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肌を焼く熱気


 マルバ中将を先頭に、俺たちは灼熱の大地を突き進んでいた。

 足元の地面は赤く焼け、道脇の木々は全て炭化し、枝一本として緑が残っていない。まるで“死の森”そのものだ。


「わぁ……全部、枯れてるよ……」

 ミレが眉を寄せて呟く。焦げた風が髪を揺らし、彼女の尻尾が熱でしなだれた。


「この植物、炎使いの上妖の攻撃でも燃え残るほど耐熱性が高いはずなのですが……」

 レイラさんが冷気を漂わせながら答える。彼女の氷結妖術が隊列全体に薄い霧のような冷気を撒き、肌に当たる空気がわずかに軽くなる。


「はぁ……はぁ……何だ、この熱気は……」

「喉が焼ける……息するたび痛い……」

 後ろを歩く冒険者たちの息が荒い。汗が滴り、鎧が軋む。誰もがこの異常な熱量に削られていた。


「麗華、リナ……お前らは大丈夫か?」

 俺が声をかけると、二人は迷いなく前を見据えたまま返した。


「問題ないわ」

「私も、まだまだ動けるよ!」


 その凛とした声に胸を撫で下ろす。炎の鬼神である俺は平気でも、仲間が焼かれるのはごめんだ。


「レイラさん、氷結妖術を」

「分かりました――『氷結妖術』」


 掌に青白い光が灯り、頭上に冷気の球体が浮かび上がる。

 瞬く間に涼風が吹き抜け、肌にまとわりついていた熱が一気に剥がれ落ちるように消えた。


「涼しい……」

「ありがとうございます、レイラさん!」

「助かりました!」


「礼には及びませんよ」

 微笑む彼女の髪先に、白い霧が淡く溶けた。


 その時――ポコポコと、足元のマグマが泡立つ音がした。


「……皆さん、構えてください。どうやら“出迎え”のようですね」

 マルバ中将の冷静な声が響く。


 全員が即座に臨戦態勢へ。剣、槍、杖――それぞれの武器が妖気を帯びて輝く。


 地響きと共に、マグマの中から赤熱化したサイの群れが姿を現した。

 角が光を放ち、皮膚は灼けた鉄のように鈍く光る。


〈上妖焔犀(えんさい)


「璃炎の配下ではなく、原生の妖のようですね」

 マルバ中将が眼鏡を押し上げ、淡々とライフルを構える。


「総員、攻撃開始!」

 その号令で冒険者たちが一斉に駆けた。


「食らいなさい!」

「俺たちに任せろ!」


 斧と槍が赤熱した角を弾き、火花と炎が飛び散る。

 剣士たちがすれ違いざまに刃を閃かせ、焔犀の巨体を斬り裂いた。


「上妖と正面から打ち合えるなんて……!」

 ミレの短刀が閃き、赤熱の皮膚を貫く。彼女の目が輝いていた。


「冒険者たち……相当鍛えられてるな」

 俺は息を整えつつ呟く。妖力の纏わせ方も洗練されている。さすがは帝国選抜だ。


 マルバ中将がゆっくりと銃を構えた。


「……打っ放すぜ?」

 いつも真面目な眼差しの奥で、一瞬だけ獰猛な笑みが走る。


 パン――。

 静かな銃声が一発響き、次の瞬間、八体の焔犀が一斉に崩れ落ちた。眉間に、焦げた小さな穴。


 彼の冷静な声が残る。

「これで前衛は片付いた。続けろ」


 僧侶が目を閉じ、氷の杖を掲げた。

「皆さん……結界を貼ります!」


 透明な氷壁が展開し、焔犀の突進を受け止める。爆音と衝撃が轟くが、誰ひとり吹き飛ばされない。


「隙ありだよ!」

 隣に立っていた麗華が地面を蹴る。

 シャツの布が張り、胸元のラインが波打つよりも速くサイの群れのど真ん中に居た。


[『桜燐妖術』 花嵐(フローラルトルネード)] 

 桜花が咲き乱れ、敵群を一瞬で薙ぎ払う。

 血飛沫さえ、花びらの中で光となって消えた。


 その光景に、俺は小さく笑う。

「流石だな、麗華」


 彼女は跳ねる炎を踏みしめるように舞い、刃の花を次々と咲かせていく。その姿は戦場の桜そのものだった。


 だが、終わりではなかった。熱気の中に潜む“別の気配”が、ミレの獣の勘を刺激する。


「そこにゃ!」

 短刀が放たれ、岩のような額に突き刺さる。バキンと音を立てて崩れたのは、赤黒い細身の人型。


〈上妖熱人形(ねつにんぎょう)


 岩陰から同種の群れが次々と姿を現す。


「挟み撃ちのつもりみたいですね」

「裏は私たちが引き受けましょう」

 レイラとリナが前に出た。


[『照射妖術』熱線(ヒートレーザー)

 熱人形の宝石の眼が光り、灼熱の線が走る。


「私に任せて、レイラ」

[『構築妖術』再構成(リサイクル)


 リナの魔法陣が展開され、レーザーはその中で水飛沫に変わり、瞬時に蒸発した。


「今よ、レイラ!」

「えぇ――零度の中で凍えなさい!」


[『氷結妖術』絶対零度の槍ブリザード・グングニル


 二本の氷槍が走り抜け、熱人形の群れを串刺しにする。

 空気が一瞬で凍り、マグマすら氷に閉ざされた。


「すごいのにゃ……!」

 ミレが思わず素の声を漏らすほど、美しく静謐な光景だった。


「これで……ラストだ!」

 最後のサイの額に戦斧が叩き込まれ、巨体が崩れ落ちる。


 地鳴りと共に、溶岩の波が静まり返った。


「宝、みんな……凄い強いね」

「あぁ、さすがは五大帝国の精鋭だ。上妖クラスが束になっても、誰ひとり欠けないとはな」


 灼熱の戦場の中で、俺たちは確かに“生き残る者たち”の力を感じていた。

 その中心には、真面目で冷静な“帝国の銃”――マルバ中将の姿が、静かに光っていた。


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