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第83話:花の大江戸(だいこうと)

エドではありません

 翌朝、モンドさんが出立の準備をして玄関口に立った。晶龍君はびっくりしているみたい。


「行くのかよ」

「左様」

「そうか。また寄ってくれや」


 また寄ってくれ、という事は晶龍君はここに残るって事だ。まあそれはそれでいいんじゃないかな。


「モンドさん、お待たせしました」


 衣服を整えながら、マリエが二階から降りてくる。隣には篝火かがりびさんが油断なく固めている。まあこの間の襲撃の件があるから注意してるんだろう。


「えっ、マリエさんも?」

「はい、お世話になりました」


 玄関先が賑やかになったからかパイリンさんとリンファさんも出てきた。勢揃いである。


「あー、ここに居たのね。ほら、入らないとお客様の邪魔になっちゃうよ」


 リンファさんがそう言ってぼくを抱えあげようとする。ぼくは避けて入り口に向かう。


「ラビ?」

『晶龍君、ぼくも行くよ』

「……そうか」


 今度こそ晶龍君との別れだ。


『心配するでない。暫くはわっちらと一緒じゃからな』


 篝火かがりびさんが晶龍君に言った。ええっ? でも、ぼくは一緒に行けないって。


『ここに残るのならそれで良かったじゃろうが、この街を出るなら、おんし一匹では捕まって逃亡ペットとして処分されるでありんす』


 あー、まあ、何となくその可能性は無意識に除外してたかも。ええと、それじゃあ街を出るまでよろしくお願いします。


「オジサンは邯鄲までマリエ殿を護衛するよぉ」

「それで宿賃をマリエさんが払ったんですね」

「うむ! 文無しだったから払う様に頼んだ訳では無いぞ?」


 いやまあ元々はぼくらがモンドさんを雇ってたから宿賃はぼくら、というか晶龍君が払うのが筋なんだけどね。この数日で大分状況変わっちゃったからなあ。


「それではまたねぇ。そのうち寄りますよぉ」


 晶龍君とパイリンさんが二人並んで見送ってくれる。リンファさんは拗ねた顔をしている。ぼくが居なくなるからかな? 思えばぼくが居なくならないように引き止めてた様な気がするよ。


 門のところでぼくはモンドさんのテイミングモンスターって事にして通り抜けた。マリエさんはテイマーだからテイムされてないことがバレると厄介だもんね。


『はあ、抜けたぁ』

『おつかれさんじゃな。して、これからどうするのかや?』

『うーん、とりあえず走って帰るよ』

『なら一緒に邯鄲に向かえばいいものを』

『人の街にはあまり近寄りたくないんだよね。だからぼくはこっちに真っ直ぐ進むよ』


 ぼくが指した方を見て篝火さんがびっくりしていた。何かあるのかな?


『ラビ、そちらが邯鄲への道じゃぞ?』

『えっ? だって、あっちにあるのが邯鄲つてところじゃないの?』


 ぼくは少し遠くに見えている小さな街を指さした。篝火さんの顔色が悪い。


『なあ、ラビよ。あちらに街が見える、じゃと?』

『え? うん、だいぶ遠くだけど、見えるよ。あれが邯鄲なんでしょ?』

『邯鄲はここから徒歩で七日。およそ見えるとは思えんし、全然別の道じゃなあ』


 いや、ぼくは見えてるし、なんなら人が居ないから草原の道を選んだのに。


篝火かがりび? ラビ君と何を話しているの?」

「いや、聞いてくれ、マリエ。ラビが邯鄲の方向はこっちじゃと言うのじゃ」

「ええっ? いや、そっちには何も無いと思うんだけど」

「ラビ曰く街があるらしいぞ」

「そ、それはまことか、ラビ殿!?」


 モンドさんが血相を変えてぼくに迫ってきた。ホントにホントだよ! でもぼくがホントだって主張してもモンドさんにはわかんないじゃない。


「モンドさん、突然どうしたのですか?」

「恐らくその街は我が故郷、江戸こうとであろう。お願いでござる、案内してもらえぬか?」


 いやいや落ち着いて、落ち着いてください、モンドさん。そもそもマリエさんの護衛なんだから邯鄲に向かうのを簡単には無しに出来ないでしょう?


『わっちらは別に構わんよなあ。その様な都市があるなら先に向かっても良い』

「そうね、篝火の言う通りだわ。モンドさんの故郷、見てみてもいいわね」

「かたじけない!」


 あれ? いつの間にか行く事になってる? いやまあ少しくらいの寄り道はいいんだけどさ。賑やかな方が昔を思い出すし。


 ぼくは街道沿いに歩いているつもりなんだけど、他の人は道無き道を進んでるみたいな感覚をしているらしい。オマケに何か霧が出てきた。もしかしてこの霧が迷わせてるのかな?


 ぼくはぶるり、と身体を震わせた。ぼくらの周りを霧が避けていく。



「あ、足元に突然道が?」

「何故だろうねぇ」

『ラビや。もしかして幻術の類かや?』

『うーん、多分?』

『随分と舐められたものじゃなあ。破惑呪!』


 篝火さんが札を持って左右に振るとそこだけ周りの空気が清浄化していく。篝火さんってすごいね。


 そうして向かっていった先には霧に包まれた都、江戸こうとがそこにあった。

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