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魔力が無いから王族とは結婚出来ないのに、王太子殿下が婚約者候補から外してくれません  作者: 石月 和花
本編

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17. 約束

「……怖い思いをさせて、ごめんね。」


 彼の言葉に驚いて、私は目を見張ってロキシード様を見返した。


「だから、王族はそんな簡単に謝ったりしては駄目ですって!それに、今日の事はロキシード様は何も悪くありませんわ!!なのに、何故……」


 私の悪い癖で勢いのままに口走ってしまったけれども、肝心なところで言葉を止めた。

 これから言う事は、言ってはいけないことのような気がしたからだ。


「何故……?」


 私が言葉に詰まると、ロキシード様は怪訝な顔で聞き返した。じっとこちらを見つめて私の言葉を待っている。


 殿下にはいつも、何もかも見透かされるので、私は誤魔化せないと観念した。

 一呼吸置いてから慎重に、ロキシード様に尋ねた。


「……ロキシード様は、何故あの少年にも謝ったのですか?」


 あの時、走り去る少年に向けて、ロキシード様が小さく”ごめんね”と呟いたのを、私は聞いてしまった。


 王族が平民に謝るなんて本来あり得ないことだし、そもそも、あの状況でロキシード様が謝るような事は何一つなかった。

 だから、”ごめんね”の意味がどうしても分からず、私はずっと引っかかっていた。


「あぁ、聞こえてたんだ?」

「はい。側に居ましたから」


 恐らく聞かなかった振りをするのが正解だったと思うが口から出た言葉は取り消せない。私は真っ直ぐにじっとロキシード様を見つめて、彼の言葉を待った。


 するとロキシード様は、少し悲しそうに笑うと、言葉を選ぶようにゆっくりと話始めた。


「そうだね……あの子が盗みをせざるを得ない状況……貧富の差が広がってしまったのは私たち王族の責任だから……かな。」

「でも、それは殿下のせいではありませんわ。殿下が生まれる前からの問題ですもの」


 何故それでロキシード様が謝るのか、今の説明では全く納得ができなかった。

 だって、貧富の差の問題は、ロキシード様が生まれる前からあることで、殿下に責任があるはずがないのだ。


 けれども彼の考えは違ったのだった。


「そうだね。でもあの子のような困っている民を救えていないのは、王族の長年の失策で、そのツケは子孫の私が負うべきなんだ」

「でも……殿下はまだ子供ですわ。そこまで責任を負わなくても……」

「あの子だってまだ子供だったよ。だけれどもあの子は、生きるために必死だった。それが盗みという悪い事だったけれども――そこに子供も大人も関係ないんだ。だから僕も、子供だからなんて言っていられないよね」


 いつもとは違う、どこか力なくロキシード様は笑った。

 普段全く感情を見せない彼の、本音に触れた様だった。


「アディ。あの謝罪は、あの子個人に向けたものじゃない。あの子のように苦しんでいる人たち全員に向けた言葉で……それと、決意みたいなものかな」

「決意……ですか?」

「そう。僕は、あの子のような子供が居ない国を作るよ」


 真っすぐに力強い目で、殿下はそう宣言された。

 この場には私と殿下の二人しかいないから、宣言というよりかは密談なのかもしれないけれど、とにかく、殿下の壮大な決意は、私の感情を動かしたのだった。


「……殿下のお考え、とても立派ですわ。私、感銘を受けました。」

「ありがとう」

「……私も、あの子のような子が救われて欲しいと思いました。そんな世の中にしたいです!」


 そう、今日の出来事が衝撃的過ぎて、私は、自分があの子にしてあげられることがないかずっと考えていたのだ。


 だから私は、殿下のお考えが自分と同じようなことだと知って、嬉しくてつい大きな声を出してしまったが、ロキシード様は、どこか嬉しそうに私の宣言を聞いていた。


「じゃあ、アディ。一緒にやってみるかい?あの子のような子供を救える国づくりを」

「もちろんですわ!殿下のお考えを実現出来るように、私もお手伝います!」

「約束だよ」

「えぇ、約束します。」

「誓うかい?」

「えぇ、誓います」


 私たちは顔を見合わせると、二人で同時に唱えた。


「『赤い月夜を忘れるな、黒い龍が落ちてくるぞ!』」


 これは、古くから大衆に広まっている大事な約束を交わすときの習慣で、お互いに約束を絶対に忘れないと宣誓する意味を持つ言葉だった。


 だから私とロキシード様は二人で同時にこの言葉を唱えると、顔を見合わせて笑いあった。


 ……と、良い雰囲気で話が終わりそうになったが、私はもう一つの謝罪についても触れずにはいられなかった。

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