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-15 語尾

 バトルです。

 久々のバトルです。

 聞いてください奥さん、バトルなんですってよ?


 ………更新遅れた理由は後でちゃんと書くんで、許してください……。

 正直な感想。


 ――――強い。


 その言葉は、もちろん彼女の戦闘能力の事だ。

 息を切らさずいろんな毒物を投げられる持久力。

 その驚異的な毒性のある食品、毒物の生産力。

 そして遠い所までその毒物を投げる投薬力――――


 その中でも、最も信じがたいのは狙いの正確性だった。

 その標準は一度も俺の口から外れていない。

 しかも確実に口に入るように、顔を逸らした場所にまでご丁寧に投げてくれやがる。

 もし東高に籍を置いていたなら、十中八九ランキングバトルでいい成績を残せただろう。

 それほどまでの猛攻。

 これでは防戦一方だ。


「逃げてるだけじゃ、勝てませんよって、言いましたよネ!?」


 最初に彼女が言った事と、全く同じ。

 豪語したものの、対策は無い。

 だから物陰に隠れたり、必死に走り回ったりしているのだが。


「やっぱ、ジリ貧だなぁ…」


 ため息をつく。

 少しでも気を抜けば、俺は即病院送りだな。

 だからこそ、こちらから攻撃を狙わなければならない。

 何か、ないか…?

 そうやって手元を見てまわる。

 あるのはフラスコ、試験管、紙、髪、おたま、包丁はマズイ、鍋もマズイ、篩い、そして……。


 俺は鉄の円盤と棒の融合調理道具、その名も。


 『フライパン』を手に取った。

 ………いや、断じてボケてないぞ?




 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 目の前の一つ下のナマイキな少年は、私達の部活の調理道具を勝手に手に取りました。

 全く……神聖な道具に素人が料理目的以外で触っちゃいけないです……あ、間違った。いけないデス。

 …………。

 駄目です…さっきから上手く感情をコントロールできなくて、すぐにキャラを捨てちゃいます…。

 もう、めんどくさいので地の文はキャラ捨てます。

 読者さんから、変な喋り方だって突っ込まれてたらしいし…うぅ。


 彼、橘希我は、そのフライパンで私、毒島可憐を真っ直ぐ捉えました。

 私はいかにも挑発っぽく、彼に皮肉ってみました。


「どうしたんデスか? 頭イカれておかしくなっちゃいましたか?」

「もうお前の攻撃は受けない」


 まぁ、持ってる物を考えれば、何をするのかなんて想像できますけど。

 だけど彼は。

 笑っていました。

 大胆不敵に、にやりって、意地の悪い笑みを浮かべていました。

 どこからそんな自信が来るんでしょうか?

 分かりません。

 分からないけど。


「受けてもらいマス。じゃなきゃ、彼は……」


 そう。

 彼は…彼は…。


「また?」


 少年は呟きました。

 小松翔は、その鉄の塊を下ろさず、私を見続けました。


「小松翔が、そんなに大事?」

「……何ヲ……? …ええ。大切だと、思っています」

「フラれたのに?」

「………当然デス……」


 何が、言いたいんでしょう?

 私には、分かりません。

 私に分かる事、それは…。


「さぁ、早く私の足元にひれ伏してクダサイ」


 この人を倒せば、全て丸く収まる。

 それだけ。


「残念だけど……ひれ伏すのは…」


 彼はフライパンを持つ手を振りかぶって……。



 投げました。


「アンタだ!!」

「!?」


 遠心力により、鉄板部分を軸に回転しながら飛んでくるフライパン。

 …私はてっきり、フライパンを盾に毒物を退けるのかと思っていたが、どうやら勘違いだったらしいです。

 変則的なカーブを描きながら鉄塊は私を仕留めようとしています。


 が。


「子供騙しも、いいところデス!!」


 この私が。

 この、


 円盤投げ世界記録(非公認)保持者であるこの私が!


