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化城郭夜襲戦

須弥烽火録


夜は巨大な黒の絹のように、重く垂れ込めて須弥・化城郭の上空を覆っていた。城中は静まり返り、巡回する兵士の足音だけが、ときおりその静寂を破っていた。


その頃、化城郭のすぐそばにある深い森の中では、八百人からなる軍勢がひそかに集結していた。先頭に立つのは、呂布配下の猛将・張遼である。身姿は引き締まり、眼光は鷲のように鋭く、闇の中で人を震え上がらせる輝きを放っていた。月光は彼の鎧に降り注ぎ、冷たく輝いていた。


「今日こそ、我々に大いなる手柄を立てる時だ!」

張遼は低く、しかし力強く語りかけ、声は夜の空に響いて周囲の兵士たちの気を奮い立たせた。

「今回の化城郭への夜襲は火攻めとする。一撃必中、相手を不意に打ち崩すのだ!」


兵士たちは一斉にうなずき、手にする武器を強く握りしめ、瞳に決意と覚悟を宿していた。


一方、化城郭の内部では、黄忠、ティナリ、コレイが防衛策を協議していた。黄忠は髭をなでながら、厳しい面持ちで言った。

「このところ心穏やかでない。どうも敵軍の襲来があるようだ。警戒を強めねばならない」


ティナリは軽く眉を寄せ、耳をそっと震わせた。

「私も感じている。森の獣たちがいつもより警戒している」


コレイは武器を固く握り、緊張と期待をまじえた瞳で言った。

「師匠、黄将軍、私は必ず全力を尽くします!」


しかし彼らはまだ、危機がすぐそばまで迫っていることに気づいていなかった。


張遼が手を振ると、八百の兵士は黒い潮流のように素早く化城郭へと押し寄せた。身のこなしは敏速で、音もなく門に近づいていく。門から数十メートルまで迫った時、張遼は一声の号令をかけた。


「火をつけろ!」


たちまち無数のたいまつに火が点され、夜空を照らし出し、まるで火の竜のように化城郭に襲いかかった。


城壁の上の兵士たちは敵を発見し、あわてふためいて大声で叫んだ。

「敵襲だ!敵襲だ!」


鐘の音がすぐに鳴り響き、夜の闇を引き裂いた。黄忠、ティナリ、コレイは急いで城壁に駆けつけ、目の前の獣のような敵軍を見て心を沈めた。


「まさか夜襲を仕掛け、しかも火攻めとは!」

黄忠は怒りに声をふるわせ、憤りと無念をにじませた。

ティナリはすぐに冷静さを取り戻し、コレイに叫んだ。

「コレイ、早く皆に火消しを命じろ!火を広げさせるな!」


コレイは慌ててうなずき、城中へ走り去った。


張遼は城壁の守り軍が動揺し始めたのを見て心中大喜びし、声を張り上げた。

「諸君、突撃だ!」


兵士たちはどっと叫び、門へと突進した。火をつけた油樽を門に投げつけ、たちまち炎が広がり、門は大火にゆれて崩れ落ちそうになった。


黄忠はこれを見て弓を引き絞り、敵に向かって矢を放った。鋭い矢は風を切って飛び、あっという間に数人の兵士の胸を貫いた。しかし張遼は少しも動じず、手にする長槍を振るって攻撃を指揮し続けた。


ティナリも負けじと弓を構え、精密な射術で次々と敵を討ち取った。だが張遼の配下は訓練が行き届いており、矢を避けながらも攻撃をやめなかった。


コレイは城中で民と兵士を指揮して火消しにあたり、危険を顧みず炎の中を駆け回った。しかし火勢があまりに大きく、容易には抑えられなかった。


門が破られ、張遼は軍を率いて化城郭になだれ込んだ。城中はたちまち混乱に陥り、殺し合いの声、悲鳴が絶えなかった。黄忠、ティナリ、コレイは残る守り軍を率い、敵と過酷な市街戦を繰り広げた。


「撃て!」


黄忠は吼え、大刀を風のように振るい、一撃ごとに敵をなぎ倒していった。ティナリは身軽な身のこなしを活かして敵中を駆け巡り、次々と致命傷を与えた。コレイは年は若いながらも少しも怯まず、手にする武器に冷たき輝きをたたえ、敵と命がけで戦った。


しかし張遼の軍は人数が多く、士気も高い。黄忠、ティナリ、コレイは次第に手を振り果たし、敗走を始めた。


「撤退だ!化城郭から一旦退け!」


黄忠はやむなく叫んだ。三人は残る守り軍を率いて城外へと退いていった。張遼はこれを見ても追跡せず、今回の夜襲はすでに大勝を収め、化城郭は自らの手に落ちたと悟っていた。


遠ざかる黄忠らの背中を眺め、張遼は口元に勝利の笑みを浮かべた。


「須弥よ、今日から、我々の掌中にある!」

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