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沈玉谷奪還戦

璃月危!飛斧より玉の腕砕かれ、徐晃、沈玉谷を踏み砕く


璃月危うし!飛斧より玉の腕砕かれ、徐晃、沈玉谷を踏み砕く。


徐晃配下の七千の陥営は奇なる陣を布き、岩王帝君が封印せし古き魔神の残息を引き寄せた。八重神子は妖力の反動を受け、夜蘭の水鏡は砕け、往生堂の胡桃は火蝶を天に焚き尽くさんとすれども、殺気に敵わず。血戦の中、雲菫は民を護るため最期の歌を謳い、徐晃の飛斧に腕を斬られる。硝煙立ち込め、璃月港震動、凝光は涙を浮かべて群玉閣の核心を砕き叫ぶ。

「この仇、必ず隕星をもって報わん――」




沈玉谷の霧は、常に茶香と玉色を帯び、温かく心に沁みるものであった。

この日、その霧は鉛のごとく重く淀み、人の息を詰まらせんばかり。谷の外、黒き雲は低く垂れ込め、鉄灰色の奔流が沈黙のうちに立ち並び、兵器の冷たき光が湿った空気を切り裂く。それこそ、徐晃とその七千の陥営であった。


徐晃は馬を陣前に控え、鉄のごとき眼光を伝説の豊饶の地に注ぐ。その瞳には貪欲などなく、ただ冷徹なる軍令如山の無関心が宿るのみ。彼は手にする開山大斧をゆっくりと掲げ、声は高からずとも、静寂の谷を轟かせた。

「陣を布け。」


陥営の兵士らは命を受けて動き出す。その足どりは雷のごとく響き、散って突撃するのではなく、不思議な奥義の軌跡を描いて移動する。七人一団となり、気を通じ、兵器を地に打ちつけ、呪われし古の戦いの詞を詠う。人の世ならざる冷たき暴虐の気が、彼らの足下より立ち昇り、地に沁み込む。


大地は微かに震え始める。谷の奥、モラクスが絶大なる神力をもって封印せし古戦場の遺構、千年眠りし魔神の残骸が、恐るべき共振を起こす!漆黒の殺気が無理矢理引き出され、岩の裂け目より吼え出で、軍陣に巣喰い、七千の勇士をまるで九幽より這い出した鬼卒のごとく変えてしまう。


「それは……何だ?」

谷口を守る千岩軍の老兵は瞳を見開き、槍を握る手に冷汗が滲む。


不安の騒ぎが広がる間もなく、徐晃の大斧は振り下ろされた。

「進め!」


鉄灰色の奔流が動く。

滔天の殺気を纏い、滅びの波となって沈玉谷に激突する!千岩軍の防線は魔神の残力を纏った衝撃の前に薄紙のごとく脆く、瞬く間に引き裂かれる。怒号、絶叫、兵器砕ける音、骨肉引き裂かれる音。この桃源の地は、刹那にして煉獄と化した。


報せは最速で璃月港に届く。


真っ先に駆けつけたのは八重神子。

漆黒の殺気の中、桃色の影が鴻のごとく疾駆する。

「おやおや、これほど風流を知らぬとは、報いを受けることになりますよ~」

笑顔のまま指先より妖雷が奔り、狂暴なる電の蛇となって軍陣の核心を劈かんとする。

しかし山を砕き流れを断つ雷も、殺気の中に入れば牛が泥に入るがごとく消え失せ、陣を破るどころか、より深き怨念の反動を招く!

