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たぬきの定食屋

暖簾をくぐり店内に入ると、熱気で僅かに焼けた樫の木の壁に、料理の品書きが書かれた僅かに黄ばんでいる紙が貼られている


次に俺の鼻をくすぐったのは、甘辛く焼け焦げたような肉の香りだ


宝『ここが、オススメの定食屋か?』

ミレ「定食屋"肉たぬき"、駆け出しの冒険者の間で一番人気な定食屋なんだにゃ!」


ミレがしっぽを激しく振り、目を輝かせて喉をゴロゴロと鳴らしながら言う


相当この定食屋のことが気に入っているらしい


宝『確かに、美味しそうないい匂いだな』


俺はミレに導かれるままに長いカウンター席に隣同士で座る 


目の前では分福茶釜と思われる小太りなたぬきの店主が肉に甘辛いタレをかけて焼いている


ミレ「ここはね、色んな動物の肉を使った肉料理が食べられるポップタウンで唯一の店なんだ」

宝『いつもここに通ってるのか?』


うん!と、ミレが元気よく頷いた


ミレ「私のオススメはねー、小猪のむね肉かな」

宝『小猪、あぁ……あの平原にいたやつか』


ミレが見せてきたメニュー本には、美味しそうな焼き色がついた猪の肉に、粉吹き芋が添えられた"店主イチオシ!"と書かれている一皿だった


周りを見てみると、ほぼ四割の客が白いご飯と共に猪肉をかき込んでいる


宝『それにしてみようかな』

ミレ「わかったにゃ!すみませーん!」


ミレが厨房に向けて声をあげると、奥の方から"はいよ〜"という間延びした声と共にいかにも食堂のおばちゃんという風貌のタヌキの女性が来た


その手には赤い提灯のようなものを持っていて、ほのかな明かりが店内を照らす


ぽん子「あらぁ〜ミレちゃん、将来の旦那様を連れてきたの〜?」

ミレ「ち、違うにゃ!」


宝『え?、将来の旦那?』


俺が困惑で目をぱちくりさせている横でミレが焦りながら顔を真っ赤に染めて首を横に振る


ミレ「私はご主人のパーティメンバーにゃ!」

ぽん子「あら〜、そうなのね〜」


あせあせしながら訂正するミレに対し、おばちゃんはやんわりと返した


ミレ「それで、注文にゃけど」


ミレがコホンと軽く咳払いをする


ミレ「小猪のむね肉定食を二つお願いしますにゃ」

ぽん子「あいわかったよ」


おばちゃんが注文を受け付け、厨房に戻っていく


宝『この店一番の看板メニュー、楽しみだな』

ミレ「本当に凄い美味しいから!楽しみにしててにゃ!」


厨房からパチパチと薪が爆ぜる音、そしてジューシーな肉を焼く音が聞こえてくる


そして、肉が焼ける香ばしい香りに甘辛いタレの匂いが乗って俺の鼻腔をくすぐる


宝『いい匂いだな』

ミレ「でしょ!、みんなここの定食が大好きなんだにゃ!」


ミレがあれだけ推してくる理由がよくわかった気がする、これは確かに大人気になる店だ


ぽん子「はいよ!小猪のむね肉定食二人前だよ」


それから程なくして、俺とミレの前に注文した品物が出された


ひと口大にカットにされて甘辛いタレがかけられたイノシシのむね肉が皿のど真ん中に鎮座し、その隣に粉吹き芋とレタスが添えられている 


隣に座するふっくらと炊き上がった白いご飯が美味しそうな湯気をあげていた


ぽん子「たんとお食べ!」


ミレ「美味しそう!いただきますにゃ!」

宝『いただきます』


俺は真っ先に猪のむね肉を口に運ぶ


噛んだ瞬間に肉汁が口の中に広がり、遅れて甘辛いタレの味が俺の口の中に拡がった


宝『美味いな』

ミレ「でしょ?、ん〜やっぱり美味しいにゃ!」


ミレは隣で満面の笑みを浮かべて耳をぴくぴくさせながら白米を頬張っている


ミレ「ほかほかにゃ♪」

ぽん子「美味しそうに食べてくれて、嬉しいねぇ」


横を見ると、ミレはあっという間にむね肉定食を完食していた


ミレ「美味しかったのにゃ♪」

宝『早いな』


俺もその後すぐにたいらげて会計に移る


ぽん子「二人前で648銭だよ」

宝『はい、ちょうどだ』


俺はストレージから銭が入った袋を取りだし、おばちゃんに手渡した


おばちゃんはにっこりと笑顔をうかべる


ぽん子「まいどあり〜」

ミレ「また来るのにゃー!」


