表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/66

灼炎の闘牛


 深い闇の中に、ミレとレイラさんの姿が消えた。


「宝! もう一回来るよ!」

 麗華の声が弾けると同時、空気が焦げつく。灼蝸魔が咆哮とともに突進してきた。


「お前は一回……退けッ!」

 ミレたちを助けたい一心で、俺は振り向きざまに妖力を左拳へ集中させる。

 燃え上がるような妖気を纏い、振り抜いた拳が灼蝸魔の額を撃ち抜いた。

 

 骨の砕ける鈍音。衝撃波が周囲の岩壁を裂き、巨体が吹き飛ぶ。

 灼蝸魔は壁に叩きつけられ、瞳の光を完全に失った。


「灼蝸魔を……一撃で……」

「やっぱり規格外だね、宝」

 その光景にリナは目を見開き、麗華が息を呑む。だが俺はもう敵を見ていなかった。


 迷宮全体に妖気を巡らせ、ミレたちの位置を探る。

(妖力をダンジョン全体に伝え……振動と気配で……!)

 だが、感知はすぐに濁った。何かが干渉している。


「宝……ミレちゃんたちは?」

「ダメだ。璃炎の妨害結界が妖域全体に張られてる。気配が紛れて、特定できない」

 麗華が唇を噛み、視線を落とした。


 だがリナだけは鋭いまま、静かに辺りを見渡していた。

「……宝様。まだ潜んでいます」


 その声に俺と麗華が同時に構える。

 次の瞬間、マグマの壁を三体の灼蝸魔が突き破って出現した。

 溶岩を滴らせながら、獣のような殺意を全身から噴き出している。


「さっきより……格上ね」

「オーラが違うな。ここで時間を取られるわけにはいかない、合わせてくれ麗華」


 俺は炎を纏わせた大剣を構えた。

「一撃で突破するぞ」

「そう言うと思ったよ!」

 麗華が笑い、俺と同時に飛び出した。


 灼蝸魔――最上妖。その強度は軍の最新兵器を一斉照射しても倒せないとまで言われる。

 それを三体同時。常人なら絶望する場面だが、麗華となら行ける。


「はぁあッ!」

 大剣を振り下ろす。火焔が渦を巻き、一体目の額を粉砕した。

 灼熱の衝撃波が周囲を包み、壁のマグマが飛沫のように舞う。


 残る二体の灼蝸魔が怒りに吠え、角を赤熱化させた。

 熱気で空気が歪む。だが、俺の隣には、麗華がいる。


「ゼロタイムで突撃しないと、お前ら死んだぞ?」

 軽口を叩きながら、麗華は俺の頭上を飛び越えた。

 灼蝸魔の真正面に舞い降りる。


「――隙だらけ!」

 閃光のような剣閃が走る。

 花びらの舞うような美しさと共に、正確無比な連続突きが急所を貫いた。

 瞬間、二つの巨体が糸が切れたように崩れ落ちる。


「流石ね、二人とも」

 背後で増援の熱人形を魔法で焼き払ったリナが感嘆の声を漏らす。

 俺たちの奮闘で、追撃していた妖怪の群れは完全に沈黙した。


「えへへ〜、それほどでも〜」

 麗華が笑い、剣を肩に担ぐ。


「これで……気配感知がやりやすくなったはず」

「そうだな。もう一度試してみる」


 俺は目を閉じ、再び妖力を巡らせる。

 意識を広げ、迷宮の奥の奥――そのさらに向こうへ。

 静寂の底で、二つの微かな光が感じ取れた。


「見えた……! レイラさんとミレだ。場所は――大広間の前」

「ほんと!?」

 麗華の顔がぱっと明るくなる。


「だが、酷く負傷してる。時間がない」

「大広間……つまり璃炎と遭遇した可能性が高いってことね」

 リナが唇を結び、低く呟く。


「トラップでそのままボス部屋に飛ばされたってことか」

「その可能性が高い。どちらにせよ急ぐぞ。妖力サーチをオンにしたまま――一直線だ」


 俺は烈火を纏い、地面を蹴りつけた。

 轟音と共に岩盤の壁を突き破り、一直線に駆け抜ける。


「何度見てもすごいパワーだね」

「これが俺の取り柄だからな」


 迷宮の壁はこの世界でも最硬クラスの強度を誇る。

 だが、俺の突進はそれを易々と粉砕していく。

 焦燥感が胸を灼く。


(頼む……生きていてくれ、レイラさん、ミレ……!)


 獄炎の迷宮を駆け抜けながら、俺は祈るように拳を握りしめた。

 だがその頃、彼女たちは――すでに地獄の只中に立たされていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