香酔坡奇襲作戦
風雲変幻、英雄続々と現れる乱世。
呂布配下の侯成は、軍を率いてスメールの香酔坡に赴いていた。
この地は山々が連なり、緑濃く、景色は美しいものの、戦の火薬臭が充満していた。
侯成は今回の任が極めて困難であると心得、眉を引き締め、眼光炯々として香酔坡の地形を詳細に偵察し、続いて即断で命令を下した。
兵士たちに速やかに防衛施設を築かせるのだ。
兵士たちは微々たる怠けもなく、重い木材を担ぎ、厚い石を運び、一団一団が息を切らし、汗に衣を濡らしていた。
木を切る者、溝を掘る者、土や石を運ぶ者……役割は明確で、連携は見事だ。
侯成はそばを行きつ戻りつ、たえず指揮し、時に大声で呼びかけ、時に自ら手本を示し、
一つ一つの防衛施設が堅固で確かなものになるよう確かめていた。
一方、黄忠は軍を率いて付近を巡回していた。
黄忠は年はとっているものの、元気溢れ、威風堂々と大きな戦馬にまたがり、
眼光は鷹のように鋭く、たえず周囲の気配に警戒を怠らなかった。
彼の軍は足並みそろい、規律厳正、まるで鉄の奔流が山間をゆっくりと進んでいくかのようだ。
突然、一人の兵士が遠くの香酔坡を指さし、慌てた面持ちで叫んだ。
「将軍、あちらをご覧ください! 何か気配があります!」
黄忠は兵士の指す方角を眺め、香酔坡に土ぼこりが立ち、かすかに兵士たちが作業しているのを見て、心の中でびくりと驚いた。
敵軍が防衛施設を築いていると直感し、即断で号令をかけた。
「全軍、急げ! 隠密行動だ!」
黄忠の軍は素早く香酔坡に近づき、慎重に林の間を縫って進み、できるだけ音を立てないようにした。
侯成の軍にますます近づいた時、黄忠は相手の旗をはっきりと確認し、心の中で思った。
「なんと呂布の手下だ。今日こそ見つけた以上、企みを遂行させるわけにはいかぬ!」
侯成は一心不乱に兵士たちに施設を築かせており、危険が迫っていることには一向に気づかなかった。
その瞬間、黄忠の軍が猛虎が山から舞い降りるかのように林から飛び出し、
殺気立つ喊声が天地に響き渡った。
侯成は青ざめ、あわてて応戦しようとするが、もう手遅れだ。
黄忠は真っ先に駆け、大刀を手に、黒き稲妻のように敵陣に突入した。
大刀は風を切って舞い、臨むところ敵兵は次々と倒れ、血しぶきが舞った。
侯成は事態悪化を悟り、逃れようとしたが、黄忠にしっかりと狙われていた。
黄忠は大喝した。
「侯成、どこへ行く!」
声と共に鞍を挟み、駿馬は嘶き、矢のように侯成に向かって突進した。
侯成は恐怖に駆られ、必死に馬を走らせたが、その駿馬は黄忠の愛馬に及ぶはずもない。
あっという間に黄忠は侯成に追いついた。
侯成は恐怖に顔を青くして振り返ると、黄忠は怒りにみちびられ、大刀を高く掲げ、冷たい光をはなっていた。
彼は絶望的に目を閉じ、死を待ち受けた。
「カツン」と鈍い音が響いた。
黄忠の大刀が重く落ち、侯成の首はたちまち飛び散り、体はへなりと馬から墜ちた。
主将が討ち取られたのを見た兵士たちは一気に動揺し、わっと散り散りに逃げ出した。
黄忠は勝勢に乗って追撃し、軍を率いて侯成の残部を殲滅した。
侯成が討たれた報を聞いた呂布は、かっと怒りに沸き、目を怒らせ、
手に持った杯を勢いよく地面に叩きつけ、大声で吼えた。
「黄忠め、わが猛将を討ち取るとは……必ず血で血を償ってやる!」
言うと即座に軍を召集し、自ら大軍を率いて侯成の仇を討とうとした。
呂布は鎧を身にまとい、方天画戟を手に、威風堂々と点将台に立った。
その眼光には限りない怒りと殺気が宿り、台下の兵士たちを眺め渡し、大きな声で言った。
「諸将よ! 侯成はわが同胞だ。今、黄忠という老害に討たれた。
このまま黙ってはいられぬ!
今日こそ、共に討ち取り、黄忠を木っ端微塵に砕き、侯成の仇を討ってやる!」
兵士たちは呂布の気勢に引きずられ、一斉に武器を掲げ、
「侯成の仇を討て! 侯成の仇を討て!」
と、声が空に響き渡り、気勢は壮絶だ。
呂布は満足げにうなずき、大きく手を振って命令した。
「出撃!」
こうして呂布は、どっと押し寄せる大軍を率い、黄忠の陣地へと進撃していった。
今にも始まむ、心を奮い立たせる大戦。
果たして勝利を得るのは、驚異の勇猛を誇る呂布か、老いてもなお壮な黄忠か。
すべてはまだ未知数であり、乱世全体がこの一戦の行方を見守っている。
人々の運命も、この戦いによって変わろうとしていた。




