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魔力が無いから王族とは結婚出来ないのに、王太子殿下が婚約者候補から外してくれません  作者: 石月 和花
ロキシード視点

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2. 辛くて甘い、二人の時間①

「……これは一体?クッキー?君が作ったのかい?」


 目の前に差し出されたクッキーを、僕はマジマジと眺めた。

 確か以前、お菓子作り勝負といって彼女が作ったクッキーは美味しかったけれど、しかしどうやら、コレは彼女が作った物ではないようだった。


「いいえ。公平を期すために、うちのシェフに作らせましたわ!」

「うん??」


 彼女は物凄く得意げに説明するけど、今の説明だけでは全くもって意味がわからない。


 けれども、僕が不思議そうな顔でクッキーを眺めていると、彼女はとても嬉しそうにこちらを見ていた。

 僕が先の展開を読めなくて戸惑っている事に喜んでいるのが、手に取るように分かった。


(顔に出てるの、本人は自覚ないんだよね)


 僕は微笑ましく思いながら、彼女の説明を聞いた。


「いいですか殿下。今日はこのクッキーで勝負ですわ!」

「全く意味が分からないけど、一応説明を聞こうか」

「えぇ。こちらは最近使用人たちの間で流行っている遊びなのですが、なんとこのクッキーの中に一つだけ、激辛のピリリの実が入っているのです!それで、クッキーを交互に一枚ずつ食べて行って、激辛クッキーを食べた方が負けなんです。どうです?面白そうでしょう?!」


 物凄く得意げに彼女は説明をした。

 この勝負に物凄く自信を持っているのだろうなと思った。


しかし……

僕は幼い頃から、訓練していたので食べ物の違和感は直ぐに分かってしまうのだ。


(明らかに、一枚だけ他と違うんだよな……)


 このまま勝負しても結果は分かりきっていた。だから僕は、遠回しにこの勝負を退ける事にしたのだった。


「面白そうだけど、いくら君の持ってきた物でも、得体の知れない物は口にできないかな」


 本当は、彼女が用意した物ならば何を食べたって構わないけど、一応は王太子だからそんなことは口には出来なかった。


(まぁ、 こう言えば、きっと彼女も諦めるだろう)


 僕は楽観的にそう考えた。

 しかし、今日の彼女は中々上手で、彼女は事前にちゃんと対策をしていたのだった。


「あ、それなら大丈夫です。全部ちょっとずつ削って、毒見はしてもらってありますから」


(……これ、一枚は激辛なんだよね?……よく毒味通ったな?)


 毒味役は後で問い詰めるとして、僕は目の前で物凄く期待する眼差し向ける彼女を、これ以上退ける事は出来なかった。


「さぁ、殿下が懸念されている毒見問題は解決済みですわ。私と勝負です!」

「まぁ、君がそう言うのなら、付き合ってあげようじゃないか」


 仕方なく僕は、クッキーを一枚摘んで食べた。思いの外美味しかった。

 

「うん。甘さ控えめで素材の味が生きていて、中々美味しいね」

「ええ、それはもう、殿下の好みに合わせて作らせましたから。……じゃなくてですね、どうしてそんな迷いなく食べるんですか?激辛ですよ?!」


 彼女は、僕が迷う素振りもなく、あっさりとクッキーを食べた事に動揺してしまった。


 恐らくきっと、彼女が思い描いてたのは、僕が真剣に悩む姿だったろうなと思ったが、答えが分かりきってるので、それは中々難しかった。


「どうして食べたのかって……君が食べるように勧めたんじゃないか」

「ですが、激辛クッキーが混ざっているのですよ?!何故躊躇しないのですか?!」

「それは、このクッキーがとても美味しそうに見えたからだよ。ほら、君も食べたらいいよ」

「いっ……言われなくても次は私の順番ですからね」

 

 僕は必死に平静を装う彼女が可愛くて仕方なく、思わず微笑みながらクッキーを勧めた。


 すると彼女は必死に平然を装いながら、クッキーを一枚摘まんでパクリと口に頬張ったのだった。

 その瞬間、彼女の表情がパァと明るくなった。


「……あら、本当だわ。甘さ控えめでとっても美味しいわ」

「うん。香ばしくて焼き加減も丁度良くて紅茶によく合うね」

「えぇ、本当ですわ。この紅茶と一緒に食べるとまた味わいが変わりまして……」


 恐らくクッキーがとても美味しかったので、勝負の事など忘れてしまったのだろう。

 彼女は普通に、クッキーとお茶を堪能していた。


 その姿を見て、僕が思わずフフッと笑ってしまったら、彼女はハッとした表情でこちらを見て、取り繕うように、慌てて背筋を伸ばして咳払いをした。


「じゃなくて!確かに紅茶もクッキーも美味しいですけれども、これは勝負ですわ!さぁ、私は食べましたので、次はまた殿下の番ですわ!」

「そうだったね。これは勝負事だったね。君があまりにも美味しそうにクッキーを食べるものだから忘れてしまうところだったよ」

「私の事はいいから、一枚選んで下さいませ!!」


 彼女は、ムキになってクッキーが乗った皿をこちらに押し戻して来た。


 表情がコロコロ変わる彼女は、本当に見ていて飽きなかった。

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