夜蘭は息を切らしながら、滝の音にかき消されるように叫んだ。

「そこまで行けば、呂布の追手も手出ししにくいはず!」


「早く!追ってくる!」

胡桃は振り返り、森の中から甲冑の衝突音と兵士のどなり声が微かに聞こえてくるのを感じた。


八重神子は気を振り絞り、いつものような狡さの効いた笑顔を浮かべようとするが、どこか弱々しい。

「おやおや、ずいぶんみっともない姿ね。安全な場所に着いたら、ゆっくり温泉にでも浸かって、神櫻の木の下に隠しておいたお茶でも飲みましょう……」


しかし、彼女たちが水の幕に触れようとした瞬間、事変が起きた!


滝の両脇の岩陰、森の中から、無数の兵士が一斉に湧き出した。冷たい鎧が水光を反射し、手に持つ武器は定形の槍ではなく、奇妙な形をした長い鎖付きの鎌——死神の髭のように冷たく光っていた。


先頭に立つ武将、大馬に乗るその者は、呂布配下の猛将・胡軫だった。

猫が鼠を弄ぶような悪戯な笑みを浮かべ、言い放った。

「陛下の命を受け、ここでお待ちしておりました!妖狐、往生堂の小娘、璃月のスパイ……それに歌い手の女。降参せよ!」


「しまった!待ち伏せだ!」

夜蘭は心が沈み、即座に雲菫を背後に隠した。


胡桃は護摩の杖を前に構え、凛とした面差しになった。

「捕まえる?わたくしの杖が許すか聞いてみろ!」


八重神子の瞳は完全に冷めた。雷の元素力が指先に静かに集まるが、体がふらつき、とうに限界に達しているのは明らかだった。


胡軫は大きく手を振った。

「捕えろ!生かすも殺すも構わぬ!」


兵士たちが殺到し、特殊な鎌が鎖ごと遠くまで投げられ、四人の手足に的確に絡みつく。疲弊しきった彼女たちに、避ける余力などほとんどなかった。


もともと衰弱していた雲菫はよろけ、左足が冷たい鎖付き鎌に一瞬で巻きつけられた。鋭い棘が肉に食い込み、痛みでうめき、崩れ落ちそうになる。胡桃は彼女を守ろうとして動きが遅れ、足首を鎖に巻かれ、地面に倒れた。夜蘭は二つの鎖を俊敏に躱したが、三つ目が毒蛇のように腰に巻きつき、強く引かれてバランスを崩した。八重神子は雷光を炸裂させ、数本の鎖を弾き飛ばすが、さらなる鎖が四方八方から襲い来る。遂に力尽き、手首と足首を同時に縛られ、雷光は褪せていった。


冷たい鎖が彼女たちを強く縛り上げ、鋭い鎌の縁が衣と肌を切り裂き、血が滲み出て泥水と汗に混ざる。屈辱的な姿で引きずり回されんばかりに無理矢理引っ張られた。胡軫は得意げに大笑いした。


「終わりだ!連れてこい!」


絶望がまるで淵の冷水のように、四人を一瞬で呑み込んだ。八重神子の瞳には不服が光り、胡桃は怒りに身をよじっても無駄。夜蘭はあらゆる可能性を計算しても活路が見つからず、雲菫は目を閉じ、諦めかけていた。


その千钧一発の瞬間——


太陽のように輝く金色の流光が、誰の反応も追いつかぬ速さで、空から舞い降りた!


「ドサアアアッ!」


激しい衝撃波が四人の周囲の兵士たちを一斉に弾き飛ばし!鎖はみるみる砕け散った!