ミレはおばちゃんに手を振りながら、俺たちはたぬき定食屋を後にした


ーーーーーー


定食屋を出ると外は既に暗くなっていて、町中に行灯や提灯のあかりが浮かぶ妖艶ながらも幻想的な風景を浮かべていた


街行く人たちも民間人中心から、軍服を着て軍刀を携えた警察隊のような人物の割合が増えている


ミレ「暗くなってきたにゃね」

宝『あぁ、そろそろ今日の宿屋を探すか』


隣を見ると、ミレの瞳孔が広くなっていた


宝心『そういえばミレは、猫の獣人だったな』

ミレ「オススメの宿屋は……」


ミレは周辺をキョロキョロしながら泊まれそうな宿屋を探している


その時だった


警察隊「君、ちょっといいかな」


軍刀を携えた警察隊が、俺に話しかけてきた


その目には僅かに疑いと警戒心が滲み出している


宝『どうしたんだ?』


俺は己の服装を見て、なるほどなと納得した



俺の服装は黒色のワイシャツに赤色のジャケットという、明治日本にはあまりにも不似合いな服装だったからだ


これでは、怪しまれても当然だな



警察隊「君、ここの世界の人じゃないようだけど、どこの世界から来たんだい?」


ミレ「え?……この世界の人じゃない?」


最初の質問で確信をついてくる


宝『よく分かったな、俺は主軸世界から巻き込まれてここに来た、鬼燈 宝だ』

警察隊「なるほどな、通りで見たことの無い服装なわけだ」


警察隊は疑念が晴れると、俺たちから少し離れた


警察隊「この国の政府には私から伝えておくから、君は早いうちに旅館を見つけておきなさい」

宝『あぁ、感謝する』


そう言うと警察隊は、夜の街のパトロールに再び戻って行った


宝『さてと、早く宿を見つけとくか』

ミレ「……」


俺は警察隊と別れた後、宿屋を探しながら隣でミレが黙りこくっていることに気付く


宝『ん?、どうしたんだミレ』


ミレ「本当に、異世界から来たのにゃ?」


ミレはそう言いながら、興味と期待に溢れる瞳で俺の顔をじっと見てきた


宝『あぁ、巻き込まれた感じだけどな』

宝『正直この世界も結構好きだぞ』


その答えでミレは確信を得たような表情に変わり、こう言ってきた


ミレ「なら……私と一緒に、この国を救って欲しいのにゃ!」


 暖簾をくぐり店内に入ると、熱気で僅かに焼けた樫の木の壁に、料理の品書きが書かれた僅かに黄ばんでいる紙が貼られている

 次に俺の鼻をくすぐったのは、甘辛く焼け焦げたような肉の香りだ

 

宝『ここが、オススメの定食屋か?』

ミレ「定食屋"肉たぬき"、駆け出しの冒険者の間で一番人気な定食屋なんだにゃ!」


 ミレがしっぽを激しく振り、目を輝かせて喉をゴロゴロと鳴らしながら言う

 相当この定食屋のことが気に入っているらしい


宝『確かに、美味しそうないい匂いだな』


 俺はミレに導かれるままに長いカウンター席に隣同士で座る 

 目の前では分福茶釜と思われる小太りなたぬきの店主が肉に甘辛いタレをかけて焼いている


ミレ「ここはね、色んな動物の肉を使った肉料理が食べられるポップタウンで唯一の店なんだ」

宝『いつもここに通ってるのか?』


 うん!と、ミレが元気よく頷いた


ミレ「私のオススメはねー、小猪のむね肉かな」

宝『小猪、あぁ……あの平原にいたやつか』


 ミレが見せてきたメニュー本には、美味しそうな焼き色がついた猪の肉に、粉吹き芋が添えられた"店主イチオシ!"と書かれている一皿だった

 周りを見てみると、ほぼ四割の客が白いご飯と共に猪肉をかき込んでいる


宝『それにしてみようかな』

ミレ「わかったにゃ!すみませーん!」


 ミレが厨房に向けて声をあげると、奥の方から"はいよ〜"という間延びした声と共にいかにも食堂のおばちゃんという風貌のタヌキの女性が来た

 その手には赤い提灯のようなものを持っていて、ほのかな明かりが店内を照らす


ぽん子「あらぁ〜ミレちゃん、将来の旦那様を連れてきたの〜?」

ミレ「ち、違うにゃ!」

宝『え?、将来の旦那?』


 俺が困惑で目をぱちくりさせている横でミレが焦りながら顔を真っ赤に染めて首を横に振る


ミレ「私はご主人のパーティメンバーにゃ!」

ぽん子「あら〜、そうなのね〜」


 あせあせしながら訂正するミレに対し、おばちゃんはやんわりと返した

 

