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王の勅命


 数十の上妖たち、そして最上妖による工業地帯襲撃を鎮圧させて一夜が経った。

 残る妖怪の残党をまとめて蹴散らした俺たちは、麗華の拠点でちょっとした祝勝会のようなものを開く。


「それじゃあ、私たちの襲撃戦勝利にかんぱーい!」


 弾けるような明るい声と共に、麗華がアルミのコップを高々と掲げた。

 カツンとコップを鳴らし、マジュリア名物の"琥珀酒"を喉に流し込む。


「名前に酒と着いてるが……麗華は飲んで大丈夫なのか?」


 麗華の年齢はまだ17歳、酒を飲める年齢になっていないはずと、心配の声を漏らす。


「大丈夫だよ〜、名前に酒って着いてるけど、実際のところはちょっと渋いジュースみたいな感じだから」


 琥珀色の飲み物が入ったコップを揺らしながら、麗華の明るい声が部屋を包む。

 その陽気が、先程まで起きていた血も凍るような壮絶な戦闘の余韻を吹き消していた。


(麗華の実力はこの世界に移る前から分かっていたが、リナの妖術……構成妖術は予想外の強さだったな)


 このマジュリアで出会った二人、リナとレイラが見せたその強さの光景を思い返していると……誰かが扉をコンコンとノックした。


「誰か来たみたいね……レイラたちかしら」


 リナがガタリと椅子から立ち上がり、扉に手をかける。


 しかし、その扉の前にたっていたのは別行動していたレイラ達ではなく、イギリス軍の軍服のような制服を着用した屈強な男たちだった。


「誰だ……? こいつらは」


 始めてみるその風体に俺が眉をひそめていると、麗華が口を開いた。


「確かこの人たちって……マジュリア軍の兵士さん?」

「軍人?」


 その時、軍人の集団の中から胸元に十は下らない数の勲章を付けた男が歩み出てきた。

 その佇まいや空気感からして、明らかに周りの軍人の比では無い実力を持つことを容易に想像できる。


(あの雰囲気、あの襲撃に来てた連中より数段上だな、気配からしてレイラと同格くらいか……)


 そんなことを考えていると、中心に立つ男が堂々とした様子で口を開いた。


「この度は妖魔襲撃の鎮圧、心より感謝する。その件で国王が直々にお礼を言いたいと申しており……マジュリア国王城にあなた達を招待したい」


「マジュリア国王城……?」

「マジュリアの国王、テスラ三世が築き上げた城です」


 聞いた事のない名前に困惑する俺に、リナが耳打ち。


「国王様から呼ばれてるってこと?」

「そういう事になるわ」


 国王からの直々の呼び出し……


「もちろん、行かせてもらおう」


 こんな滅多に無いような誘い、受ける以外の選択肢は無いよな。隣を見ると、麗華とリナも納得したような顔で頷いている。


「感謝します。それでは案内しますので、こちらの馬車にご乗車ください。」


 その声と共に現れたのは、黒い籠を背負った二頭の白馬が引く馬車。

 一見普通の馬車に見えるが、鞍に繋がれた馬は全身が白骨化しており、目の部分は青い炎を宿していた。


「なるほど、馬骨の馬車か」


 上妖『馬骨』。火事で死んだ馬が死後、妖怪として生まれ変わったと言い伝えられている珍しい妖怪だ。


(それが二頭も……流石は国王って感じだな)


 俺たち三人は促されるままに馬骨の引く馬車に乗り、ガラガラと鳴る車輪の音を聴きながら工業地帯を後にした。


――――


――――――――


――――――――――――――――


――――マジュリア国王城――――


 閃緑岩で作られた石タイルの道が見えて来た時、俺たちの眼前に白を基調とした巨大な洋風城が姿を現した。


「凄〜い!」

「やはり、いつ見ても美しいですね」


 リナと麗華は、その純白の城壁をうっとりとした目で見つめている。


(流石と言うべきか……王城周辺の軍人もその殆どが練り上げられた妖気を持つ精鋭だな)


 王城へと向かう道をゆっくりと進んでいた馬車は、大理石で作られた大階段を前にして停止した。


「到着致しました。ここが、マジュリア国王城でございます。」


 軍の将校であろう男性の声を背に、俺たちは目の前の巨大な階段。そして、その上に聳え立つ立派な白城を眺める。


「綺麗……!」

「確か、国王様が待っていると言っていたな」


「あっ、そうだったね……早く行かなきゃ!」


 白い輝きを放つ階段に見とれていた麗華がハッと意識を国王に戻す。


 そして、俺たちは将校先導のもと、巨大な大理石の白へと足を踏み入れた。


――――王城内――――


 王城の中はステンドグラスの輝きに照らされ、キラキラとカラフルな輝きが床を彩っていた。


「ステンドグラス……凄い綺麗」

「光が入る角度も計算されて美しくも幾何学的な模様となっている……。素晴らしい建築技術ですね」


 それを目にした女性陣から感心の声が漏れる。


「確かに……どの窓も綺麗だな」


 床と窓を彩るステンドグラスに全裸のヴィーナス像。美しい輪郭を持つ壺が並ぶ廊下に出た俺たちを待っていたのは、大きく荘厳な様相の扉。


「この先が、国王の間でございます」


 先導の軍人が扉を開け、声を張り上げる。


「国王様! 今回の妖魔襲撃の功労者の方々を連れて参りました!」


 その声が響く先、赤と金色の玉座には、顎に髭をたずさえた初老の男性が鎮座していた。


「ご苦労だマルバ中将。下がって良いぞ」


「はっ……!」


 先導していた将校が国王の間を後にし、俺たちはレッドカーペット歩いて国王の前に来た。


「遠方から遥々……ご苦労であった」


 国王の言葉に、俺たちは跪く。

 その隣には、別行動していたレイラとミレも居た。


「この度はこの様な機会をいただき、心の底から感謝を申し上げます」


 俺も一組織のトップを張っていた男だ。このような場での立ち回りくらい理解している。


「この度の妖魔襲撃の鎮圧……改めて礼を言おう。心から感謝している」


 国王の隣に着いていた男がジャラジャラと音を立てる袋を手に持ち、俺たちに歩み寄る。

 そして、その袋を手渡した。


「儂からの感謝の証だ。受け取ってくれ。」


「こ、この量は……!」

「凄すぎる量にゃ……見た事ないのにゃ」


 中に入っていたのは銭500万枚。その凄まじい小判の数に、ミレと麗華が目をぱちくりさせる。


「そして……もうひとつは儂からお主らに伝えておきたい情報がある。」

「伝えておきたい情報?」


 国王の気配がより一層重苦しさを増すものとなる。


「酒呑童子の配下が一柱・璃炎(りえん)についての情報だ」


 それは、俺が密かに調べていながらも手に入らなかった情報だった。

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