表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/200

第8話:sideグレン その1

今回は書き漏れないかなって思ったらセラフとドライアドが空気に。

「ラビは行ったかな?」

「一目散に駆けて行きましたにゃ」

「臭いが遠ざかってるから間違いなく言ってますね」

「そうか」


 ぼくはテイムした皆を前にほっと一息吐いてラビが去って行った方を眺めた。と言ってもここは洞窟の中だから外まで光は届かない。


「そんなにガックリ来るならお別れせんでも良かったんちゃいます?」


 葛葉くずのはがしなだれかかってくる。巨乳を押し付けるんじゃない。


「女狐、そんななりでマスターを誘惑でもするつもり?」

「ごめんなあ、あんさんには出来んことで誘惑してもうて」

「この、調子に乗るんじゃ」

「やめんか、騒騒しい。主殿がゆっくり考えられんではないか」


 葛葉とブリジットの言い合いをヴリトラが鎮めてくれる。ありがたいけど、別に考えることは無いよ。


「主よ、私をテイムせずにラビを連れて行っても良かったのではないか?」


 フレイが諭すようにぼくに言う。確かにラビが居てくれたら心強い。ずっと初めから一緒にいた分身みたいなやつだから。


「ダメだ。ラビを連れて行くわけにはいかない。これからの旅は過酷になるんだから」


 あの日、王都から使いが来て、ぼくが勇者として魔王と戦う事になった。正直言えばあまり受けたくない。でも、受けないと故郷の村が焼かれてしまうかもしれない。あの王様はそれをやる奴だ。自分の村だけではなく、旅した間に出会った人々にも迷惑がかかるかもしれない。


「だいたい、召喚したはずの勇者が魔王を倒してくれれば良かったのに」


 確かに勇者召喚の儀が行われて、異世界から勇者が降り立ったはずだが、その勇者は旅に出て魔王軍と対峙したものの、四天王最弱の奴に負けて這う這うの体で逃げ出したらしい。


「魔王軍四天王のウェアウルフ、ガロンに負けるとはな。あの程度なら我が食いちぎれるぞ」


 フェンリルのブランが勇ましげに吠える。うん、確かに魔王軍の四天王、まとめて相手にしてもぼくのパーティならなんとでもなるだろう。でも、ラビは連れて行けない。


「まあ、そうなんだけど、旅の間に何があるか分からないし、それに、ラビは元々戦闘の為のやつじゃないから」

「にゃんだかんだで斥候には役立ちましたけどね、あの子」

「そういやノワールと組んで斥候してくれてたな。これからは斥候役は頼むぞ」

「いや、別にいいんだけど、出来たらそこのフェニックスさんにも手伝ってもらいたいですにゃ」


 ノワールがフェザーに水を向ける。フェザーは面倒くさそうに答えた。


「偵察とか性にあわねえけどよ、ご主人様がやれっつーならやってやるよ、なあ、ご主人様?」

「ちょっと新入り、離れなさい。マスターが迷惑してるのが分からないの!?」

「おお、怖い。そんなにツンケンしてると目元にシワがよるぜ?」

「妾のお肌は何時でもピチピチなのよ!」


 フェザーとブリジットの言い合いがはじまった。喧嘩するほど仲がいいとも言うし、このままにしておこう。


「のう、主殿。ラビのやつはこのまま故郷に辿り着けるかの?」

「分からない。でもその辺の森で暮らせるならそれでもいいと思うし、帰りたいなら帰ればいいと思う」


 本当はぼくが自ら故郷まで連れて帰って、故郷で放してやりたかったが、そういう訳にもいかない。魔王軍の侵攻は未だに続いており、今から前線に行かなくてはいけないのだ。そんな事、シルバー爺に言われなくても分かっている。


「やれやれ、このまま放っておくのもどうかと思うでな。息子にでも守らせるか」

「息子、ああ、あの子か」

「まあ不詳の息子ではあるが、それなりに鍛えてやった。ワシの願いを反故にはせんだろうて」

「ヴリトラ、頼めるか?」

「なんの、主殿は命令すれば良いのだ」


 ヴリトラの言葉にぼくは苦笑した。何しろ命令することなんて慣れてない。テイマーらしくないと言ってしまえばそれまでだ。お願いは何度したけど、頭ごなしに突きつけるのは言う方も気分が良くない。


「さあ、少し休んだら旅立とう。ラビとは反対方向だ。北へ。魔王軍が待ってる前線に」

「無論お供する」

「ついて行きますにゃ」

「あの、私の影が薄いんですけど」

「私もです。背景に同化するかと思いました。植物はツタしか生えてないのに」

「もちろん妾は共にあるぞ」

「うちもやねえ。まあうち一人で十分やと思いますけど」

「もちろんワシも従おう」

「この爺も及ばずながら」

「オレの身体はご主人様のモンだ。好きに使っていいぜ?」

「ふむ、この身が燃え尽きるまで従おう」


 全員それぞれから答えが返ってくる。今からぼくらが行くのは魔王軍の居る戦場。これまでは避けてきたところだ。本当は戦いたくない。みんなとのんびり暮らしていたい。でも、それは許されない。だからこそ、せめて、ラビだけでも平和に静かに暮らして欲しい。それだけがぼくの願いだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