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魔力が無いから王族とは結婚出来ないのに、王太子殿下が婚約者候補から外してくれません  作者: 石月 和花


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9. 勝てない日々と、ひらめいた名案

 それからロキシード殿下とのお茶会は、大体月に一度、多い時は二度のペースで開かれるようになった。


 初回のお茶会で、私が殿下に対して「負かせてみせますわ!」などと啖呵を切ったせいで、お兄様は「もう王宮に呼ばれることはないのでは……」と本気で心配していたけれども、最初のお茶会から半月が経った頃に、ロキシード様から次のお茶会へのお誘いの手紙が届いたことで、お兄様のその心配は杞憂に終わった。


――しかし、問題はここからだった。


 殿下とお茶会をするということは、すなわち毎回、私が殿下に勝負事を仕掛けなければならないということなのだ。


 初めの頃は、まだ良かった。


 作詩、楽器の演奏、歴史の暗記、追いかけっこ――

 いくつでも、勝負事を思いつくことが出来たから。


 しかし、回を重ねるごとに私は思い知らされるのだった。


(……な、何をやっても、殿下に勝てませんわ……)


 まず最初に、知力では殿下に敵わないことを悟った。


 私だって同年代の子供の中では頭の良い子だと評判であったが、殿下はそれよりもさらに上を行く博識ぶりだった。


 ……そもそも、殿下は私より一歳年上なのだから、冷静に考えてこの差はどうにもならないので、私は早々に知力での勝負を諦めた。


 同じ理由で運動面でも殿下に敵わないのは明白なので、私は、知力、体力以外の勝負事を考えるしかなかった。


 そこで私は、花の匂いを嗅いで名前を当てるゲームや、紅茶を飲んで茶葉の産地を当てるゲームといった、”これなら私でも殿下に勝てそう”な勝負事を提案したのだが、殿下は花の香りを嗅いだだけで品種を言い当てるし、紅茶の産地も迷いなく答えるので、結果はいつも変わらなかった。


 こうなってくると、もう何をやってもロキシード様には勝てないんじゃないかと

私は弱気になっていた。


 ――けれども、そんな不甲斐ない気持ちをも乗り越えて、ついに私は名案を思いついたのだった。



***



「お兄様聞いてくださいませ!私、王太子殿下に引導を渡す勝負事を思いつきましたの!!」

「うん、アディ。何度も言うけど、家の中だといっても発言には気をつけようね。」


 この名案を一番に聞いてもらいたくて、私はお兄様が寛いでいるサロンへ駆け込むと、お兄様は穏やかに微笑みながら、まずは私の言動を窘めた。


「あ、ごめんなさい。王太子殿下を打ち負かす勝負事を思いつきましたの!!」

「うん、大して変わってないけど、……まぁ、さっきのよりかは良いかな……」


 お兄様の笑みが若干引きつっているようにも見えたけども、そんな事は構わずに、私は話を続けた。


「お兄様、私一生懸命考えましたの。どうしたらロキシード様に勝つことが出来るかを。殿下は完璧なお方ですから、まともな勝負事では勝てません。

そこで、私思いつきましたの。王太子殿下が知らない事で勝負すればいいんですわ!」

「まぁ、確かにそうかもね。」

「そうでしょう?そこで、私は考えましたの。名付けて、”どちらがお買い物上手でしょうか!”勝負ですわ!」


 私は自信満々でこの素晴らしい計画をお兄様に打ち明けた。

 すると、何故かお兄様は、額に手を当てて項垂れたのだった。


「……うん。詳細を聞く前から、なんだか胃が痛いよ。」

「大変!お兄様大丈夫ですか?!直ぐに医者に診てもらわないと!」

「……大丈夫。とりあえず、続けて?」


 胃が痛いと言っているのに頭を抱えていらっしゃったので、ちぐはぐなお兄様の態度を不思議に思ったが、お兄様が大丈夫だと言うので、私はそのまま話を続けた。


「私、この前初めて硬貨を使って市場で庶民の買い物をしましたの!」

「そうだね。社会勉強の一環として買い物の体験をしたね。」

「きっと、ロキシード殿下は、このような経験をしたことが無いでしょうから、これで勝負するのです。どちらが、銅貨1枚でより多くの物を買えるか勝負です!!」


 私はこの名案を得意になってお兄様に披露した。

 この計画ならば、きっとお兄様も素晴らしいと褒めてくれると思ったのだ。


 しかし、お兄様は相当具合が悪いのか、もはや笑顔も消えてぐったりとしたような顔で項垂れると、深いため息を吐いたのだった。


「……アディは面白いことを考え付くね……」

「そうでしょう?!」

「でも、冷静に考えてみて。王太子殿下が庶民の振りして買い物をするだなんて、周囲が許すと思うかい?」


 お兄様からの問いかけに、私は少し考えてみた。


「……護衛も従者もたくさんいるから問題ないのでは?」

「……そうだね。……殿下の護衛と従者に心の底から、先に謝っておきたい気分だね。」

「そうですわね。だって私が殿下を負かしてしまうんですもの。傷心の殿下を慰めるお仕事を増やしてしまいますわ。」

「……増やす仕事はそれではないと思うけどね。」


 お兄様の言っている事の意味が良くわからなかったけれども、私はお兄様もこの計画を認めてくれたのだと受け取った。


「お兄様、私早速この勝負を殿下に申し込みますわ!」

「うん、とりあえず殿下が正常な判断をしてくれることを願うよ……」


 こうして、私は嬉々としてロキシード様に挑戦状――もといお手紙を送り付けた。すると殿下は、驚くほど早く返事をくださり、私の提案を受け入れてくれたのだった。

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