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魔力が無いから王族とは結婚出来ないのに、王太子殿下が婚約者候補から外してくれません  作者: 石月 和花
本編

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51. 明かり

 この雨で、かがり火はすべて消えてしまっていた。


 私たちは、暗い夜の中、フォレストウルフの群れと対峙することになった。


 暗い闇の中、あちこちから魔獣と交戦している音が聞こえる。


(相手は夜目が効く魔物に対して、こちらはまだ目が慣れていませんわ。圧倒的な不利な状況、せめて光源があれば……)


 私はローゼリア様の光魔法を思い出していた。ローゼリア様がこの場に居たならば、すぐさま明るい光でこの場を照らしていただろう。


 けれどもローゼリア様はこの場にいないし、私は自分に出来ることを必死に考えた。


(新たに灯りを灯そうにも、みんな濡れてしまって火を付けられないわ……こんな雨の中で光源なんて……)


 ここで私の記憶の奥の引き出しが開いた。この状況を打破できる方法を私は既に知っていたのだ


(そうよ、私にはコレがあったじゃない!!)


 私は、皮鎧とチュニックの下に大事に身に着けていたそれを取り出した。

 ――ロキシード様に貰った、水に塗れると光る雨月結晶のペンダントを。


 服の外に出して雨に濡れたとたん、持っていたペンダントはまばゆい光を放ちだした。

 周囲数メートルほどの範囲が薄暗いが視認できるほどに視界が改善したのだ。


「皆様!!私が光源となります!どうか落ち着いて魔獣と対峙してください!!」


 私は両手に持って上に掲げて、周囲を照らした。

 私は周囲の味方が戦いやすいように、出来るだけ上の方にネックレスを掲げた。


 すると、こちらに気づいたロキシード様が、切迫した表情で、焦りを隠しきれない声をこちらへ向けた。


「アルナ!!それをこっちに放り投げて後ろに下がれ!!」

「大丈夫ですよ!私も兵の一員。魔物になど怯んでいられません!!」

「そういう問題ではない!!」


 ロキシード様がこちらに向かって来ようとしていたが、彼の横を通り抜けようとした二体の狼を相手にして足が止まった。


 その魔獣は殿下を狙ったわけではなく、横を通り抜けようとしていたのだ。

 ――つまり、魔物は私を目掛けていた。


 目立つ存在、目障りな存在が出てきたら真っ先に潰す。

 魔物の本能のようなものだろう。

 光を持っている私は、まさに魔物にとって邪魔な存在だったのだ。


 殿下が数を減らしてくれたとはいえ、見えるだけで三頭の狼がこちらに向かってきていた。


(大丈夫……!フォレストウルフとは戦ったこともあるし!!)


 私は自分に言い聞かせた。


 ……と言っても、冒険者の魔物狩りの一員として参加したことがあっただけで、自分ひとりでの討伐経験はない。ましてや今は三対一だ。怖くないと言ったら嘘だが、怯んでる暇はなかった。


 私は掲げていたネックレスを急いで自分の首にかけ、両手で剣を握った。


(落ち着いてやれば……大丈夫!!)


 私は、こちらに向かって一直線で走ってくる一番手前の個体に対して、抜刀しながら飛び掛かって一撃で仕留めた。そしてそのまま流れるように、すぐ横のもう一匹を薙ぎ払っていなし、二撃目で絶命させる。


(大丈夫、上手くやれてる!!)


 私は飛び出してしまいそうなくらいバクバクと五月蠅い鼓動を静める暇もなく、こちらに向かってくる最後の一匹を迎え撃とうと剣を構えなおした。


 すると……


「アルナ!!大丈夫かっ?!」


 リオルが、フォレストウルフの横腹を強い力で蹴飛ばして、私に加勢に来てくれたのだった。


「リオル!有難う!!」


 この時、私は油断してしまった。

 私の死角ギリギリの右横から迫ってきている個体を認識できていなかったのだ。

 

 不意に、強い力で身体を後ろに引っ張られた。


 その瞬間――


 私の頭があった位置で、フォレストウルフの牙が空を切った。


 そのまま後ろに倒れこむ私は、手を引いた人物――ロキシード様に抱きかかえられて、私を襲ってきた個体から引き離された。


「エルレイン!命令だ!!力の開放を許可する。今すぐフォレストウルフの群れを殲滅しろ!!」

「まったく……こんな雑魚にボクを働かせるなんて、精霊使いが荒いんだから……」


 次の瞬間、エルレイン様は光り輝いて、右手を大きく上に掲げた。


 すると……


 無数の氷の刃が降り注ぎ、あっという間にフォレストウルフの群れを殲滅したのだった。


(エルレイン様が、超高位精霊だったの……?!)


 圧倒的なその力に、誰もが息を呑んだ。


 野営地には静寂が戻り、誰もが安堵していた。

 ……私を除いて。


「……アディルナ」

「あ……ロキシード様……」

 

 私は、倒れこんだ時に後ろから抱きかかえられ、尻餅をついたままの姿勢で、ロキシード様にしっかりと拘束されていた。

 流石に正体がバレてしまったのは明白だった。


「そんな畏まらないで。君と僕の仲だろう?」

「畏れ多いですわ!!」


 私は怖くて後ろにいるロキシード様の顔を見ることが出来なかった。

 だって、絶対怒っているに違いないから。


「また随分と無茶をしたよね。こんな暗闇の中で光源を持って現れたらどうなるかなんて分かるだろう?」

「あの時は、あの場を収めようと必死で……」


 数刻前に同じような会話をしたばかりなのは、さすがの私も気付いていた。

 だから私は、次にロキシード様の口から出る言葉が予測できたし、その言葉を言わないで欲しかった。


 けれども、そんな私の願いも空しく、ロキシード様はとても穏やかに優しい声で、非常な通告を告げたのだった。


「うん。約束だからアディルナ、そろそろ家に帰ろうか」

「……!!」


 その言葉を受け入れたくなくて、私は思わずロキシード様を振りほどいて立ち上がった。


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