煙と水煙が立ち込める中、金色の姿が傲然と立ち、手にする剣は心を震わすエネルギーを放っていた。

八重神子たちに背を向け、驚愕する胡軫の軍勢に向かい、冷たく威厳に満ちた声で言い放った。


「俺の仲間に手を出す?俺の許可を取ったか?」


「空/旅人?!」

四人はほぼ同時に叫び、信じられない喜びと生き残った震えに満ちた声だった。


胡軫は驚きと怒りに顔を歪めた。

「何者だ?陛下の軍を妨げるとは……」


言い終わる前に、空の姿は既に消えていた。


次の瞬間、金色の剣光が长空を裂く雷のように疾駆。場にいる者の誰も、何が起きたか把握できなかった。ただ光が軍勢の中を駆け抜け、通り過ぎる先々で刃は折れ、鎧は砕け、兵士は草を刈るように倒れていく。


胡軫は恐怖に駆られ刀を抜いて迎え撃とうとするが、その武術は怒りに燃える旅人の前では、子供の戯れのように無力だった。


「キャッチャリッ!」


鋭い金属の断裂音の後、刃が肉に食い込む鈍い音が響いた。


胡軫の動きは止まり、信じられないように胸を貫く金色の剣先を見下ろした。

空は亡者のように背後に現れ、瞳は氷のように冷たかった。


「お前……」


空が剣を一気に引き抜き、胡軫の巨体はどすんと地面に倒れ、瞳には驚愕と不服が残ったままだった。


主将が瞬殺されたことで、残る兵士たちは指揮を失い、肝を潰して叫び声を上げ、みっともなく四散逃亡。瞬く間に姿を消した。


滝辺は静まり返り、ただ水の轟音だけが残った。


空は振り返り、急いで四人の元に駆け寄る。冷たかった瞳が一瞬にして心配と慈しみに染まる。素早くしゃがみ、剣で慎重に残った鎖の欠片を切り離した。


「大丈夫か?遅くなって悪かった!」

声は焦りと後悔に溢れ、傷を一人ひとり確かめる。雲菫のからっぽの右腕と蒼白な顔を見た時、心が強く締めつけられ、痛ましさが瞳を過った。


「咳……間に合ってよかったね、小僧。」

八重神子は無理に笑い、いつものように彼をからかおうと手を上げようとするが、力及ばず、しぶしず下ろした。

「これじゃあ、わたくしのお茶を一生飲めなくなるところだったわよ。」


「空!やっと来たか!」

胡桃は飛び上がって肩を叩こうとするが、足首の傷で痛くて顔をしかめた。

「いててて……この野郎ども、往生堂の第二の墓半額セットを勧めてやるわ!」


夜蘭は痛みをこらえて自力で立とうとするがよろけ、空がすぐに腕を支えた。

深く息を吸い、冷静な口調を保つが、わずかに震える指が心の動揺を暴いていた。

「ありがとう。状況は?」


空の表情は再び険しくなり、重い声で言った。

「伝えに来た。スメール市……特に雨林一帯が呂布軍の奇襲と放火に遭い、大打撃を受けた。今は非常に混乱し、安全ではない。教令院と三十人団が抵抗を組織しているが、もはや避難先として適切ではない。」


その知らせはまるで冷たい水のように、彼女たちの希望を打ち消した。


「え?スメールまで……」胡桃は目を見開いた。


八重神子は眉をひそめた。

「呂布の野望と速さは、予想をはるかに超えているようね。」


雲菫は弱々しく口を開き、声は滝の音にかき消されそうだった。

「じゃあ……私たちはどこへ?」


空の視線は滝の下流へと向けられ、そこには曲がりくねった川が流れていた。

「水路で行く。フォンテーヌへ。そちらは比較的安定しているし、距離も十分に離れている。」


しかし最大の問題は、連戦と先ほどの鎖の引きずりで、四人の体がすでに限界に達していたこと。特に雲菫は失血が多く、意識を保つのもやっとで、到底長旅には耐えられなかった。


空は少しも迷わなかった。

「失礼します。」


まず、一番酷い状態の雲菫に近づいた。

雲菫は蒼白い頬にかすかな紅潮を浮かべ、少し顔をそむけ、小さく言った。

「お手数をおかけします、旅人さん……」


空の動作は非常に穏やか、まるで壊れやすい宝物を扱うように。

慎重に右腕の傷を避け、左手を膝の下に、右手を背中にしっかりと回し、正規のお姫様抱っこで彼女を抱き上げた。雲菫の体は軽く、ほのかな化粧の香りと血のにおいがした。空の温かく頼もしい抱擁を感じ、緊張がほぐれ、頭をそっと肩に預け、目を閉じた。空は彼女の細かな震えを感じ、いっそう憐れみ、抱く腕をさらに安定させ、できるだけ揺れを抑えた。


