璃月帝君が落ちる
魔神の亡骸、璃月の禍
呂布の軍勢が璃月へと向かっていた。見知らぬ芳しい花の香り、奇妙な雲霧が彼に警戒心を抱かせる。赤兎馬は落ち着かず蹄を掻き、呂布は方天画戟を強く握り、低くつぶやいた。
「ここは何処だ?」
彼が熟考する間もなく、奇装異服で武器を持った者たちが慌ただしく駆け寄ってきた。先頭の者が怒鳴りつける。
「何者、みだりに璃月に踏み入るとは!」
呂布は仰ぎ笑い、その声は四方に響き渡る。
「われは呂布、天下無双なり!ここが何処だろうと関係ない。来た以上、この地を征圧する!」
声が落ちるとすぐ、彼は馬を走らせ戟を突き出し、黒き稲妻のように人込みに突入した。
方天画戟は千钧の力を帯び、冷たい閃きを放ち、臨むところ血肉飛び散る。彼らは蟷螂が車に腕を振るうようなものに過ぎず、瞬く間に打ち砕かれ支離滅裂となった。呂布の口元には軽蔑の笑みが浮かび、馬を駆り璃月城の方へと進んでいく。
璃月城内、仙人たちは異変を鋭く察知した。凝光は群玉閣に座り、険しい面持ちで言う。
「強敵が来襲したようだ。全力を挙げて璃月を守らねばならない」
鍾離は静かに頷き、落ち着いた気配をまといつつ言う。
「私がこの不速の客と対峙しよう」
呂布は璃月城の前に到着し、雄大な城壁と街の繁栄を眺め、瞳に貪欲な光を宿す。
「これほどの宝地、いずれ我が物となる!」
強攻しようとしたその時、一人の男が穏やかに歩み寄ってきた。まさに鍾離である。
「来る者、止まれ。ここは璃月。我が物顔に振るまうことを許さない」
鍾離の声は穏やかながら、揺るぎない威厳に満ちていた。
「貴様は何者?我が行く手を阻むな!」
呂布は目を怒らせ、方天画戟を鍾離の喉元に突きつける。鍾離は両手を背に回し、慌てる様子もなく言う。
「在下、鍾離。璃月を守ること、これが我が務めなり」
呂布は鼻で笑い、先に攻めかかる。方天画戟は蛟竜が海を出るように、鍾離を真っ直ぐ突く。鍾離は身を翻し、軽々と避け、袖を一振ると、まるで山川の力が湧き出し、呂布の攻勢をことごとく打ち消した。
両者は攻防を繰り返す。呂布の勇猛剛健と鍾離の穏やかな神秘が激しい火花を散らす。城壁の上では璃月の民が緊迫した面持ちで戦いを見守り、凝光は眉を寄せ、対策を練っていた。
戦いの中で、呂布は次第に鍾離の実力が底知れぬものであると悟り、心に焦りがよぎる。
「今日はここで落ちるのか?」
彼は歯を食いしばり、一声を上げて全身の力を振り絞る。赤兎馬もまた主人の気勢に鼓舞されたかのように嘶き、高く躍り上がり、呂布の攻撃に呼応する。
鍾離は心の中で思う。この男は勇猛なれど拙速で無謀、隙を突けば一撃で勝負をつけられるかもしれない。そう思った瞬間、呂布が突然怒りを込めて襲いかかる。一撃「力劈華山」、方天画戟は岩をも砕く勢いで鍾離を真っ二つに斬りかかる。鍾離は間に合わず、慌てて両腕を組んで受け止めた。
この一髪を抜く瞬間、呂布は突然手首を返し、戟の先が急に方向を変え、鍾離の胸を突く。鍾離の瞳は急に収縮し、避けようにも間に合わない。「プス」と鈍い音が響き、方天画戟が鍾離の胸を貫いた。
「あり得ない……」
鍾離は信じられない様子で胸に突き刺さる戟の先を見据え、口から血を吐く。呂布は勢いよく方天画戟を抜き、鍾離の身体はゆっくりと倒れ、気を失った。その後、潜行してきた旅人・空によって救い出される。
「帝君!」
城壁の上の民たちは絶望の叫びを上げる。凝光はその場にへたり込み、涙が溢れ出した。
呂布は仰ぎ天に向かって吼える。
「これより璃月は我が天下なり!」
旅人・空:
「帝君! 違う、違う違う遅すぎた……呜呜呜呜……」
群玉閣の上、帝君の加護を失った璃月は混乱に陥った。仙人たちは首領を失い、民たちは狼狽している。呂布は自らの「軍勢」(実は彼に脅された璃月の民)を率い、街中で乱行し略奪を繰り返す。
かつての繁栄を誇った璃月港は、今や火の手が天に昇り、泣き叫ぶ声が鳴り響く。店々は洗いざらい奪われ、道端には民の屍が無造作に転がっている。魈や甘雨ら仙人たちは反抗を試みるも、呂布の暴虐の前にただ敗退を繰り返すばかり。
凝光は惨状と化した璃月を眺め、心に悔恨と無念が充満する。彼女は知っていた。帝君が倒れたその瞬間から、璃月の輝きは過去のものとなった。そしてこのすべての元凶は、異世界から来た悪魔――呂布にあるのだ。




