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魔力が無いから王族とは結婚出来ないのに、王太子殿下が婚約者候補から外してくれません  作者: 石月 和花
本編

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37. 対策と計画

 王太子殿下が黒龍を討つという宣言は直ぐに国中に広まり、国民たちは、殿下の勇気に湧きたっていた。


 完璧王子の異名を持つロキシード殿下なら、本当に黒龍を討ち取れるのではないか、そんな期待が国中に漂っていたのだ。


 けれども、私は到底納得できなかった。


「黒龍を討つだなんて、一体何をお考えなのですか?!」

「何をって、この国の未来だよ。」

「危険すぎますわ!!考えを改めてください!」


 夜会から数日後、いつものお茶会の時間に私はロキシード様に物申していた。


 いくら他にも王子がいるからといっても、ロキシード様はこの国の王太子。その身に何かあってはいけないお人が、自らその身を投げ打つなんて信じられなかった。


 だから私は真剣にロキシード様を諌めたのに、当のロキシード様は、涼しい顔で、全く私の話を聞き入れてくれそうになかった。


「僕はね、常々思っていたんだよ。いつかは元凶である黒龍を倒さなければ、この国に真の安寧は来ないだろうと。歴代の王たちでは敵わなかったのかもしれないが、僕なら、きっと倒せるなと思って」


 確かに、ロキシード様の武芸の才能がずば抜けているのはよく知っている。それはもう、何度となく叩きのめされているから。


 そして魔術の方も、宮廷魔導士よりも大きい魔力をお持ちだと聞いている。

 けれども――


 それでも、私は心配だった。


「思い上がり過ぎですわ!生身の人間が黒龍に勝てますの?!だって黒龍って物凄く恐ろしくて残虐なのでしょう?それに、今まで誰も討ち取れなかったのですよ?!」

「今までは倒そうとしなかっただけで、やってみなきゃ分からないだろう?今は昔と比べて魔術も武器も日々進化しているんだからさ」

「でも……」


 中々納得をしない私を安心させるかのように、殿下は説明を続ける。


「まずはディアナタイト。近年発見されたこの世で最も硬い鉱石。これで作った武器はドラゴン種の魔物の鱗をも傷つけられるんだ。それから、魔術技術も目覚ましい研究成果が出ていて、今まで不可能だった高度な加護の複数同時付与が可能になったんだ。」


 殿下は、落ち着いた声音でさらに説明を重ねた。

 黒龍の生態や弱点について、近年の研究で新たな知見が得られていることなど説明してくださり、これが無謀な挑戦ではなく勝算を持って挑むのだと私にも段々と伝わって来ていた。


「そして、黒龍を討ち取れると思ったのは、これが一番大きい。超高位精霊と契約を結べたんだ」

「まぁ、高位精霊ですの……って超高位精霊?!」


 魔力がない私でも知識としては知っている。精霊自体珍しく、高位精霊でさえ御伽話レベルなのに、ロキシード様は更にその上位の超高位精霊を従えたと言うのだ。


「そう。超高位精霊。まぁ、これについては、君のお陰でもあるんだけどね。」

「私……ですか?私何かしました??」


 急にそんな事を言われても、全く身に覚えがないので、私は首を傾げた。

 今までの人生の中で、自分に精霊との接点は無いはずだ。


 すると殿下は、不思議がってる私の様子に目を細めると、まるで昔を思い返すように、殿下はふっと穏やかな笑みを浮かべた。

 その眼差しには、私だけが知らない何かを抱えているような気配があった。


「昔君が、古文書の解読勝負って持ち掛けてきたことがあっただろう?その時城にあった古文書を僕が読んで見せただろう?」

「確かにそんなことも、ありましたわね」


 確かあの時は、ロキシード様が書物を読み上げると急に強い風が吹き荒れて、私の記憶はそこで途切れて、気が付いたらベッドで寝ていたんだっけ。


 だからあの時何が起こっていたのか、今でも良く分かっていないのだけれども、あの時に”何か”が起きていたのだということは、殿下の口ぶりから感じ取れた。


 そして、とてもさらりと殿下は驚くべき内容を口にする――


「あれが、超高位精霊との契約の書物だった」

「そんなことってありますの?!!」


 私は思わず大きな声を上げてしまった。


(なんて規格外なお人なのかしら、そんな偶然ありえないわ!!)


 ここまで万全に準備を進められていたのなら、本当にロキシード様は黒龍を倒してしまうのでは無いかと思い始めた。

 すると、殿下は更に情報を追加したのだった。


「それに、一人で討つわけではないよ。王宮騎士たちから選抜で隊を組むし、近いうちに武芸大会を開きいて、この大会の上位者も黒龍討伐の供にするつもりだよ」


 武芸大会……それを聞いて、私は瞬時にある考えが脳裏に浮かんだ。


「そ……そうなのですね?武芸大会の上位者を供に付けるのですね?!」

「あ、あぁ……そのつもりだよ」


 胸の奥で、何かが小さく灯った。


 殿下の決意を止めることはできない。そして、私には武芸という特技がある。

 ならばつまり――


 私の中である思いが、ゆっくりと確かな形を取り始めた。


「殿下がそこまでこの国の未来を考えていらっしゃるなら、分かりましたわ!」

「分かってくれたのなら……応援してくれるかい?」

「勿論ですわ!全身全霊を持って、応援致しますわ!!」


 私は心の底からそう答えた。武術大会で上位に入って、お供としてロキシード様を応援するつもりだから。

 ……うん。嘘は言っていない。


 けれども、先程までと打って変わって、生き生きと黒龍討伐を応援する私に、殿下は不信感を覚えていたのだった。


「……君が張り切っていると、何か突飛なことをしでかすんじゃないかと不安ではあるんだけど……」

「殿下が不安に思うことなど何もありませんわ!アディルナを信じてください!!」


 殿下はそれでも私に、疑うような目を向けた。

 その目は「絶対に何か企んでいるだろう」という疑念を物語っていたので、私は真っすぐに殿下の目を見れなかった。

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