帰国の戦い
硝煙、璃月港に充満す
(しょうえん、りーゆえこうにじゅうまんす)
硝煙が璃月港の上空に立ち込め、望舒宿屋の飛檐の下、張郃は袁紹軍の甲冑をまとい、遠く戦火に引き裂かれた夜の空を眺めていた。背後の兵士たちは仮補強した木柵で宿屋の門を塞ぎ、矢筈は月光の下で冷たく輝いていた。
三日前、彼らは混乱に乗じて絶壁に浮かぶこの要塞を占拠し、璃月腹地を見下ろす橋頭堡に変えていた。
「将軍、西側の山道に気配が!」
親衛の叫びが途切れるや、急激な马蹄音が雷のように響き渡った。張郃は猛然と振り返ると、山道の先に砂塵が舞い上がり、百騎余りの璃月鉄騎が朝霧を突き破って現れた。先頭の四人の姿は晨光の中で際立っていた。
雲菫の槍は破れた璃月軍旗を掲げ、行秋の双剣は鞍前で水の光をたたえ、辛炎の火銃の筒は赤い絹帯に巻かれ、重雲の片手剣は淡い霜気を纏っていた。
「都合のいい来訪だ」
張郃は冷笑し、手を上げて弓兵に用意を命じた。だが鉄騎は門に真っ向から襲いかからず、宿屋下の平台で陣形を組んだ。雲菫は馬綱を引き、槍を絶壁の上へ突きつけた。
「張郃の匹夫!望舒を窃み、民を虐殺した罪、今日こそ汝の最期だ!」
声が尽きるや否や、空から切り裂く音が響いた。一同が見上げると、群玉閣が雲端に浮かび、凝光が楼縁に立って指先で玉の机を軽く叩いていた。数十門の大砲が閣身からせり出し、砲口は陽光に金属光を煌めかせていた。
「璃月の土を、外敵に踏み躙らせるわけにはいかぬ」
彼女の声は風に乗って届き、疑いを容れぬ威厳に満ちていた。
「砲撃開始!」
轟音は耳をつんざかんばかりに大きく、砲弾は大空を切り裂き、流星群のように望舒宿屋へ叩きつけられた。木柵は砲火の中で瞬く間に砕け散り、瓦礫が飛び、悲鳴が絶えない。張郃は兵士に後退を指揮しようとした矢先、一発の砲弾が宿屋の主樓の屋根裏に的確に命中し、梁は轟音と共に崩れ落ちた。
彼はよける暇もなく砕石に埋もれ、最期に見たのは絶壁下の鉄騎が掲げる長刀の姿だった。
「将軍!」
袁紹軍の兵士たちは悲鳴を上げて廃墟に駆け寄り、陣形はたちまち乱れた。雲菫の瞳に決意の閃きが宿る。
「勝勢に乗じて追撃せよ!望舒を奪還せよ!」
鉄騎、突撃せんとするその時、事変が忽然と起こった。
沛然として抗いがたい気勢が北側の山道から押し寄せ、山全体が震えているかのようだった。赤い袍をまとう身影が砂塵を踏んで現れ、方天画戟を斜めに地に引きずり、深い轍を刻んでいく。呂布の赤兎馬がその後に従い、蹄は石板を砕き、彼は空の群玉閣を見上げ、瞳は氷を浸したように冷たかった。
「蟻の集いが、敢えて増長するな」
呂布の声は大きくないが、喧騒のすべてを掻き消した。彼は猛然と方天画戟を掲げ、戟の穂先には目も眩む赤光が灯り、真紅の光線が一瞬にして空気を引き裂き、群玉閣へまっすぐに撃ち込まれた!
凝光の瞳は急激に収縮、慌てて群玉閣を転向させようとしたが、光線はすでに閣の核心に命中していた。玉の柱は砕け、瑠璃瓦はごろごろと崩れ落ち、群玉閣は爆音の中で傾き、凝光の身影は火の中に消えた。
「凝光様!」
雲菫は声を上げて驚き、心乱れた隙に西側から重甲歩兵の一隊が襲いかかってきた。足並みは磐石のように整い、甲冑は陽光に黒光りを放つ、まさに高順の陣営だ。
「陣を組め!」
高順の喝声が響き、陣営の兵士たちは速やかに盾壁を形成し、長戟が盾の隙間から突き出し、林のような鋭利な刃先が璃月鉄騎の突撃の勢いを一瞬にして断ち切った。
鉄騎の衝撃は盾壁に衝突し、まるで山岳にぶつかったようだ。辛炎の火銃は轟音を発するものの、盾面に浅い白い痕を残すだけ。重雲の霜気は近づくや否や、盾の後ろの長戟に掻き消され、行秋の水流剣が背後へ迴り込もうとすると、側面から迴り込んだ陣営兵に纏われついた。雲菫は槍を挙げて斬りかかり、穂先で数人を跳ね飛ばすものの、三本の長戟が同時に肩甲骨を貫いた。
彼女は馬から墜ち、血が戯衣のような甲冑を染めた。陣営は歩を進めて迫り、鉄騎は半数以上が犠牲となり、行秋の双剣は打ち落とされ、辛炎の火銃は弾薬切れ、重雲の霜気は尽き果て、三人は囲まれ、仲間が次々と倒れるのを見ていた。
「降るか、降るまいか」
高順の声に情緒はない。行秋は地上の屍を見て歯を食いしばり、折れた剣を捨てた。辛炎は火銃を見下ろし、ついに指を緩めた。重雲は目を閉じ、剣を地上に置いた。
ただ雲菫だけは、もがきながらも立ち上がろうとした。槍で体を支え起こし、肩甲骨の傷から血が滲み出るにもかかわらず、背筋をぴんと伸ばした。幼い頃、璃月港で観た芝居、忠勇の烈士の最期を思い出した。
彼女は手を上げて乱れた衣紋を正し、左足を一歩前へ踏み出し、槍を地に突き、右手を腰に添え、『覇王別姫』の虞の最後の姿勢を取った。
身のこなしは聳え、瞳には決意が宿り、まるで今にも血を吐くような「漢兵、すでに地を略し、四面、楚歌の声」を歌い出さんとするかのように。
高順の長戟が突き刺さる刹那、雲菫の口元には微かな笑みが浮かんでいたように見えた。
呂布は絶壁の縁に立ち、下方の降参した三人を眺め、空の群玉閣の残骸をちらりと見た。方天画戟の赤光は次第に消えていった。赤兎馬が鼻を鳴らし、彼は馬にまたがり、一言だけ残した。
「戦場を整理し、ここを守れ」
風が望舒宿屋の廃墟を抜け、破れた旗を巻き上げ、血に染まった雲菫の身影も巻き上げた。遠くの璃月港は依然として燃えており、絶壁に浮かぶ宿屋は、新たな主人を迎えたのだった。




