異世界転移
目が覚めると俺は、見覚えの無い草原に立っていた
周囲からは俺が鬼の皇帝だった頃、日常的に感じていた妖怪の気配をあちこちから感じる
宝『ここは、異世界なのか?、専用のゲートを通らずに転移、俺たちの世界の性質上前代未聞だぞ』
俺たちが住んでいた世界は、全ての異世界の集結点であり管理者であり編集者のようなもの
そのため、異世界側からの干渉は不可能な筈だ
宝『電話もあちらに繋がらない、現在の東京を上回る権限レベルを持っている世界か?』
任務直後の突然の転移、俺は一度状況を整理するため当初の状況を思い出すことにした
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俺は鬼燈 宝、夏時高校の二年生であり、殺し屋組織・星空隊に所属している戦闘者だ
麗華「あっつ〜い……宝、ジャンケンで私が買ったらアイス奢って〜?」
隣で歩いている脳天気な声の女子の名前は桜姫 麗華
俺が通っている高校で三大美女とまで言われる同級生で、俺の幼馴染だ
そして、最高戦力と目されるまでの殺し屋でもある
宝『金持ってるし自分で買えよ、』
麗華「え〜、ちょっとぐらい良いじゃ〜ん、ん?」
人身売買壊滅の任務が無事終わり、渋谷のど真ん中に位置する組織の本部に帰っているときだった
あと十数分で基地に着くという時、麗華と俺は奇妙な光の渦を見つける
麗華「なにあれ、光のトンネル?」
宝『だな、何かしらのワープホールか?』
光のトンネルは白を基調とした色になっていて、周辺の空間をねじ曲げなら宙に浮いていた
俺と麗華は警戒心を抱きながらも、宙に浮く光のトンネルに興味を引き寄せられた
麗華「なんか、ブラックホールみたいだね」
麗華が慎重に光の渦に近付こうとしたその時
光のトンネルは凄まじい吸引力を帯びて、車やゴミ箱など周囲のものを手当たり次第に吸い込み始める
麗華「きゃっ!なにこれ、、吸引力?」
宝『これは、ブラックホールに近いものか?』
そして、凄まじい吸引力を持ったトンネルは、俺と麗華をその中に吸い込んだ
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そして、目を覚ますと
宝『ここは、どこなんだ?』
俺は、見知らぬ平原に立ち尽くしていた
宝『何故、俺たちの世界から自発的に人を連れて来れる?』
平原は全体的に背の低い草や芝による緑の景色が拡がっており、所々には岩も点在している
それと同時に、微かだが何かしらの存在の気配も十数体ほど確認することが出来た
宝『気配は数十体、全て五級にも満たない雑魚か』
五級とは俺たちの世界で使われている等級システムで、その強さレベルは通常の強度の世界で言うところの都市壊滅クラスを示す
だが、この世界は俺たちの世界に干渉してきた、それを考えるなら俺たちの世界に近い格を持っている世界ということになる
おそらくこの存在たちは、こちらの世界でも地面を抉る事すら不可能なほどに非力な存在なのだろう
俺はこの世界が気になり、情報収集も兼ねて探索してみることにした
宝『俺たちの世界に干渉を仕掛ける世界、どんなものか確認する必要があるな』
全体的に平坦で何も無く、所々に木が点在している程度の質素な風景
しかし、その景色だけで俺たちが暮らしていた世界とは別の世界だと思わせるには十分だった
宝『本当に異世界で間違いなさそうだが、ランクの低い世界とそこまで変わらないな』
そこまで珍しいとも思えない平原の景色を眺めながら歩いていると、青色の体毛を備えたイノシシのような生物が俺の前に立ちはだかった
感じ取れるオーラ反応からしても、こいつが先程から点在していた気配の正体だろう
〔「下妖」 小猪〕
宝『なるほど、つまりはこの世界に存在する魔物ということか』
小猪「ブォォォォ!!!」
目の前のイノシシが鼻息荒くこちらに対して威嚇の声を上げながら突進の前準備のような動きをする
宝『襲ってくる、俺たちに対して敵対的な存在か』
イノシシは地面を踏み抜き、全力の突進を繰り出してくる、しかしそれが足に当たったとしても、痛みもダメージも何も無い
それに対してイノシシは転げ回りながら頭部に感じた痛みに悶絶している
宝『都市破壊程度の破壊力の突進で俺が傷を受けるはずもない』
足元で激痛にのたうち回るイノシシに向けて、俺はオーラから作り出した大剣を振り下ろす
宝『俺と戦いたいなら、上位の世界の一つや二つを一撃で粉微塵にできるようになってから来るんだな』
大剣の一撃で大地が割れ、巨大な持割れが発生し、周囲の魔物諸共大地を切断した
宝『少し力加減を間違えたか』
俺の指パッチンの合図ともに割れた地面が再び結合し、元の形に戻る
(先程出た「下妖」という規格、この世界における等級のようなものか)
この世界の仕組みに俺が思考をめぐらせていると、目の前に文字が表示された
〔銭:260、☆1「小さな牙」×4〕
それと同時に手の中に小さな牙が現れる
宝『なるほど、戦利品か』
突如現れた小さな牙を、俺は赤いコートのポケットの中に入れて探索を続ける
しばらく進んでいると、獰猛な唸り声と共に前方に鈍色の体毛を備えたオオカミが現れた
その巨躯は、優に3メートルを超えている
そして、その口内には何体もの魔物や人間を食い殺してきたであろう獰猛な牙が生え揃っていた
〔「中級」貪食狼〕
貪食狼「グルルゥゥゥゥ!!」
宝『なるほど、先程の猪より格上みたいだな』
直後、オオカミが俺の身体を引き裂こうと鋭い鉤爪を備えた前足を振り下ろす
が、俺はその一撃を人差し指で容易に受け止める
宝『さっきに比べたらマシだが、まだまだ下の下だな、パワーもスピードも無い』
軽く人差し指で押すと、目の前のオオカミは面白いほどに吹き飛んだ
土煙を上げながら地面を滑るグリードハウンドに俺は拳を振り上げる
宝『攻撃というのはな、』
そして、軽い右ストレートをその顔面に叩き込む
宝『こうするんだ、はぁ!』
貪食狼「ギャォォォォ!!」
顔面を一撃の元に粉砕されたオオカミの亡骸が地面に力無く横たわる
そして、白い煙と共にその肉体が消えた
〔銭:400、☆3「貪食狼の牙」×1〕
宝『感じた気配だと、あのオオカミがこの平原で最も強い存在みたいだな』
俺は戦利品を収納し、再び探索を開始する
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しばらく歩いていると、魔力のようなものに満ち足りた森が見えてきた
〔中級ダンジョン『風精霊の森林』〕
外から見た風貌は蔦が生い茂り薄暗く、樹海と呼ぶのに相応しいものだった
宝『表記からして、先程のオオカミよりも強力な魔物が生息しているんだろうな』
俺は、更なる敵との戦闘に内心心を踊らせて、風精霊の森林へと足を踏み入れた