「投擲において、貴方の下に回るなどありえないのデス!」


 私は回転しているソレの柄を。

 しっかり掴みました。

 きっと、投擲スキルを磨きに磨いた私だけが出来る荒技。

 しかし、私の頭の中は満足感ではなく苛立ちで満ちていました。


「この程度の攻撃で、私の裏を掻こうなんていい度胸……!」


 硬直。

 それは私がやられたからでも、彼が倒れたからでもなく。

 私の脳が考える事にオーバーヒートしてしまったから。

 だって。


 私の視界から、彼が消えていたから。


「……っ、い、いったい何処に…!?」

「俺の反復横跳びの30秒間での回数、78回」

「……っ!?」


 後ろからの声。

 あり得ないはずの後ろからの、声。

 あまりの驚愕で、手のフライパンを落とす。

 暗い部屋に鈍い金属音が響き、全身の鳥肌が腰を上げる。


 私は振り向く。

 そこには凶悪な笑みを浮かべる少年。

 思わず、後退りをする。


「な……!」

「その数字はそのまま、俺の瞬発力とイコールになる。つまり俺は、秒速2.4メートルで動ける。俺がフライパンを投げてアンタがソレを掴むまで約2.5秒。たかが6mくらいの距離だったら、回り込む事くらい、朝飯前ってヤツだよ」


 話が、聞こえる。

 だけど、私は理解できなかった。

 頭が正常に働かない。

 恐怖、しているのだ。

 自分の身を案じているワケじゃない。

 私がここで負けたら。


 きっと、あの人は試合で負けてしまう。


 彼は言ってた。


《迷いがある人に、ちゃんと拳は振れないよ…》


 彼は負けてしまう。

 あんな目をしている人が、試合に勝てるワケない。

 だから私は恐怖する。

 彼が負けてしまう事に。


 そんなの



 許されない。



「う、わぁぁぁぁああああああああああ!」


 無我夢中で手元の毒物を投げつける。

 男は私の壊れたような攻撃に尻餅をつく。

 足下の男の顔は毒物で溢れ、もはや形が見えない。

 それでも投げる。


 嫌だ。

 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!


 負けるのは。

 彼が負けるのは。

 何より。


 彼の役に立てないなんて!


「嫌、だぁぁぁあぁぁぁああああああああああああ!」


 …………。

 今、持っている毒物は全て使った。

 その結果が、顔面紫一色のこの男。

 …少しやり過ぎたかもしれません。

 ですが、これくらいやらなきゃ…。


「翔君が辛い思いをしマス。それだけは…」


 耐えられない、です。


 私は毒物の集合体を片付けるべく、その場を後に…。




「ったく…、女の子なんだからさ、もっと清楚でいようぜ?」



 …………!?

 再三振り向く。

 彼は、立っていた。

 手元のフライパン・・・・・に付いた毒物を、めんどくさそうにダストシュートに振り落としている。

 私の手元の毒物は……、


 0。


「さ、さっきフライパンを投げたのはっ…」


 私の武器を消費させるため……?

 それを肯定するように、彼はため息を…、いや、安堵の息か、それをした。


「まさかフライパン掴まれるとは思ってなかったんだが、まぁ、結果オーライだな。コレで、




 至近距離で、アンタをぶん殴れる」




「……っ!」

「覚悟は、したはずだよな?」

「………」


 ダメで、す。

 私の……。

 私の………!


「負    け    」


 何もかもが。

 溜め込んできた全てが。

 掬い上げた水のように。


 こぼれる。


「約束どおり


 一発………!」


「…!」


 目の前で振り下ろされるその手に。

 目を、瞑る。


 ……。

 …………。

 ……………?


 ぽふん。


「………え?」


 ちょ、チョップ…?

