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魔力が無いから王族とは結婚出来ないのに、王太子殿下が婚約者候補から外してくれません  作者: 石月 和花
本編

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41. 出発前夜

 その日の夜。

 私は自分の部屋で遠征に持っていく物の最終確認をしていた。


 レイピアに短剣、革鎧とその下に着る防御の加護が付いたチュニック、寝具に防寒具、傷薬や包帯といった応急処置セット、それから食器やタオル等といった必要最低限の生活用品を、私はベッドの上に並べて、一つ一つ丁寧に確認をし、遠征用の鞄に詰めていった。


「お、お嬢様本当に行くのですか?」


 ふと、背後から私を見守っていた侍女のフィオネが声をかけてきた。振り返ると、彼女は胸の前で両手をガッチリと組み、まるで祈るように私を見ていた。


「えぇ。勿論よ。一緒に行かなかったらロキシード様のお役に立てないわ」

「し……しかし、侯爵が許可するとは到底思えません!」

「えぇ。お父様が許可してくださるとは到底思えないから、もちろん黙って行きますわ。だから仮面を付けているじゃない」


 私は自信に満ちた笑みを浮かべて、フィオネにそう説明した。家から抜け出す手筈も準備万端だった。


 しかし、フィオネは納得してくれなかった。


「そんなの、お嬢様が居なくなったと分かったら直ぐにばれますよ!!」


 どうやらフィオネは私が遠征に行くのを不安に思って、なんとかして止めさせたいみたいだった。

 けれども、私はこの遠征を止める訳にはいかない。


 どうしたらフィオネに分かって貰えるか私が悩んでいると、ドアをノックする音が部屋に響いたのだった。


「アディルナ、今良いかな?」


 お兄様が部屋を訪ねてきたのだ。


 私は、部屋にある遠征用の大きな鞄をチラッとみた。これをお兄様に見つかるわけにはいかないのだ。

 私は咄嗟に、ドアの扉の死角に鞄を置いてから、フィオネにドアを開けさせた。


「お兄様、どうされました?」


 私は平然を装ってお兄様を出迎えた。目ではフィオネに扉を開けたままずっとそこに居るように合図する。だってドアを閉めてしまったら、大荷物がバレてしまうから。


「アディルナ、お前明日殿下のお見送りに行かないって聞いたんだけど、本当か?」

「え……えぇ。本当ですわ」


 だって私も一緒に行くからとは言えず、私は曖昧に微笑んで誤魔化した。


 するとお兄様は、心配を隠しきれない顔で私を見つめ、どこか言いにくそうに口を開いた。


「……お前はそれでいいのか?危険な討伐に行くんだぞ?会いに行かなくていいのか?だってお前は殿下のことをあんなに慕って――」

「お兄様。私、今日殿下とお会いして、その時に無事のお祈りも、次の勝負の約束も

してるのです。だから明日は私はお見送りには行きません。殿下の邪魔をしてはいけませんわ」


 お兄様に核心を言われそうになって、私は慌てて言葉を被せた。

 確かに、お兄様から観たら私が殿下の見送りに行かないことは不自然に見えたのだろう。私は必死にそれらしい言い訳でごまかした。


「そうか、お前がそれでよいのなら、もう何も言わないけど……」

「えぇ、お兄様ご心配ありがとうございます。でも、私なら平気ですから」


 お兄様はまだ何か言いたげに私を見つめていたが、私はそれ以上何も言わせないようにニコリと気丈に笑っている振りをした。


 こうして、私はなんとかお兄様の急な来訪を乗り切ったのだった。




「ほらお嬢様。ウォーグル様はあんなにもお嬢様を気にかけてるのですから、やはり隠し通せるなんて無理ですよ!お考え直し下さい!」


 お兄様が帰ると、フィオネは泣きそうな顔で私に訴えてきた。


 確かに、家の中で私のことを一番気にかけてるのはお兄様だった。今みたいに急に訪ねてこられては、私が居ないことが簡単にバレてしまう。


 何か対策を練らないといけないと、私は考え始めた。


 ふと、侍女のフィオネと目が合った。その瞬間、私に名案が浮かんだ。


「……ねぇ、フィオネ。貴女、いざという時の為に、私の影武者になるように訓練してるわよね?」

「え、えぇ……そうですが……」


 フィオネは私が言わんとしてることを瞬時に察して、必死に拒絶した。


「無茶ですお嬢様!絶対にすぐにばれますって!!」

「大丈夫!貴女なら出来るわ!!」

「無理です!!」


 こうして、私は献身的な侍女の協力を得て、無事に遠征に出発できることになったのだった。



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