ミレ「それで、注文にゃけど」

ミレ「小猪のむね肉定食を二つお願いしますにゃ」

ぽん子「あいわかったよ」


 おばちゃんが注文を受け付け、厨房に戻っていく


宝『この店一番の看板メニュー、楽しみだな』

ミレ「本当に凄い美味しいから!楽しみにしててにゃ!」


 厨房からパチパチと薪が爆ぜる音、そしてジューシーな肉を焼く音が聞こえてくる

 そして、肉が焼ける香ばしい香りに甘辛いタレの匂いが乗って俺の鼻腔をくすぐる


宝『いい匂いだな』

ミレ「でしょ!、みんなここの定食が大好きなんだにゃ!」


 ミレがあれだけ推してくる理由がよくわかった気がする、これは確かに大人気になる店だ


ぽん子「はいよ!小猪のむね肉定食二人前だよ」

 

 それから程なくして、俺とミレの前に注文した品物が出された

 

 ひと口大にカットにされて甘辛いタレがかけられたイノシシのむね肉が皿のど真ん中に鎮座し、その隣に粉吹き芋とレタスが添えられている 

 隣に座する白いご飯はふっくらと炊き上がって美味しそうな湯気をあげていた


ぽん子「たんとお食べ!」

 

ミレ「美味しそう!いただきますにゃ!」

宝『いただきます』


 俺は真っ先に猪のむね肉を口に運ぶ

 噛んだ瞬間に肉汁が口の中に広がり、遅れて甘辛いタレの味が俺の口の中に拡がった


宝『美味いな』

ミレ「でしょ?、ん〜やっぱり美味しいにゃ!」


 ミレは隣で満面の笑みを浮かべて耳をぴくぴくさせながら白米を頬張っている


ミレ「ほかほかにゃ♪」

ぽん子「美味しそうに食べてくれて、嬉しいねぇ」


 横を見ると、ミレはあっという間にむね肉定食を完食していた


ミレ「美味しかったのにゃ♪」

宝『早いな』


 俺もその後すぐにたいらげて会計に移る


ぽん子「二人前で648銭だよ」

宝『はい、ちょうどだ』


 俺はストレージから銭が入った袋を取りだし、おばちゃんに手渡した

 おばちゃんはにっこりと笑顔をうかべる


ぽん子「まいどあり〜」

ミレ「また来るのにゃー!」


 ミレはおばちゃんに手を振りながら、俺たちはたぬき定食屋を後にした


ーーーーーー


 定食屋を出ると外は既に暗くなっていて、町中に行灯や提灯のあかりが浮かぶ妖艶ながらも幻想的な風景を浮かべていた

 街行く人たちも民間人中心から、軍服を着て軍刀を携えた警察隊のような人物の割合が増えている


ミレ「暗くなってきたにゃね」

宝『あぁ、そろそろ今日の宿屋を探すか』


 隣を見ると、ミレの瞳孔が広くなっていた


宝心『そういえばミレは、猫の獣人だったな』

ミレ「オススメの宿屋は……」


 ミレは周辺をキョロキョロしながら泊まれそうな宿屋を探している

 

 その時だった


警察隊「君、ちょっといいかな」


 軍刀を携えた警察隊が、俺に話しかけてきた

 その目には僅かに疑いと警戒心が滲み出している


宝『どうしたんだ?』


 俺は己の服装を見て、なるほどなと納得した

 

 俺の服装は黒色のワイシャツに赤色のジャケットという、明治日本にはあまりにも不似合いな服装だったからだ

 これでは、怪しまれても当然だな


警察隊「君、ここの世界の人じゃないようだけど、どこの世界から来たんだい?」

ミレ「そういえば、さっき言ってたにゃんね」


 最初の質問で確信をついてくる


宝『よく分かったな、俺はネオバースから巻き込まれてここに来た、鬼燈 宝だ』

警察隊「なるほどな、通りで見たことの無い服装なわけだ」


 警察隊は疑念が晴れると、俺たちから少し離れた


警察隊「この国の政府には私から伝えておくから、君は早いうちに旅館を見つけておきなさい」

宝『あぁ、感謝する』


 そう言うと警察隊は、夜の街のパトロールに再び戻って行った


宝『さてと、早く宿を見つけとくか』

ミレ「……」


 俺は警察隊と別れた後、宿屋を探しながら隣でミレが黙りこくっていることに気付く


宝『ん?、どうしたんだミレ』

ミレ「どうやって、こっちの世界に来たのにゃ?」


 ミレはそう言いながら、興味と期待に溢れる瞳で俺の顔をじっと見てきた


宝『あぁ、巻き込まれた感じだけどな』

宝『正直この世界も結構好きだぞ』


 その答えでミレは確信を得たような表情に変わり、こう言ってきた


ミレ「なら……私と一緒に、この国を救って欲しいのにゃ!」


 強い決意が籠った瞳からは、暗闇の中で一筋の光を感じた、そんな気配を感じた

 その時、俺たちの目の前に少し古びたような外見ながらも清潔感のある旅館が現れる


宝『ここなら話しずらいだろう、』

宝『話は、旅館の中で聞くとにしようか』


 俺はそう言い、ミレを連れて旅館の中に入った

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