川辺に用意されていた軽便な小舟(空が前もって用意したのか、夜蘭の準備した退路なのか)に雲菫を慎重に乗せ、一番楽な隅に座らせ、マントを丁寧にかけた。


次は胡桃。

いつもの気まぐれな堂主は、今は少し照れ臭そうに、強がった。

「おいおい、わたくしならまだ自力で……」

言いかけて、空が同じように優しく抱き上げた。

「きゃっ!」

胡桃は思わず首に腕を回し、梅花の瞳がぱちりと開き、頬を紅潮させ、珍しく大人しくなった。空は彼女を雲菫の隣にそっと置いた。


そして夜蘭。

情報官として最も冷静に見せるが、僅かに高まる鼓動が心の動揺を隠せない。

素直に肩に腕を回し、小さく言った。

「お手数をおかけします。」

空は力強く、かつ傷に触れないよう慎重に抱き上げた。

降ろす際、夜蘭は素早く囁いた。

「フォンテーヌ廷にはわたくしの連絡先がある。」


最後は八重神子。

空が近づくのを見て、神子は口元に悪戯な笑みを浮かべ、狐の耳がぴくりと動いた。弱っているにもかかわらず、独特の色香のある口調だ。

「おやおや、最後はわたくし?小僧、なかなか可愛がり屋さんね。いちばん良いものを最後に残しておくなんて。」


空は困ったように笑い、彼女が無理をしていると分かっていた。

しゃがみ、同じように慎重に抱き上げた。八重神子は見た目よりずっと軽く、ほのかな桜と雷元素の清らかな香りがする。彼女は自然に反対側の肩に頭を預け、熱い息を耳元に吹きかけ、二人だけに聞こえる声で囁いた。

「今回は……本当にありがとう、わたくしの小さな英雄。」

からかいは消え、真摯な依存と優しさが滲んでいた。

空の心臓は一瞬止まり、耳元がほのかに熱くなった。彼女をしっかりと船に運び、雲菫のもう片側に、縁にもたれられるように座らせた。


四人が無事に座ったことを確認し、空は綱を解き、櫂を取って岸を強く漕いだ。

小舟は流れに乗り、危険に満ちた岸をゆっくりと離れ、下流へ——フォンテーヌへと進んでいった。


夕陽が空と水面を暖かいオレンジ色に染め上げ、先ほどまでの殺伐とした戦いと危険が、一時的に遠ざかったかのようだ。

小舟は穏やかな川面を滑り、水音がさらさらと響く。


船の上で、疲れ果てた四人の女たちは寄り添い、次第に睡魔に包まれていく。雲菫は既に眠りに落ち、胡桃の小さな頭がガクガクと傾き、ついに夜蘭の肩にもたれた。夜蘭は警戒を緩めずにいたが、瞳の色は次第に和らいでいった。八重神子は目を閉じ、長いまつげが影を落とし、口元にはかすかな安堵の笑みが浮かんでいた。


空は櫂を漕ぎながら、折に触れ心配そうに彼女たちを眺め、無事であることを確かめていた。

特に雲菫の腕の傷と蒼白い顔に視線を留め、守りたいという強い想いと、もっと早く来られなかった後悔が胸を占めた。


夕陽が彼の影を長く伸ばし、守るべき四人の女たちを覆う。

行く先は未知かもしれないが、少なくとも今は、共にいる。一時的に安全なのだ。


穏やかな流れが小舟を運び、傷付いた体と、密かに育まれつつある想いを乗せて——

フォンテーヌへ、そしてこれから訪れる、さらなる未知で、おそらく甘い物語へと進んでいく。

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