一声の唸りと共に神子の唇より血が溢れ、妖力乱れ、踉跄して後退する。


ほとんど同時、軍陣の側翼に無数の青き水珠が結ばれ、虚空より夜蘭が現れる。

手の賽を投げ飛ばし、幾重もの水鏡を生み出し、殺気を閉じ込め、屈折させんとする。

しかし水鏡は形作られるや否や、最穢れしる力に蝕まれ、耐え難き悲鳴を上げて砕け散る。

夜蘭は強大な反動を受け、吹き飛ばされ岩に激突し、気息削ぎ落とされる。


往生堂の堂主・胡桃は、灼熱の火蝶を乗り悠々と現れた。

「悪者!沈玉谷の安らぎを返しなさい!」

梅花の瞳に怒りが燃え、護摩の杖を振り回せば無数の赤き蝶が天を焼き、灼熱の気は一時的に殺気を退ける。

しかし陣は変じ、引き出された魔神の残息が吼えて襲いかかる。

冷たき死の力が火蝶に逆らって這い上がり、胡桃の顔は青ざめ、炎は明滅し、限界まで苦しんでいるのが明らかであった。


血戦は瞬く間に白熱する。

六万の璃月軍は幾度となく突撃し、血肉をもって滅びの奔流を阻む。

谷は血に染まり、屍骸は山のごとく積み上がる。

陥営は徐晃の指揮の下、自在に陣形を変え、殺気を刃とし、一歩踏み出すごとに多くの死が生まれる。


敗北は、もはや避けられない。


混戦の戦場の片隅、多くの逃げ惑う民は狼狽し、突入した陥営の小隊に道を塞がれ、絶望の叫びを上げる。


「早く逃げろ!南へ!」

清らかな叱咤が響く。


雲菫の姿が群衆の中より躍り出る。

神女劈観の姿は血に塗れながらも、依然として聳え立つ。

民と兵の刃の間に立ち、水袖を翻し、鋭き兵器なくとも巧みな力で数名の敵を撃退する。

彼女は深く息を吸い、喊殺震天の戦場の中で、清らかに歌い始めた!


その声は天を貫き、石を裂く。

曲は悲しく激しく、璃月の民が馴染みの強さと不屈に満ち、一時的に戦場の喧騒をも圧し、無形の壁となって後ろの震える民を護る。

戦いながら歌い、眼光は決然とし、一節一節に心を尽くし、唇より血が溢れ続けても、一字一句明瞭に歌い止まない。


「哼、芸者による国の乱れ。」


冷たい鼻歌が陣中より聞こえる。

大将・徐晃はこちらを一瞥し、表情変わらず、背後より小斧を抜き、見るでもなく、軽く投げ放った!


ゴウ――!


飛斧は回転し、空気を切り裂き、全てを打ち砕く凶々しき殺気を纏い、瞬く間に百歩の距離を越える!


雲菫の歌は絶えない。


一閃の血光が迸る!


血に染まり、無数の華を舞わせた腕が、肩から斬り落とされ、槍穂を握ったまま高く舞い上がる!


歌は突然に途絶える。


雲菫は踉跄し、激痛により麗しき顔は蒼白となり歪む。

しかし唇を強く噛み締め、一声の悲鳴も上げず、ただその瞳だけが徐晃の方を見据え、驚きと……不屈に満ちていた。

血は泉のごとく溢れ、碧き衣装を真紅に染め上げる。


「雲先生!!」

遠くより、起き上がれる胡桃が切なる叫びを上げる。


八重神子の瞳に桃色の光が迸り、妖気が制御不能に溢れ出す。

しかし体内の反動により再び血を吐く。

夜蘭は駆け寄らんともがくが、数名の陥営兵に固められる。


敗北は決定的であった。


八重神子は命がけで突撃しようとする胡桃を強く引き止め、妖雷で退路を切り開く。

夜蘭は痛みを堪え、最後の賽を投げ混乱を引き起こす。

「逃げろ!」

神子の声は、かつてない弱さと冷たさに満ちていた。


生き残った璃月軍は、傷付いた仙々と夜蘭を護り、限りなき屈辱と憤りを胸に、沈玉谷の外へと敗走する。


硝煙と濃厚な血のにおいが沈玉谷の上空に立ち込め、長らく消えない。

かつて仙気ただよう谷は、今や廃墟と屍骸の山、嘆きの声遍く。


報せが璃月港に届いた時、港中は震動し、万民は悲しみ泣いた。

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