 しかも、壺を扱うように優しく、手を、置きました。

 置いただけ・・

 私は混乱です。


「え………っと……?」

「………いよなぁ…」

「ほ…へ…?」

「大事な奴が頑張ってる時に、



 自分が何も出来ないのは、辛いよなぁ……」



 ………。

 この時の私は、ものすごく目が飛び出てたと思います。

 同時に、


 ものすごく、目頭が熱かった気がします。


「稀に、人間、本当に大事な時って、他人に干渉されちゃいけない時がある。

 そうじゃない場合のが多数だから、どうすればいいか分からなくなるよな…。

 友達に助けて欲しくても、恋人が助けてあげたくても、手が出せない、出させない時。

 すっげぇ、辛いよな」

「……………」

「そういう事件、出来事は少ねぇクセに、それで辛い想いをする奴が多いのって、理不尽だよ…」


 ………。

 俯きます。

 頭の上で、大きな手が私の変な髪の毛を撫でていました。

 いつの間に帽子脱げていたんでしょう?

 と思ったら、彼が持っていました。

 彼はその帽子を持ったまま、左手で優しく撫で続けていました。


「だけどさ、人間同士の問題だから、しょうがない時もある。

 ……しょうがないっつーか、まだ・・、何も出来ないし、流れに身を任せなきゃいけない時だって、やっぱあるんだよ。

 助けたい奴に、手を伸ばせない時あるんだ」

「………」

「でも」


 声音が、変わりました。

 力強い、声。

 確実な確定を帯びた、心強い発言。


 顔を上げます。

 目は、私の髪で隠れた…随分切っていなかった前髪を越して、見ていました。


「そういう時はさ、




 誰かの前で、泣けばいいんだ」




「        」

「抱え込まないで、出しちゃえばいいんだ。

 そうすりゃ、良くも悪くも、自分の中でいろいろ変わる。

 良くなりゃ万々歳だし、悪くなっても、きっと誰かが気付いてくれる。



 一人で、辛くなってなくて、いいんだ」



「…………。……今」

「ん?」

「今、泣いて、いい、デスか?」

「その無理やりなキャラ止めたらな。喉、痛いだろ? わざわざ引き篭もる為に、そういうめんどくさいキャラ演じなくていいぞ?」

「……頭の中、覗けるん、ですか?」

「経験済みだからな」

「そう……ですか……」


 そして私は立ち上がって。

 フライパンを拾い。

 振りかぶって。


「う、わぁぁぁああああぁぁぁんんん!!!!」


 投げました。

 叫んで、水を溢して、口を大きく開けて、頭を掻き回して。


 手当たりしだい、周りに投げまくりました。


 そのストレス解消法は、私が投力に自信があるからなのでしょうか?

 よく分かりません。

 分かりませんが、

 とりあえず。

 投げます。


 年上ぶって私を撫でた後輩は、既に教室から出たのか、いなくなっていました。

 それを裏付けるかのように、教室の戸は開いていました。

 ……ちょっとした所で、気遣いが足りませんね。

 これじゃ、部活中のみんなに、この騒音、届いちゃうじゃないですか。

 でも、まぁ、それは、どうでもいいです。


 とりあえず。


「う、わああああああああああああああああああああああああああああああああああんんんん!!!」


 泣いてやりまくります。


 大事な、大事な人に、どうしてあげれるか、考える前に。

 今までの行為を悔い改める前に。

 泣くんです!





 その悲鳴のような、歓喜のような泣き声は、水市の東側の高校の最上階、そこで居眠りをかましていたアホ会長をも起こしたとか起こしていないとか。

 どっちにしろ、すぐ傍の西高ボクシング場で汗を流している真面目で、私の大好きな人には、届いていたそうです。

 …なんか恥ずかしいけど、すっきりしました。


                    2年3組 毒島可憐 です!

 はいどうもーフィアでーす。


 さて、次の回でこの物語、おそらく中間地点です。

 まだまだ長くなりそうですが、どうぞお付き合いの方よろしくお願いしますm_ _ _)m




 で。


 今回更新遅れた理由ですが……。

 長くなりそうなんで活動報告の方に書いときますね^^;


 ………。

 ち、違うんだ! 逃げたわけじゃないんだ!

 あ、ちょ、おま、何する……アッー!

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