須弥城智斗戦
幻想と未知が交差する世界
幻想と未知が渦巻く世界にあって、トワイラット大陸のスメール城は奇怪な暗雲に包まれていた。その暗雲は自然のものではなく、時空を超えて来た謎の軍師・陳宮がもたらしたものだ。
陳宮はもともと後漢末期、己の理想と主君のため各地を策謀していた。突然発生した時空の乱流に巻き込まれ、元素と魔法に満ちたこの異世界へと流れ着いたのである。世界の勢力構造と力の体系を知った彼の胸中には、野心が一瞬にして燃え上がった。彼は豊かで神秘的なスメール城に目をつけた。叡智と魔法に満ちたこの都市を支配できれば、異世界における自らの盤石な礎となるに違いない。
そしてスメール城を守るのは、叡智と優しさを併せ持つ草の神・ナヒーダである。姿は幼い子供のように小さいが、緑色の瞳に宿る叡智の光は、あらゆる万物の奥義を見通すかのようだ。誕生以来、ナヒーダはたゆまず学び成長し、スメールの一寸の土地、一人の民を守り抜いてきた。
陳宮が異世界の兵と神秘的な生物からなる軍を率いてスメール城に迫った時、城内全体が緊迫した空気に包まれた。民は不安に駆られ、兵士たちは厳重に臨戦態勢を敷いた。ナヒーダは城壁の上に立ち、城外に押し寄せる黒々とした敵軍を眺め、恐れる気配は微塵もなく、故郷を守る固い決意だけを胸に宿していた。
陳宮は幽かな光を放つ戦馬にまたがり、ゆっくりと陣前に進み出て高らかに叫んだ。
「ナヒーダ、汝をスメールの神として敬う。その叡智が並外れていることも知っている。今日は無益な殺生を望まない。智くらべをしよう。汝が勝てば、直ちに軍を引き返し、二度と侵さない。もし俺が勝てば、スメール城を渡せ」
ナヒーダは静かに応えた。
「陳宮、その申し出を受け入れる。だが汝の思う壺には乗らぬ。スメール城は私と民の故郷。全力で守り抜く」
智くらべが始まり、陳宮が先に問題を出した。
「ある物がある。闇の中で光り、水に浮かび、風に舞う。これは何だ知らぬか?」
陳宮は内心得意げだ。この謎は単純に見えて巧妙な仕掛けが隠されており、ナヒーダに簡単に解けるはずはないと思っていた。
ナヒーダは目を閉じ、しばらくして唇に微かな笑みを浮かべて静かに語った。
「ホタルでしょう。闇の中でかすかに輝き、穏やかな水面に佇んで漂い、そよぐ風が吹けば風のリズムに乗って舞う」
陳宮は心底驚いた。まさかナヒーダがこれほど容易に解くとは思わなかった。だがすぐに冷静さを取り戻し、続けた。
「よし、一問目は正解。次にこの碁局がある。半時辰以内に崩せれば汝の勝ちだ」
言うと、陣前に複雑な碁の局を配置させた。
ナヒーダは碁局を眺め、頭の中で一手一手の動きと変化の可能性を瞬く間に分析した。時は刻一刻と過ぎ、彼女は時に眉を顰めて考え、時に自信に満ちた笑みを浮かべた。半時辰が終わろうとする刹那、ナヒーダは要となる一手を打ち、見事に碁局を崩した。
陳宮の顔色はやや悪くなったが、まだ最終手段があった。懐から精巧な箱を取り出して言った。
「この箱の中には秘密が仕込まれている。その秘密を当て、箱を開けられれば汝の勝ち。機会は三回だ」
ナヒーダは箱を見つめ、思いに耽った。万物に対する知識と鋭い知覚を駆使し、推測を重ねた。一度目は外れ、二度目もまた違った。陳宮の顔に勝利の兆しが浮かび、ついに勝てると思った。
だがナヒーダは諦めなかった。深く息を吸い込み、再び精神を集中させた。その時、突然、決め手となる手がかりを思いついた。ゆっくりと語った。
「この箱に秘められた秘密は、汝がこの世界に来た真の目的。スメール城を占領するだけでなく、ここの力を利用して、元の世界に戻ろうとしている。そうでしょう?」
陳宮の瞳は一瞬にして収縮した。まさかナヒーダに本当の秘密を見抜かれるとは思わなかった。彼は歯を食いしばって言った。
「よし、さすがに聡明だ。だがこの局は俺の勝ちだ」
実はナヒーダが答える前に、陳宮は密かに箱に魔法の仕掛けを施していた。ナヒーダが声を発しさえすれば、答えの正否に関わらず、自動的に己の勝利となるように仕組んでいたのである。
怒りと悔しさを胸に秘めながらも、ナヒーダは約束を守ろうとした。だが彼女は事前に備え、城内に伏兵を配置していた。陳宮の軍が入城しようとした時、四方八方から無数のスメール兵と元素生物が湧き出て、彼らをぐるりと包囲した。
陳宮はこれを見て悪い予感を覚えたが、すぐに冷静さを取り戻し、軍を指揮して抵抗させた。両軍が激しい戦いに陥ったその時、呂布軍の張遼が精鋭の騎兵を率いて駆けつけた。張遼は手に槍を振り回し、まるで猛き獣のように敵陣に斬り込み、臨むところ伏兵は次々と倒れていった。
張遼の援護により、陳宮の軍は次第に優勢に立ち、見事に伏兵の包囲を突破した。陳宮は張遼を見て、瞳に感謝の念を宿して言った。
「将軍、助けていただき感謝する。今日の恩、必ず後日報いる」
張遼は頷き、言った。
「礼には及ばぬ。わが主君が君の窮地を聞き、特に援軍に来させたのだ」
この息を呑むような智くらべと戦いを経て、スメール城は一時的に危機を脱した。だが陳宮もナヒーダも、これは始まりに過ぎないことを知っていた。今後、二人の間にはさらなる対決と衝突が待ち受けている。時空と世界を超えたこの争いは、トワイラット大陸において引き続き紡がれていく。次の邂逅がどのような物語と結末をもたらすのか、誰にも分からない。




