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魔力が無いから王族とは結婚出来ないのに、王太子殿下が婚約者候補から外してくれません  作者: 石月 和花
ロキシード視点

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4. 初顔合わせ

 彼女と初めて会ったのは、十一歳になったばかりの頃だった。


 丁度その頃、王太子に立子した僕にそろそろ婚約者が必要だろうという話が上がり、各派閥が競うように自家の令嬢を推し始め、毎日のように顔を見たこともない令嬢の釣書が届けられていて、狡猾な大人たちがお互いに自分の有利となる派閥の令嬢を僕に当てがおうとしているのが見え見えで、僕は少しうんざりしていた。


(どうせ、令嬢なんて誰でも一緒だろうに……)


 そう思ったが、これでも王太子なので顔には出さず、貴公子の仮面を完璧に被って僕は三人に絞られた候補の令嬢たちと顔合わせを行うことになったのだった。


(あぁ、早く終わらせたい)


 僕は、これも義務だから仕方がないと割り切って、顔合わせの席へと向かった。


 最初に会ったカラサリス家のリリエラ嬢は、本当に絵に描いたように分かりやすい性格で、僕に媚を売っているのが見え見えで、扱いやすいという点では評価が出来た。


 次に会ったフローゼル家のローゼリア嬢は、僕と同じ匂いがする性格で、伴侶とするには向いてなかったが、政策を共に進める同士として考えれば悪く無かった。


 そして今日会うのは最後の一人、ハルスタイン家のアディルナ嬢。


(……ハルスタイン家は、確かどこの派閥にも属して無かったな)


 恐らく彼女は、カラサリス派とフローゼル派の緩衝材となるべく選ばれた当て馬役だと僕は考えた。


(それならまぁ、彼女が僕の婚約者に選ばれる事は無いだろうな)


 僕は少し、大人の都合で酷な役割を押し付けられた彼女に同情し、せめて一時でも良い夢を見させてあげようと、僕は最大限に王子様として振る舞うことに決め、応接室のドアを開いた。


 そこには、ルビーの様な赤毛が眩しいほど鮮やかな、活力の溢れる女の子が立っていた。


「ロキシード殿下、お初にお目にかかります。ハルスタイン侯爵の娘、アディルナでございます」


 応接室で顔を合わせた彼女は、緊張しながらも、とても綺麗なカーテシーで礼儀正しく僕に挨拶をした。


「うん。アディルナ嬢、よろしくね。楽にして良いよ」


 僕が彼女に声を掛けると、彼女はゆっくりと顔を上げた。


 すると、僕と目が合った瞬間、彼女は息が止まったようにこちらを見つめ、固まってしまった。


 僕は、こういう反応をする令嬢を、今までに沢山見てきた。

 つまり、彼女も僕の顔に見惚れてしまったのだろうと、簡単に分かった。


(ほら、やっぱりこの子も他の令嬢と同じだね)


 僕の中で彼女に対する興味が急速に萎んだ。


「至らなぬところもあると思いますが、よろしくお願いいたします」


 形式に則ってもう一度彼女が深々と頭を下げると、僕も形式に則って穏やかに微笑み、王太子としての完璧な態度を保った。


 興味がないといっても、この場でどう振舞うべきなのかは、身に染みついている。

 僕は優しく穏やかな王太子の仮面のまま、他の二人の令嬢の時と同じように、アディルナ嬢を定型的にお茶に誘った。


「ハルスタイン侯爵、親睦を図る為にアディルナ嬢をお茶の席に誘いたいのだが良いだろうか?」

「勿論でございます」


 ハルスタイン侯爵の許可を取ると、僕はゆっくりと彼女の前に歩み寄り、柔らかく微笑んで右手を差し出した。


「アディルナ嬢、貴女と話がしてみたい。良ければ庭園のガゼボに用意したお茶の席へ案内したいのだが、いいかな?」


 僕は最大級に王太子の皮を被って、彼女を誘った。


 僕にこうやって誘われると、令嬢は皆、戸惑いつもはにかみながら頷くので、アディルナ嬢もいつもの令嬢と同じような反応をすると思っていた。


 けれど――


「はい!もちろん!喜んで!!」


(ん……?今物凄く、反応早かったな??)


 食い気味に返答をした彼女に僕は少し面食らってしまった。


(ん……?あれ?恥じらいとか、戸惑いとかそういうのはこの子にはないのか??)


 僕の中のアディルナ嬢の評価が一瞬ぐらりと揺らいだが、彼女の行動は、更に普通とは違っていた。


 普通の令嬢ならば、王族である僕が差し出した手には、恐れ多くて中々触れようとしないのだが、彼女は一瞬だけ躊躇うと、いとも簡単に僕に手に自分の手を重ねたのだった。


 僕の手に触れて、はにかみながら微笑む彼女に僕は思わず目を見開いてしまった。


(……この子、普通の令嬢とはどこか違うな?)


 そんな考えた脳裏を過ぎりながら、僕は直ぐに表情を整え、いつものようにニッコリと笑うと優しい声で彼女を誘った。 


「それじゃあ行こうか、アディルナ嬢」


 そしてそのまま彼女の手を引いて、僕たちは応接室を後にしたのだった。


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