-5 宝石
文化祭でM.r草食系男子に選ばれたりした作者。
にぎやかな所より静かな所が好きな作者は、立ち入り禁止の教室でずっと寝てたり、この小説を書いていたりしたら……。
偶然って恐ろしいですね。
通りかかった教師にこの小説書いてることばれましたよ。
弱みを握られた作者は、むなしい気持ちになり、後半を適当に仕上げました。
あぁ。鬱だ。
「話を整理するわね。勝ったほうが相手の高校より何もかもが上位と認められ」
「負けたほうが、この公民館を使えなくなる」
そこら中から不平不満が漏れる。何しろ勝手に騒動の先頭が決めたことだ。民主主義な国であるからにも関わらず、なんたる横暴かと訝しげるのも無理はない。
それでも話は壊れたベルトコンベアーにどんどん持って行かれる。
「じゃあ選手はウチの希我君とそっちの……」
「小松 翔だ。ウチの学校で、一番強いボクシング部だぜ」
「ちょ、荒井さん……!」
すると、あちらの荒井と呼ばれた男子に引っ張られて、気の弱そうな少年が出てきた。俺が知らないと言う事は、一年生だろう。一個下でトップか。どれ程の実力だろう?
「ふーん。そんなチビでも勝てちゃうほど弱いんだ、あんたの所のボクシング部。ざっこ」
また生徒会長がケンカを売る。あーもうこの人は!
しかしその安っぽい言葉に彼ら乗らず。
「……ふ」
一笑に付した。
「な、何よ?!」
「一つだけ言っておくが、
こいつは、強すぎるから、気をつけろよ」
そう言って、奴らは夕闇の奥に消えていった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「大変なことになっちゃったね、希我君」
「いえ……。そんな事よりも、迷惑を掛けてしまい申し訳ありません」
苦笑する鈴木さんを前に、俺はただ頭を下げる事しか出来ない。
「ボクシング勝負か……いつもの事だから、怪我はしないでとは言わないけど、無茶だけはしないでくれよ?」
そう言って、彼はポケットから少し大きめなお守りを取出し、俺に差し出す。
「これは……?」
「さっき家から持って来たんだ。大事な勝負がある時、俺達はいつもこれを手にして戦ってきたんだ。それを持って負けた事はないし、怪我をした事もない」
自慢気に話す鈴木さんは、照れくさそうに笑った。
「そんな大事なお守りを、俺に……?」
「言ってるだろ?君に怪我されると困るんだよ」
何故そんなに気にかけてくれるのか疑問だが、好意である事は確かだろう。素直に礼を言っておこう。
…と思ったら。
「店長不在で店が閉まったら、俺がメイド服少女……もとい、みんなに会えないじゃないか!」
目を釣り上げて俺にどーでもいい事訴えて来た。
……殺してやろうかこの親父。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
とりあえずお守りを受け取り(後で絶対ドブに捨ててやるが)、俺達は店に帰った。客足も戻ってきたので、それからはいつも通りの営業をした。
そして閉店後、みんなで今日の事を話し合う。既にみんなは制服を脱ぎ、それぞれの私服を着ている。
ちなみに、長谷川さんは事態についていけないので、さっさと帰った。まぁあの人は事件にりんごとみかんの収穫シーズンの距離ほどかすってないからな。
「それにしても、アンタ良くあんなへんてこの内容の勝負受けたわね。いつもだったら、すぐキレるのに……」と、エアル。
「……俺なりに、今回の件で、西と東の高校戦争に終止符を打とうかな、なんて思っちゃったり」
「ふん。ヒーロー気取りのミュータントが。調子に乗るんじゃないわよ」
「何で急に禁○目録?」
っていうかそれ、完全に俺を主人公として認めちゃってる発言だぞ。俺には幻想は殺せないが。分かっているのだろうか。…分かっているのだろう。こいつ、ツンデレだから。
「それで、作戦は?決まってるの?」これは架奈だ。
「決まってるには決まってるんだけど……。それは、俺が試合に勝って初めて条件が揃う事なんだよ。だからまずはそこをクリアしてからだな」
「え?教えてくれないの?」
心外そうな顔を俺に見せる架奈。……やめてくれ。心が痛い。
「うーん。あんまお前らがこっちの作戦を知っていても成功しないんだ。俺のプランでは、教えるのは……」
俺は視線を横にスライド。二人の女を見る。
「愛礎と、千沙さんだけだ」
「ほぇ?!」
予想外の展開に驚きを隠せないご様子の愛礎。そして、黒髪ミステリー女はと言うと……。
「……うふふ。当事者様の考えたカス共に制裁を与える作戦に、私も参加できるのね……。うふふふふふふふふふ。うふふふふーーーーーーーーーーーーー♪」
完全に壊れていた。あの人は今回の件が終わるまで、ずっとあのキャラで暮らしていくのだろうか。もし店の客への対応もあんなだったら、クビ宣告の通知も考えねばならない。
「……考えあっての事なの?だったら、第三者のあたしがとやかく言うこともないわね」
そして、架奈は店のドアへと歩き出す。すれ違いざまに「なんかあったら、何でも言うのよ?」と、俺だけに聞こえる声で励ましてくれた。俺は、口の形だけで感謝の言葉を述べた。彼女は満足そうな笑みを浮かべ、ドアを開けて外に出た。蒸し暑い空気が店に充満する。
エアコンの温度を上げようとして、リモコンを見ると、もう既に電子時計は11時5分になっていた。いい加減、みんなを帰らせることにする。
「さて、今日ももう遅いし、これでお開きとしよう」
残りの東高ガールズを帰らせ、店のテーブルの上に乗っかる。……あんま経営者としてはよろしくない格好だが、いろいろありすぎて疲れていて、いすに座るのが面倒だったのだ。意味もなく足をぶらつかせる。
明日からの一週間は、毎日死ぬような練習をしなければならない。店のことは、架奈に任せるとしよう。少し、家電のヤツにも相談するか。まぁどうせ「この電話は現在、使われておりません」になるんだろうが。
「まぁ、あいつには頼らなくていいか。はる姉に電話しとけばいいし。風呂にでも入るべ」
俺はテーブルから降りて、二階へと続く階段がある調理場へと足を進める……。
「希我くん…………?」
「……っつ!」
な、何だこの感覚。で、デジャヴだ。
それがいつのことだったか思い出そうとする、その瞬間。
………ガッ!
