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軽策荘の戦い

軽策庄哀歌


(けいさくそうあいか)


大陸の情勢がめまぐるしく変わる中、璃月はかつてない打撃を受けていた。華雄の軍は、まるた濁流のような黒き潮となり、果てしない殺気をまとって、静かな軽策庄へ押し寄せてきた。彼らの狙いは、ここに守りを固める璃月の残軍であり、その中には胡桃と香菱、璃月への熱き想いを胸に秘めた二人の若き戦士がいた。


軽策庄は、かつて牧歌的な笑いと安らぎに満ちた地であったが、今は戦争の暗雲に包まれていた。遠くに連なる山々は、重苦しい空の下でひっそりと肩を落としていた。胡桃は真紅の衣をまとい、庄前の広場に立ち、瞳に決意と覚悟を宿していた。その隣で香菱はなべじゃくしを固く握りしめ、普段は明るい瞳にも戦いの光が宿っていた。鍬は本来の武器ではないが、今や彼女が敵を討つ刃となっていた。


「香菱、今日の戦いは、凶多吉少となるだろう」

胡桃は静かに囁いたが、声に怯えは微塵もなかった。


「怖くない! 璃月を守れるのなら、死んでも悔いはない!」

香菱は歯を食いしばり、確かな决意で答えた。


華雄軍の先鋒はたちまち視界に現れた。先頭の将は駿馬にまたがり、大刀を手に陽光の下で冷ややかに輝かせていた。彼が大刀を一振ると、背後の兵士たちは飢えた狼のように軽策庄へ襲いかかった。


胡桃は真っ先に応戦した。しなやかな身のこなしで、往生堂特製の長棍を颯爽と舞わせ、一撃一撃に鋭い気迫を込めた。華雄軍の兵士は次々と倒れたが、後ろから無尽蔵に押し寄せてくる。


香菱も負けじと敵中に斬り込み、鍬を縦横に躍らせた。調理の道具に過ぎない鍬だが、今や彼女の手にあっては驚くべき威力を発揮し、敵に叩きつければ鈍く重い音が響いた。


戦いはますます熾烈を極め、軽策庄の町中は哄の声と兵器の衝突音に満ちた。胡桃と香菱は敵中を駆け抜け、互いに息の合った連携を見せた。胡桃が棍で敵を牽制し、香菱が隙に致命傷を加える。しかし華雄軍の数はあまりに多く、二人は波のような兵隊に徐々に包囲されていった。


胡桃の体力は急速に削られ、体には無数の傷ができ、血が彼女の紅衣を染め上げた。それでも彼女は退くことなく、むしろ狂気的に戦い続けた。瞳に怒りの炎を燃やし、心にはただ一つ、「璃月を守る、軽策庄を守る」という想いだけが宿っていた。


「香菱、頑張れ! 負けるわけにはいかない!」

胡桃は声高らかに叫んだ。


香菱は力強く頷き、鍬の攻撃をさらに加速させた。だが敵の包囲網はますます狭まり、窮地は深まるばかりだった。


状況が有利と見た華雄は、得意げに自ら戦線に加わった。重厚な大刀を手に、胡桃と香菱に襲いかかった。二人は一瞬、瞳を交わし、共に斬りかかった。


華雄の刀法は剛猛にして重く、一撃一撃に千鈞の力が籠っていた。胡桃と香菱は必死に受け止めるほかなく、傷はますます増えていった。


「このままでは……!」

香菱は荒い息を吐いた。


胡桃は歯を食いしばった。

「勝負だ!」


危険を顧みず、彼女は華雄に猛然と突撃し、自らを囮にして香菱に隙を作らんとした。


華雄は冷笑し、大刀を勢いよく振り下ろした。胡桃は避けきれず肩に斬りかかり、身体ごと後方へ吹き飛ばされた。


「胡桃!」

香菱は悲鳴を上げ、我先に駆け寄った。


隙を見た華雄は香菱に襲いかかり、大刀を胸へ真っ直ぐに突き刺した。香菱は身をかわそうとしたが、気を取られて一瞬の遅れが出て、刃に貫かれた。


胡桃はもがきながら起き上がり、香菱の傷を見て悲痛に瞳を震わせた。最後の力を振り絞り、再び華雄に斬りかかった。華雄は軽蔑するように彼女を見やり、大刀を一振りで胡桃を地に斬り倒した。


胡桃と香菱は地面に倒れ、体の下から血が滲み広がった。二人は互いを見つめ、瞳に恐怖はなく、ただ名残り惜しさと璃月への想いが宿っていた。


「香菱……俺たち……頑張った……」

胡桃の声は次第に細くなっていった。


「うん……胡桃と一緒に璃月を守れて……悔いはない……」

香菱の声も、やがて消えゆいた。


華雄軍は軽策庄を占領した。だが胡桃と香菱の武勇は、璃月の民の間で口々に語り継がれることとなった。二人は命をもって璃月への忠誠と愛を貫き、歴史に消えることのない英雄伝説となった。

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