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モンドソン放火事件

夕暮れは血のように染まり、モンド城外の広大な草原を紅く染め上げていた。ヴァルカは仮設の櫓の上に立ち、燃えるような眼差しで、台下に整列し出撃を待つ大军を見渡していた。ジンフ港奪還の勝利はまだ鮮明に記憶に刻まれ、その歓びが消えやらぬうちに、彼の心はより深い想いに支配されていた——ジーン団長のための復讐を果たすという揺るぎない決意だ。


「将兵のみなさん!」

ヴァルカの雄々しい声が空に響き渡る。

「ジンフ港の奪回は、我々が勝利へ踏み出した第一歩だ!今なおモンド城は呂布という暴れ者の鉄蹄の下にあり、ジーン団長の英霊はまだ安らかに眠れていない!我々は故郷を取り戻し、敵に血の代償を払わせるのだ!」


「討て!討て!討て!」

揃いの雄叫びが雷のように大地を揺るがす。ヴァルカは手にする剣を強く握りしめ、刃には自らの決意に満ちた顔が映った。彼は知っていた——前方に待ち受けるのは凄惨を極める戦いとなるだろうが、彼はすでに生死を度外視していた。


大军はゆっくりと進み、空気には緊張が充満していた。その時、遠くから砂塵が舞い上がり、一隊の軍勢が姿を現した。先頭に立つのは、呂布配下の猛将・張邈ちょうばくである。張邈は戦馬にまたがり、陰険な眼差しで迫り来るヴァルカ軍を眺め、唇に気づかれぬ冷笑を浮かべた。


「ヴァルカ、今日が汝の最期だ!」

張邈は一声どなり、手にする槍を振り上げて軍を率いて襲いかかる。ヴァルカは少しも怯まず、剣を振り上げて迎え撃つよう号令をかけた。両軍はたちまち乱戦に陥り、殺気立つ叫びと兵器の激突音が絶え間なく響き渡った。


ヴァルカは戦場を自在に駆け巡り、その高超剣術は一振りごとに敵の命を奪った。しかし張邈の軍も並の軍勢ではなく、精錬された手勢で頑強に抵抗した。双方は長らく熾戦を繰り広げ、勝敗はなかなかつかなかった。


その時、張邈はわざと手を抜くように槍を捌き、馬首を返して大声で叫んだ。

「撤退せよ!モンド城へ引き揃え!」


配下の兵たちは号令に従い、一斉に撤退を始めた。ヴァルカは一抹の疑念を覚えたが、復讐の怒りと勝利への渇望がその疑念をすぐに押し消した。彼は迷わず号令をかけた。

「追え!逃がすな!」


大军は隙かず追跡し、そのままモンド城の下まで追い詰めた。城門は開かれ、張邈の軍は次々と城内へと入っていく。ヴァルカはためらうことなく大军を率いて城内に突入した。しかし、最後の兵が城内に入り終わった瞬間、城門は「ドン」という重い音で閉ざされた。


ヴァルカは心臓を抉られるように驚き、悪い予感を覚えた。その時、城外から一陣の笛吹きのような音が響き、無数の火矢が雨のように城内へと降り注いだ。瞬く間にモンド城全体が火の海に包まれ、家屋も通りも燃え盛り、ヴァルカの大军までもが焼かれた。兵士たちの絶叫と助けを求める声、火のはぜる音が入り混じり、悲劇の調べを奏でていた。


ヴァルカは火の海で命を懸けて戦い、兵士たちを率いて包囲を突破しようとした。しかし火勢はあまりに激しく、煙は立ち込め、出口を見つけることすら叶わなかった。呂布軍は城外から火矢を撃ち込み続け、モンド城を人間煉獄へと変えてしまった。


これはすべて、陳宮ちんきゅうの計略であった。知謀に優れた陳宮は、ヴァルカの武勇は正面からでは敵わないと見抜き、敵を深く誘い込む罠を周到に仕組んだ。張邈に敗れたふりをさせ、ヴァルカをモンド城内へ引き込み、火攻めで一網打尽にするという計である。


ヴァルカは身辺の兵士が次々と倒れていくのを見て、怒りと悲しみに胸を裂かれた。ジーン団長のこと、共に戦った日々のこと、モンドの民のこと、この生まれ育った大地のことが次々と脳裏をよぎった。このまま敗れるわけにはいかない、敵の思う壺にはまるわけにはいかない。


「一気に行くぞ!」

ヴァルカは一声どなり、剣を振り回して火勢最も激しい方向へと突進した。しかし火の勢いはあまりに苛烈で、彼の体力も尽き果てていった。最期、ヴァルカは大火に飲み込まれ、かつて命を懸けて守り抜いたこの地に倒れた。


火は一晩中燃え続け、夜明けと共にようやく鎮まった。モンド城は跡形もなく荒れ果て、崩れ落ちた塀や兵士の遺体があちこちに転がっていた。呂布と陳宮は城外に立ち、焼き払われた都市を眺め、得意の笑みを浮かべていた。


「ヴァルカは死んだ。もはやモンドに我々に敵する者はいない!」

呂布は奔放に笑い上戸った。


陳宮は静かに頷き、眼に鋭い光を宿らせた。

「主君、これで勢力をさらに拡大し、この大陸を覇道することができます」


しかし二人は知らない。ヴァルカの犠牲は無駄にはならなかった。その勇気ある行いは永遠にモンドの民の心に刻まれ、後継の者たちが自由と正義のために戦い続ける力となる。戦火に洗われたこの大地に、新たな希望が密かに芽吹き始めていた——。

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