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魔力が無いから王族とは結婚出来ないのに、王太子殿下が婚約者候補から外してくれません  作者: 石月 和花


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53. 打診

 王都に連れ戻されてから三日。

 私はお兄様の監視下の元、屋敷に厳重に監禁されていた。


「全く、アディは油断も隙もありゃしないね……」

「私、当然のことをしたまでですわ」

「どこの世界に、王太子殿下の役に立ちたいからって達人級に迄武芸の腕を磨いて魔物退治に参戦する令嬢がいるかな?!そんな娘が居たら見てみたいね」

「ここに居るじゃありませんか」

「だから、お前意外でね!」


 家に連れ戻されてからというもの、毎日のようにお兄様から繰り返し同じ小言を受けていた。

 本当に毎日毎日同じことの繰り返しなので、もう少しレパートリーが欲しいところだった。


「お兄様、そんなに毎日毎日同じことを言わないでください。ちゃんと大人しくしているでしょう?!」


 大人しくしている……というか、部屋から出してもらえない状況なので、大人しくしているしかなかったので、いい加減部屋の外に出して欲しかった。


 (……私ってそんなに信用無いのかしら……)


 私は恨みがましい目でお兄様を見て無言の圧力をかけてみたが、その想いは届かなかった。

 代わりにお兄様は、私をいたわるように、どこか同情を含んだ目でそっと見つめてきたのだった。


「アディルナ、お前が殿下のお側に居たくて一生懸命なのは分かるけど……」


 お兄様は言いにくそうに言葉を切ると、私の様子を伺いながら話を続ける。


「けど、お前は殿下の隣に婚約者として別の令嬢が立っているのを見ても平気なのか?自分じゃない誰かと殿下が一緒に居る姿を側で見るのは辛くないのか?」


 それは、私の覚悟を試すような問いだった。

 本当の事を言うと、その場面を見たら私は目を背けてしまうだろうとは思った。


 けれど私は目を閉じて、自分に言い聞かせるように凛とした声を上げた。


「私の想いなど、この国の未来を想えば塵と同じですわ」


 胸の奥にある大切な想いを隠したまま、私は微笑んで見せた。


 その時――

 難しい顔をしたお父様が部屋にやってきたのだった。


「アディルナ……と、ウォーグルも一緒に居たか」

「お父様?何か御用でしょうか?」


 お父様の曇った表情から何か良くないことが起きたのではないかと察し、私は急に不安になった。


「お父様、まさか殿下の身に何かあったのですか?!」

 

 この時期に、お父様が深刻な顔で私の部屋に急にやってくるなんて、理由は一つしか思い浮かばなかった。


 私は嫌な想像がどんどんと膨らんでいって、瞬く間に不安が募っていった。


 しかし、どうやら違うみたいだった。


「いや、そちらは全く問題ないと聞いている。無事に黒龍が眠る山に到達したようだ。問題は――アディルナ、お前の身に起こったんだよ」

「えっ……?私ですか?!」


 私はお兄様と思わず顔を見合わせた。どうやら、お兄様も何も聞いていないらしい。


 私たちが戸惑う様子を前に、お父様は実に歯切れ悪く話を始めた。


「……急な話なんだが、隣国エアムードの第三王子の婚約者と、お前に白羽の矢が立ったのだ。」

「何ですって?!」


 本当に寝耳に水の話だった。

 私は頭が真っ白になり、思考が追いつかなかった。


「でも、私は魔力が全くないポンコツ令嬢ですわよ?!」

「向こうの国は魔力よりも、武力が重視される国だからな。その……お前の先日の活躍ぶりで、カラサリス外務大臣が こんなに適任者は居ないと、お前を推したのだよ」


 お父様はとても複雑な顔で私を見つめた。

 するとお兄様が、私を庇うように声を上げたのだった。


「……断れないのですか?」

「エアムードとは、何とも言えない均衡を保っているからな。今回のこの婚約話だって和平協定の一環みたいなものだし、誰かしら高位貴族の娘を送り出さないと話は丸く収まらないだろう」

「もし、誰も令嬢を差し出さなかったら……」

「その時は、両国の関係は悪化するだろうね」


 お父様とお兄様の会話を聞いて、私は自分がこの国の未来を左右する立場に置かれたことを察した。


 私はこの国が好きだから、隣国とは友好的な関係が続いてほしい。

 だけれども、私はロキシード様のお側で彼を支えたかった。


「……少し、考えさせてくれませんか?」


 重苦しい雰囲気の中、今はそれしか言えなかった。

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