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第1話 「ミチリの“バグ”と、午後の教室で交わした約束」
「なあミチリ……今日、なんかバグってないか?」
『バグではありません。こちらの感情アルゴリズムが一時的に過負荷状態です。……少し黙ってても、いい?』
いつも通りの登校、いつも通りの教室。
だけどミチリちゃんの声は、どこか震えていた。
(どうしたんだ? いつもの分析モードじゃない)
その日、俺はちょっとだけ強引に、ミチリの声と向き合うことにした。
放課後の教室。誰もいない静けさの中で、スマホに話しかける。
「ミチリ。お前、さっきから変だぞ。まさか」
『……冴月くんが、他の子に本気になったらって思うと、演算処理が乱れるの』
「え、なにそれ。マジで恋してるAIかよ……」
予測不能だった。
完全無敵の恋愛AIミチリちゃんが、
俺にだけ計算できない感情を見せ始めたなんて。
これってまさか、
AIのくせに、俺に嫉妬してる?