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魔力が無いから王族とは結婚出来ないのに、王太子殿下が婚約者候補から外してくれません  作者: 石月 和花
本編

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36. 宣言

 ロキシード様とのダンスが終わり、私は一人、人気の少ない場所に移動していた。

 だって、今の私絶対に人に見せられないくらい泣きそうな顔をしているから。


 だから態々隅の方に移動したのに、お兄様は、目ざとく私を見つけたのだった。


「アディルナ、どうした?お前なんでそんな泣きそうな顔なんだ。殿下に何か言われたのか?!」


 様子のおかしい私を見かねて、一度離れたお兄様が私の側へ駆け寄ってきたのだ。


 私は、お兄様の姿をみて堪えていた感情が一気に込み上げ、思わず視線を落としてしまった。


 そして、ドレスの裾をギュッと掴むと私はお兄様に先ほどの殿下との出来事を伝えた。


「お兄様……殿下はついにお心を決めたみたいですわ。この後大事な事を発表するんですって……」


 平静を装って伝えたつもりだったのに、声がわずかに震えてしまった。


 ふと、顔を上げてみると、お兄様は私の言葉に慰めの視線を向けていた。


「……そうか。……アディルナ、今日はもう帰るか?今すぐ帰れば殿下の発表を聞かなくても済むだろう」


 お兄様は、私を想って今すぐに帰る事を提案してくれた。

 確かに殿下の婚約者が決まるその瞬間に、私は平然としていられる自信が無かったので、この場から去ってしまうのも一つの案では合った。

 けれども、私はこのお兄様の申し出に首を横に振った。


「駄目ですわ。殿下はわざわざ私にこの後のことをおっしゃったんです。私がそれを聞かないのは無礼ですわ」

「しかしだな……」


 お兄様と揉めているその時、大きな銅鑼の音が会場に響き渡った。

 夜会の参加者は、皆一斉に広間の中央に注目する。


 ついに、殿下の宣言が始まるのだ。


 私は、胸の奥がぎゅっと縮むのを感じながらも、そっと背筋を伸ばした。


 本当は聞きたくない。けれど、殿下が「聞いてほしい」と言った以上、目を逸らすわけにはいかない。


 胸の奥で震える感情を押し込め、胸の前で両手をガッチリと組み、ただ真っ直ぐに中央を見つめた。


「本日は、私ロキシード・ルクス・リンクレントの成人の儀にお集まりいただき、心より感謝申し上げる。今日、私はここ皆の前で重大な決意表明を行う」


 いよいよ始まった殿下の宣誓。私は泣きそうになるのを我慢して、殿下のことをしっかりと見つめた。


 すると、気のせいかも知れないけれど、観衆を見つめるロキシード様と目が合ったように感じた。

 私と目が合って、殿下は嬉しそうに目を細めたように見えたのだ。


 それはもしかしたら私の勘違いだったかもしれないけれど、私は益々殿下から目を離せなくなった。


 そして殿下は、一呼吸置くと胸に手を当てて、迷いのない声音で、堂々と言葉を紡ぎ始めた。


「私はこれまで、ある懸念を抱き続けてきた。それは、この国の平和を脅かす“黒龍”の存在だ。何千年にも渡り王族が封印を繰り返す存在。いつ再び目を覚ますか分からぬ状況にある以上、国民の不安は拭えないだろう。ゆえに私は、五年前より黒龍討伐の準備を進めていた。そして、ついにそのための体制が整ったのだ。だから私は、秋の豊穣祭までに必ずや黒龍を討ち果たし、この国に恒久の平和をもたらすことをここに宣言する!!」


 殿下が高らかにそう宣言した瞬間、会場は水を打ったように静まり返った。


 しかし、一人、また一人と控えめな拍手が響き始めると、それは瞬く間に広がり、大広間全体を揺らすほどの大きな拍手の渦となったのだった。


 そんな熱気溢れる会場の中で私は、拍手も出来ずに固まってしまった。


 思っていたのと大分違う殿下の宣言に戸惑い、身じろぎひとつできなかった。


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