風の森林
妖力の溢れる風の森林に足を踏み入れると、どこからか鋭い風の音が聞こえてきた
宝『薄暗く視界も悪い、ここ周辺では最高難関のダンジョンみたいだな』
その証拠に力尽きた冒険者であろう簡単な皮鎧を着用した亡骸が木々のあちらこちらに転がっている
服装を見た見た感じ、この森林に迷い込んだ初心者の冒険者ようだ
宝『初心者殺しの風の森林、と言ったところか』
俺は風を裂きながら森の中を進んでいく
その時だった、
???「木妖術 緑風刃」
次の瞬間に現れたのは、簡単に高層ビル程度なら両断できるであろう鋭利な緑風の刃
それが、周囲の木々を薙ぎ倒しながら俺を両断しようと飛んでくる
宝『危ないな、何者だ?』
俺は風の刃を手で払い除けるようにはじき飛ばし、周囲の気配を探る
宝『前方に二人、背後に三人か』
俺は即座に襲撃者の位置を特定し、地面に落ちている石を拾い上げた
宝『お前らは何処まで俺を苦戦させられる』
そして、俺は単純にそれを襲撃者に向かってストレートで投げる
すると石は、音速の衝撃波を放ちながら周囲の木々を薙ぎ倒し、攻撃者の元へと食らいつく
精鋭風精A「ギャバ!!」
投げた石ころが襲撃者のひとりの内臓を全てねじり潰し、木からたたき落とした
最初のひとりは先程の一撃で即死だった
精鋭風精B「何者だ!」
二人目が驚きの声を上げる、リアクションとしては最高だが戦闘者としては論外だ
宝『暗殺者が自ら位置を明かしてどうする』
凩妖精B「なっ…!!」
俺は軽いアッパーで二人目の顎を粉々に粉砕した
それと同時に二人の風妖精が背後からマジックナイフを抜いて襲いかかってくる
〔「中妖」 凩風精〕
宝『中妖、さっきの狼と同格か』
俺はナイフの側面を手で叩き落とし、そのまま一人の風妖精の肩を巻き込んで腕の骨を完全に破壊
凩風精C「がぁぁぁ!!!」
宝『もう少し楽しませてくれよ』
俺は両腕の骨を粉砕したエルフの足をつかみ、もう一人の向かってきたエルフに叩きつけた
凩風精C「ギャビ……!!」
凩風精D「ゲバァ……!」
これで残る風妖精はあと一人になった
宝『掛かって来ないのか?』
気配を感じ取ってみると、最後の一人は木の上で恐怖に震えていた
大方、他の仲間4人が瞬殺されたからだろう
凩風精E「な……なんだあの化け物は」
凩風精E「我らが風精族の精鋭四名を瞬殺だと……」
全く降りてこないため、俺の方から風妖精に接近することにした
宝『おい、そこのお前』
凩風精E「なぁ!?!?」
俺の顔を見た風妖精は酷く震えながら木から落下し、頭を打って失神した
〔銭:5800、☆3「精鋭風精の魔石」×4〕
宝『、、、なんだったんだ?あいつは』
少しこの森について聞こうと思ったのだが、まぁあの光景を見せられた後なら無理もない
俺は倒した風妖精から魔石と呼ばれている緑色の宝石を回収して先に進んだ
、
、
、
しばらく歩いていると、突如枯葉がつむじ風と共に舞い上がった
宝『この気配……さっきのエルフの数段上だな』
咄嗟に感じた道の戦闘者の気配に、俺は身構えて警戒を高める
その時、静寂を破るように重々しい声が響き渡る
風精長「部外者が入るか、何者だ」
〔「上妖」 風精長〕
風精長「木妖術 枯大竜巻」
直後、大量の枯葉を巻き上げながら形成された巨大な竜巻が俺目掛けて襲いかかる
それは、山ひとつ程度なら簡単に消し飛ばせるであろう破壊力を秘めていた
宝『なかなか面白いじゃねぇか!』
俺は退かずに、あえて竜巻の進路を遮るように進路上に立ちはだかる
このような大規模な技、打ち消してみたくなるのは戦闘者の性だろう
宝『お前はどのくらい俺を楽しませられる』
宝『見せてみろ!』
俺はその大竜巻に回し蹴りを叩き込み、ただのそよ風へと分解四散させる
風精長「ほう……流石は凩妖精の精鋭たちを刹那の瞬間に殲滅しただけはある」
宝『そりゃどうも』
宝(なるほど、こいつは強いな)
その蹴りの感触から実感した、こいつはこの森の中でも強い部類だと
宝『楽しくなってきたな』
次の瞬間、静寂を破るように再び巨大な竜巻が出現し、森全体を暴風で巻き上げる
宝『だが、俺相手に二度も同じ手は通じない』
俺はなんの躊躇いもなく、巨大竜巻に突っ込んでいき、単純な突進で竜巻を粉砕した
そして、右腕に煌々と燃える獄炎を纏わせながら風エルフの長の懐に潜り込んだ
風精長「なんと……!」
宝『貰ったぞ、風エルフの長』
俺はこの平行世界が壊されないよう、最小限の出力に調整する
宝『一撃で終わってくれるなよ』
宝『異能力 炎拳刈上』
そして、炎を纏わせた腕でアッパーを打ち込み、風精長の顎をカチ上げた
風精長「ガボォォォ……!」
その一撃により、森が半壊させられながら、風精長は空高く打ち上げられた
宝『森が半壊レベル、ちょっとした百の異世界の集まりよりも頑丈だな』
打ち上げられた風精長が思い切り地面に叩きつけられ、巨大なクレーターを作って力尽きた
宝『異能力を使用した技には耐えきれなかったか』
宝『まぁ、仕方がないな』
〔銭:7800、☆4「風精長の風宝玉」×1〕
俺は力尽きた風精長のドロップ品を回収し、さらに続く森の奥に視線を向ける
そこには、濃度の高い魔力の霧が充満し、見た事もない植物が生え揃っている不気味な獣道が存在していた
宝『さっきみたいな気配がまだもうひとつある』
宝『今度こそは楽しめそうだな』
この森に君臨するもうひとつの"主"の気配、それを求めて、俺はさらに森の奥へと進む