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妖怪喰い


「お前たち人間が使ってるのは、オイラたち妖怪の妖術を真似て作った、火、水、木、土、金の妖術だけだぁ!」

「そんなもので、オリジナルに勝てるわけがねぇよぉ!」


 地面に転がる野助を見下ろし、ワロドンが大きな声で嘲笑する。

 その足取りで野助に近づこうとした瞬間、背後から光る鋭い突きが迫った。


「だからと言って、俺たちは諦めんぞ!!」


 突きがワロドンの右脾腹を完全に貫通する。

 

「ギィィィ!いだぃぃぃ!」

「これでトドメだ、地獄で他の妖怪共に、ホップタウンを襲うなと伝えて来い!」


 壬生郎はのたうち回るワロドンに槍を振り下ろそうとした――しかし、痛がる素振りは誘いだった。


「なーんちゃって」


 先ほど貫通した脾腹の傷が、既に塞がっていたのだ。

 

「何っ!」

「潰れちゃえぇぇ!」


 ワロドンの身体が数メートルにまで一気に巨大化し、足元の地面はミシミシと裂け始める。


[『拡大妖術』 巨大化(ジャイアント)

 

「全身の巨大化!」


 寝返りの遠心力も加わった巨大な片腕が振り下ろされ、壬生郎の腹に直撃する。


 肋骨が砕ける音が辺りに響き渡る。

 

「ガフッ……!」


 そのまま振り抜かれた裏拳は、壬生郎を地面に激しく叩きつけ、大量の血を吐かせる。

 

「ゲホッ!ゴホッ」

「壬生郎!」


 野助が絶叫した。


 さらにワロドンは巨大な拳を振り上げ、野助へ鉄槌を叩きつける。

 

「ググッ……!ガァァ!」


 鉞で必死にガードする野助の足が、地面に沈み込むほどの衝撃だ。


「やめろ!」


 血を吐きながらも、壬生郎が立ち上がりワロドンの脇腹に槍を突き立てる。


「無駄だよぉ!」

「グオォォォォ!!」


 ワロドンはさらに力を込め、野助を叩き潰そうとする。


(どうする……このままでは俺も野助も間違いなくここで死ぬ。どうすれば……コイツに勝てるんだ……)

 

 壬生郎の脳裏に、かつてギルドマスター・ケンジとの会話が浮かぶ――


――――――――――


 曇りの日、泥まみれで戻ったケンジの姿を思い出す。

 

「どうしたんですか!ケンジさん!」

「すまんすまん、少し上妖とじゃれ合ってなぁ」


 巨大化する赤い妖怪に攻撃が全く通らず、再生を繰り返すという話――その方法は、肉を食って傷を止めるという奇策だった。


――――――――――


壬生朗 side


 妖怪の肉を食らう? とても信じ難い話だが、今は試すしかない。

 どちらにせよ、ここでウジウジ考えていてもあの化け物に殺されるだけだ。


 ……やってやろうじゃないか。


 最後に足掻いてやる。

 

「野助!もう少し抑えていてくれ!」

「わかったぜ!」


 野助が力を込め、鉄槌を受け止める。

 ワロドンの意識が野助に集中している隙に、壬生郎は決断する。

 

「ホップタウンに、手を出すな!」


[『水妖術』 五月雨突き(さみだれづき)


 岩を穿つような激流の連続突き……槍が化け物の脇腹を串刺しにする。


「だから無駄だよぉ!」

「だが、これなら効くだろう!」


 突き立てた槍を伝って化け物の脇腹に着地。その分厚い筋肉に歯を突き立てる。

 

 再生を始める傷口を思いのままに食いちぎり、壬生郎は奥底から叫ぶ。

 

「ギ……ギギャァァァァァァ!!!」

 

「野助!今だ!ここの傷口を叩き切れ!」

「分かったぜ!」


 野助は鉞に大量の土を付着させ、豪快に振り上げる。

 

「貰ったぜ!ワロドン!」


[『土妖術』 土塊の斧(つちくれのおの)

 

 土塊の斧が傷口めがけて一閃。


 その瞬間、ワロドンの脇腹が完全に断ち切られ、巨体が地面に激しく崩れ落ちる。


「ぎゃぁぁぁぁ!!!」

「ゲケケ……なんで……おい……ら」


 その絶叫とともに、ワロドンの身体は妖力とともに薄れ、消滅した。


「俺たちの、勝ちだ」

「よっしゃぁぁぁ!勝ったぞォォォ!!」


 こうして、上妖の一角・ワロドンを打ち倒した。


 だが、この勝利は次なる試練の序章に過ぎず、ミレと玲にはこれまでの人生で最大の試練が襲いかかろうとしていた。

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