何かに足を掴まれた。
「にょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおお?!」
俺は反射的に下を見る!学校の黒いズボンの足首らへんを、少し小さめの手が握り締めていた!耳を澄ますと、女の子のすすり泣きが聞こえた!
「しくしくしくしくしくしくしくしくしくしくしく。」
「な、何してんだよいを!」
今回空気だった、前田いをだった。いないと思ったら、こんなところ(テーブルの下)にいたのか。というか、こいつが公民館の前に行ったのかすら俺は覚えていない。ホント、何してたんだ?
「な、何してんのかなぁ?いをちゃん?」
「ぐすっ。そんなおだてだ調子で言ったって、あたしは許さないよ、希我くん。……忘れてたんだよね?あたしの事」
「い、いや。そんな事ないよ?」
するといをはがばっと体を浮上、俺の股間にヘディングしやがった。俺のダディがぁぁぁぁぁぁぁああああ!
俺が悶絶しながら床をごろごろ這いずり回っていると、いをが一言。
「嘘だっ!」
ひ○らし?
「あたし、呼んでくれるかな?って、ずっと、それも6時間もテーブルの下で、体育座りしながら待ってたのに!何にも言ってくれなったじゃん!」
「うっ!」
「それに帰ってきても今度は架奈とイチャイチャするし!」
「いや、別にそんな……」
「それに、エアル達が帰る時だって、『残りの東高ガールズを帰らせ』とか何とかほざいてたじゃん!」
「え?!ま、まさか俺、またぶつぶつと喋って?!」
「ううん。あたしが地の文読んだだけ」
「それやったら小説的に終わりだろぉがぁあああああああああああ!」
しれっととんでもない事を言いのける2個下の少女に俺は唾をつけんばかりに叫ぶ。しかし、(いつものことだが)いをは引き下がらない。
「大丈夫だよ。きっと「ぴーーーーーー♪」が入るから大丈夫!このことに関しては全くと言っていいほど安心していいんだよ!」
「いいわけあるか!って言うか何?!本気でぴーが入ると思ってんの?!仮に入ったとしてもなんか卑猥な表現使ってるようだろうが!」
「まぁ、それは置いといて」
「何故流す!」
「あと問題あるのは、……希我くん忘れてたんだよね?地の文でも取り扱わないほど」
「うぐっ!」
「……………………………………………」
「……………………………………………」
「…………………………………………………………………てんばつ♪」
「のおおおおおおおおおおおおおおおおんんんんんん!」
俺は、「そういやいをの存在忘れてたわーごめんごめ……ってオドレらなにしとんじゃあああああ!」とエアル達が帰ってくるまで、いをに地獄な時間(いをにとっては至福の時間)を味わいさせられたのである。
明日から忙しいのに、また余計な疲れを背負ってしまった俺だった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「やっと風呂だぜ……」
死ぬほど疲れた俺は、さっさとサッパリして寝るべく、バスルームの扉を開ける。いろいろあったせいか汗でべたべたになったT-シャツやらジーンズやら上着やらパンツやらを脱ぎ、ドラム式洗濯機にダストシュート。がこんと音がしたのを確認した俺は、オマール海老みたいな名前の洗剤を適量注ぐ。ふたを閉めて、洗濯機の電源をオンにし、テキトーな操作をして洗濯機をまわす。
「ふぅ……ってやべぇ!お守り入れたまんまじゃん!」
俺は素っ裸なのも考えず即刻洗濯機を止め、中からジーンズを引っ張り出す。ポケットの中には、真っ白な生地に真っ白な刺繍が施されたお守りが、水浸しになって出てき……ん?
なんか、青いのが透けたような……。
俺は失礼を承知で紐で硬く結ばれた布袋を開ける。そこには、定番の硬い紙と共に、
青く光るサファイアがはめ込まれた指輪があった。
「……これ、高いモンなんじゃ……」
俺は宝石とかの知識はまったく無いが、この形、光、それぞれを考慮しただけでも、これが高いもだと感じさせられた。しかも指輪の裏部には「S.to.K」の文字。うん。高いだけじゃなさそうだ。
(これ、俺が持ってていいのかな……)
――――――――――仕方が無い。
返しに行くか。
……でもまずは風呂だ風呂!ひゃっほう!
ざぶーん。
橘家の浴室で、湯が勢い良く撥ねる中、空では怪しげな濃い黒の雲がゆっくりと近づいていた。
ゆっくり、ゆっくりと。分厚い停滞前線は、人々の明るさをみるみる奪っていく。
いまさらながら、ちょっとご意見を伺いたいのですが。
この小説に出てくる「前田 いを」。名前が文章だと、とっても読みにくいです。
なんとか読みやすい方法募集中です。